「見た目を縛る法律なんかない」平成最後の夏を彩るガングロギャルにインタビュー  - BLOGOS編集部

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※この記事は2018年08月07日にBLOGOSで公開されたものです

(左上から)ぇりもっこり、るな、あおちゃん、あいちょりす、まーちりん。5人で「Black Diamond -from 2000-」だ。

明るい髪色にきらびやかなメイク、纏う洋服はアルバローザ、好きな色は黄色。
そこにいるだけで不景気が吹き飛ぶ明るさが魅力の“ガングロギャル”たちを皆さんは覚えているだろうか。

もはや絶滅危惧種と言っても過言ではない彼女たちに会える場所がギャルの聖地渋谷には残っていたのだが、平成最後の夏にその聖地も消滅してしまった。

その名も「ガングロカフェ」
日本テレビ系「月曜から夜ふかし」で取り上げられ一気に知名度がアップ、連日お客さんが絶えない人気店となった。しかし2018年6月28日、人気絶頂の中、突然お店の“長期休業”が発表され、7月18日に営業を終了した。

突然の発表に「残念すぎる…」とSNS上で多くの声があがり、芸人の有吉弘行も自身のラジオで「めちゃめちゃ俺、ギャル好きだから」と、長期休業を惜しんだほどだ。

長期休業の今、ガングロスタッフたちはどう考えているのだろうか。

6年ほど前に結成された、全国に散らばる約400人のギャルたちで成り立つ、黒肌ギャル集団「Black Diamond(ブラックダイヤモンド)」から誕生したユニット「Black Diamond -from 2000-」のメンバー、ぇりもっこり・るな・あおちゃん・あいちょりす・まーちりんの5人は最終営業日に何を想うのか。話を聞いた。

「平成」が盛り上がっている今年はギャル復活のチャンス

――長期休業を聞いた時、どんな想いでしたか

あおちゃん:ただただ寂しかったですね。でもしょうがないかな、という気持ちもあって。メディアで色々取り上げていただいてから、極端に忙しくなってきて、カフェとの両立が難しくなってきていたんです。体調崩す子もいて…本当泣く泣くですね。

あいちょりす:率直に、驚きました。ガングロカフェが無くなるなんて考えた事もなかったので…。でも私たちにはギャルブームを復活させるという目標があって、それを達成するには今年がチャンスだから、勝負の年だから、すぐ納得もしました。

平成最後の夏、昔を懐かしむ際に「ガングロっていたよね~」と、再度ギャルに注目が集まっている今が勝負だと話す。安室奈美恵の引退やDA PUMPの「U・S・A」がパラパラ曲としてもブレイクしている2018年はギャルムーブメントを再度起こすために大きく動くチャンスだと意気込んでいる。

彼女たちのプロデューサーが目指すのは人気女性グループ「ファッキングラビッツ」。大きな力ではなくても、一点突破できる強い個性で突き抜けていければと語っていた。

そんな彼女たちの目的はただのブレイクではなく、ギャルブームの復活という目標がある。

しかし、彼女たちの物心がついた頃には、いわゆる“ギャル“と呼称される風貌のギャルは2000年代に比べて、ほとんど街中にいなかった。そんな現代で、どのようにして彼女たちは自分の”ギャルスタイル”を突き詰めていったのか。

ガングロカフェ ではガングロメイクの体験のメニューも。親子でガングロメイクをしに来たお客さんもいるいう。
「娘さんのテストの点数が悪くて罰ゲームでいらっしゃったんですよ(笑)」と18歳のあいちょりすが教えてくれた。

――ギャルが減少している今、皆さんはなぜギャルの道を選んだのでしょうか

あいちょりす:“Black Diamond”の先輩たちに憧れたのが一番大きいですね。他はYoutubeで見たギャルに感激したのが一番のポイントかな。

――Youtubeの影響なんですね!雑誌や漫画からだと思っていました

るな:彼女最年少で18歳なんですけど、最近のギャルはYoutubeからとかが多いかも。私はテレビドラマの「ギャルサー」を観て、憧れてギャルになりました。

――ドラマ、懐かしい。憧れる対象が皆さんそれぞれあったんですね

あおちゃん:私は何かを目指してたというより、これ可愛いなってどんどん可愛いこと、好きなことをしてたら今のガングロギャルに行き着いた感じ。

――好きなものを突き詰めた結果がギャル。ただ自分の好きな姿でいるだけなのに、冷たい目で見られること多いと思うんです。この理不尽さ、どう思われますか?

