「誰も来ないなら使ってもらおうか」 シャワーを開放したすすきの風俗店、地震翌日の決断 - BLOGOS編集部
※この記事は2018年09月12日にBLOGOSで公開されたものです
ー札幌・すすきのにある風俗店が、店舗のシャワーを30分500円で一般に開放している
北海道で大規模な地震が発生した翌日の9月7日、そんな情報がTwitter上で拡散された。店舗は営業できず、スタッフも余震を恐れる中での決断はどのように行われたのか。BLOGOS編集部は店舗スタッフに取材し、当時の状況について話を聞いた。【取材:BLOGOS編集部】
札幌市内は地震翌日にお湯が使えず
「地震が起きたのが6日の午前3時過ぎ。翌朝になって店長が出社、主力の女性スタッフも『家にいるのが怖い』と店に集まってきていました。その日は水道は使えてもお湯が出ない状況だったので、冷たい水を浴槽に溜めながら『温かいお湯を浴びたいね』なんて話をしていたんです」とスタッフのAさん(仮名)は話す。
翌7日早朝に札幌市内で電気が復旧し、店舗も通常通りに営業する準備はできていた。
「7日の朝にはすすきのでも電気が復旧しました。でも、これだけの地震があってすぐに風俗店に行こうという人はそう多くないですよね。ただ、電話は鳴るので誰かは店にいないと、ということで私や店長は店にいて、それに女性スタッフも前日から店に残っていたんです」
店のシャワーを開放することは、何気ない会話の中で決まったという。
「やっぱり前日にお湯を使えないのは僕らもすごい辛かったんですよね。それでお店を開けてもお客さんは来ないだろうし、『シャワーとして使ってもらおうか』『それいいね』とそんな風に決めたんです。最初は全国の風俗店情報や店長のブログを掲載できるサイトに『今日は営業できないので、その代わりにシャワールームを開放します』と告知しました」
Twitterで呼びかけ一気に拡散
最初は一部の人の目にしか止まらなかった情報が一気に拡散したのはTwitterがきっかけだった。
「でもそういうサイトは、今から風俗店に行こうという人しか見ないですよね。だから最初は少しの範囲にしか影響がなかったんです。そんな時に、お店にいた女の子たちが源氏名でTwitterをやっていたので『私たちのTwitterでつぶやいていいですか』って言ってきたんですね」
「30分500円でシャワーを開放しますよとTwitterに書いたところ、拡散してくれる人がどんどん増えて。結局その日は夜の12時までお店を開けていたんですが、最終的に全部で70人くらいの人にシャワーを使ってもらいました。
場所柄、怖い印象を持つ人もいたと思うんですけど、若い女性やカップル、親子連れでいらしている方もいました。話を聞いてみると、Twitterでシャワーを使った人の感想を見て安心したと言ってもらえましたね。SNSの拡散力はすごいなと改めて思いました」
利用者から寄せられた感謝の声
翌日も通常営業前に3時間ほどシャワーを開放し、何人かの利用者がいたという。利用者からは感謝の声が寄せられ、営業再開後に差し入れを持ってきてくれた人もいたそうだ。
「利用した人からは『助かりました』という感謝の言葉を多くもらったほか、営業を再開した日に来たお客さんの中には、帰り際に『昨日はお風呂ありがとうございました』と言ってくれた人もいました。わざわざ前の日のお礼を言いに来てくれたんです。
ほかにも、女の子に差し入れ-飲み物とか、目が温かくなるアイマスクとか-を持ってきてくれる人もいました。でも、僕らとしても特別なことをしたつもりはなくて、前日の辛い思いがあったから誰かの助けになればいいなと思っただけで。
もちろん、こうした形で店が有名になるのは良くないと思ったんですけど、誰かの助けになったなら嬉しいです。早く多くの人に日常が戻るといいですね」