獲得する外国人が当たりまくる″渋ちん球団″中日のスカウトに「あっぱれ」~中川淳一郎の今月のあっぱれ - 中川 淳一郎
※この記事は2018年09月02日にBLOGOSで公開されたものです
阪神タイガースのウィリン・ロサリオ内野手が登録抹消され、1年限りでの退団が決定的と報じられた。開幕前は「止まらない衝撃!阪神・ロサリオ、2戦連発シーズン95本塁打ペース」なんてサンスポに報じられ、その活躍が期待されていた。しかし、シーズンが開始すると二軍での調整を挟んで75試合に出場し、打率.242、8本塁打、40打点という凡庸な成績で再び二軍へ。年俸3億4000万円の働きはできていない。外国人選手の活躍の割合が低い阪神タイガース
41年前、福岡県浮羽郡のスーパーで唯一売れ残っていたプロ野球帽子が阪神のものだったというだけの理由で阪神ファンになったが、私はこの状況に「まぁ、しょうがねぇよな……」という達観モードになっている。何しろ自分が生きている間に獲得した外国人選手で優秀だった選手が他のチームと比べて割合が少なく感じてしまうのだ。バース、フィルダー、オマリー、ジェフ・ウィリアムス、リガン、メッセンジャー、ゴメス、呉昇桓、マートンあたりは非常にいい。パチョレック、シーツ、ブラゼル、アリアスも良かったが、彼らは大洋、広島、西武、オリックスが発掘した選手なのでこれらの球団にまずは感謝である。
それに比べ、メンチとかタラスコとかジャンとか美味しそうな名前だけどまったく活躍しない選手がやたらと多いのが我が軍の特徴である。しかしながらデイリースポーツとサンスポという2大“弱者に優しい”新聞がホメ続けるものだから、すっかり我々ファンも阪神に対しては滅法優しくなってしまう。しかし時には厳しい意見も言わなくてはならぬだろう。FAと外国人選手に補強を頼りまくっている阪神の育成にも苦言を呈する必要はあるかもしれないが、ここでは取り急ぎ外国人選手である。
外国人選手獲得が上手い中日ドラゴンズ
獲得にあたり、参考になるのが中日である。8月28日のサンスポ電子版には「ノーモア・ゲレーロ!中日、好調助っ人に早急残留要請へ」とビシエド内野手、ガルシア投手、アルモンテ外野手の3人との契約が必須である、との記事が登場。一方、阪神の外国人選手を報じる記事ではロサリオ、マテオ投手、モレノ投手が退団しそうで、ナバーロ内野手の契約は微妙、としている。実に好対照な状況だが、中日の年俸ランキングは11位。渋ちん球団として名高いのだが、とにかく獲得する外国人が当たりまくる。
1:ソフトバンク 62.9億円
2:巨人 47.3億円
3:阪神 35.9億円
4:オリックス 31.6億円
5:西武:30.3億円
6:ヤクルト 30.3億円
7:楽天 28.1億円
8:DeNA 26.7億円
9:広島 25.4億円
10:日本ハム 24.2億円
11:中日 22.3億円
12:ロッテ 22.1億円
中日はキューバとのコネがあるのも重要ポイントだろうが、けっして「バリバリのメジャーリーガー」やらを漁ったりはせず、比較的安い選手を獲得してくる。今年も育成選手としてキューバ生まれのマルティネス捕手がいるが、肩強いんだろうな~。22歳、190cm、95kgの背番号210で、マニュエルファハルド国立体育大→キューバ・マタンサスという経歴を誇る(なんだかすごそう)。この選手が大化けしたら実に安い投資額で大型捕手を獲得したこととなる。
中日がNPBの他球団に選手を強奪されたケースは多々あるわけで、それだけ中日のスカウトの腕が立つということだろう。ザッと挙げてもゲレーロ(巨人)、ギャラード&ブランコ&ソーサ(横浜)、パウエル(阪神)がおり、そしてもっともデカいのが、1988年から1995年まで近鉄バファローズの顔ともいえたラルフ・ブライアントである。2年目に49本の本塁打を打つなど大活躍したがブライアントも元々は中日が獲得した選手だ。
外国人獲得については定評のある中日だが、重要なのが中日に入る前年の状態である。
ビシエド(2015)→マイナーリーグ2球団で.287 8本 今季→.346 22 83
アルモンテ(2017)→メキシカンリーグで.355 15本→.301 11 57
ガルシア(2017)→カンザスシティロイヤルズで0-1 13.50→12-6 2.71
モヤ(2017)→マイナーリーグで.166 7本→.304 3 16(故障のため離脱中)
アルモンテの前年の成績自体は素晴らしいものの、メジャーリーグというわけではないので、地味といえよう。これらを見ると、中日の基本的な補強の特徴として、「中米系の選手を取る」「前年度は派手な活躍をしていない」が挙げられる。それをいえば、ロサリオも2017年は韓国リーグで大活躍したため、条件は一緒だが一体何が違うんだ……。それこそが中日のスカウトの眼力なのだろうが、こうなったら阪神ができるのはそのスカウトに年俸1億円払って移籍してもらうことだ、えぇい、破れかぶれだ! みたいな話になってくる。
さすがにそれは無理だろうが、阪神のスカウト陣は中日を見習って獲得の方針を明確にすべきでは。それこそ「オランダとオーストラリアからしか取らない」とか「初年度の年俸は5000万円以上は出さない」などとするだけで、少なくとも2017年(キャンベル、ロジャース)と2018年(ロサリオ、ナバーロ)の失敗は繰り返さないだろう。なにせアルモンテの年俸は5000万円であり、渋ちん球団だからこその数字だ。この中日の姿勢にあっぱれである。
大体3億4000万円が約束されてしまったら「ヘイヘイヘイ、これで引退してもオレは悠悠自適だぜ、ウヒヒ」なんてやる気がなくなってしまっても仕方がない。最初は渋ちんで安く採る、とりあえずそれだけは阪神球団には徹底してもらいたいものだ。しかし、大活躍したらそれこそ5000万円を2億円にするぐらいはしてください。
ちなみに阪神の外国人選手関連のスポーツ紙の見出しで一番好きだったのは「タラスコスタコラ」です。タラスコが練習場から逃げてしまったとかそういった記事だったのですが、これにはセンスを感じました。