るな:何か批判をされるってことは、興味があるってことだから、悪いことだとしても無関心よりいいんじゃないかなと思っています。だから批判も気にしないですね。

あおちゃん:あんまり気にしないよね。それに、見た目で判断する人の方が内面的にも乏しいし、「あれヤバ…」みたいにマイナスなことを言われても、見た目で判断するような人にどうこう言われる筋合いはないし、見下していますね。自分たちの方が、内面的にも、信念的にも、プライド的にも、勝っているので。

あと、私たちは他の人と違うから、違う人を認める能力がめちゃくちゃある。みんな同じ人間なのに、そこにギャルがいると考えるから違和感を感じてしまうと思うんです。だから、それぞれ違う人間がいて、その中の1人がギャルだったって考えてほしい。そう考えると、ただの個性になるじゃないですか。

ありのままに、みんな自分らしく気楽に生きて欲しい

ガングロカフェ店長も務めた、ぇりもっこり。長期休業を悲しむファンから愛のある花が多数届いた。

――皆さんは、人と違う自分のスタイルに自信を持って堂々としていらっしゃいますが、大多数の人は他人の目を気にしてしまうと思うんです。その自信はどこから来るのでしょうか

まーちりん:見た目は法律とかに縛られないものじゃないですか。その人の本質的なものじゃないし、自分のスタイルとかやりたいことを、胸張って貫いて行くことが誇りになるし、自信になるし、解放した方が気持ちいいんじゃないのかな。

あいちょりす:私も周りの目を気にして、ストレスが溜まったり真に受けて悩んでいた時期がありました。振り返ると『あの時自分は周りに認められたかったんだな』と思います。

けど、別に認められなくてもいいんじゃん、って考えが変わったんです。だから無理に直そうとしなくてもいい、気にしないようにしなくてもいい。気にしちゃうことを止めようとしなくてもいい。ありのままに、みんな自分らしく気楽に生きて欲しい。

――悩んだことがあるからこその言葉ですね

あおちゃん:批判してる人は悔しいだけ。自分はその人が出来なかったことが出来ていて、実行している自分の方が上だって考えてほしいんです。そんな人見下してやればいい。外野は空気。ただのエキストラなんですよ。

――最近の若者は、すぐにSNSで叩かれたりしてしまうから、あえて目立たないように、出る杭にならないようにしているそうなんです。他人の目に怯えて出来ることが狭まることはどう思いますか

あおちゃん:ビクビクしながら、やりたい事を抑えて叩かれないようになんて、おばあちゃんになってそれで人生悔いがなかったと言えるのかな。他人からの評価を気にし続けるなんて、誰の人生なの?って思う。

――「誰の人生なの」響きますね。心ない批判をしてくる人も多いですか

あおちゃん:多いですね。でも気にしてられない。ギャルになったことで人生が色づいたし、色々言ってくれてるオーディエンスのおかげで私たちは成り立ってる。感謝している部分もあります。

――もちろんギャルを愛する人たちも沢山いますよね。昨今SNS上などで「心の中にいるギャルが自分のことを励ましてくれたから頑張れた」という表現が流行りましたが、「ギャルといえばこう!」というイメージの固定化はどう感じますか

まーちりん:あんまり一括りにして欲しくないですかね。私たちギャルもみんなと一緒でそれぞれ違う個々ですし…。

るな:ギャルは“明るくて元気!”って思われるけどみんながそうじゃないよって思いますね。お店でもテンション高いギャルのイメージを期待していた人が多かったから、お酒飲まないとやってられなかった(笑)

あおちゃん:でも、そういうイメージを持って接してくるのはしょうがないかなって思いはありましたね。本当はそんなにテンション高くないけど、私の中にも内なるギャルがいるから、その子と相談してパフォーマンスする(笑)

(左から)まーちりん、あおちゃん、るな
「つけま変えた~?」と楽しそうに話し、手を叩いて笑う姿が微笑ましい

個性が無い日本人。サイボーグ国家にしたいの?

――平成最後の夏、気になるニュースはありましたか?

あいちょりす:自分達のことなんですが、黒ギャルがキングオブコントに出場するっていうのが一番のツボです。

――目指せ優勝ですね

まーちりん:私は、西日本豪雨とか猛暑とか...異常気象が重なっていて心配。またまだ猛暑は続くと思うので、特に一人一人が気を付けてほしい。無理せず冷房などを使用して熱中症を防いで、自分の命を守ってもらいたい。

あおちゃん:わかる。あとは、国会議員がLGBTに差別的な発言をしたニュースが本当に許せない。LGBTの人達は私たちよりも心がギャルで、偏見の中戦っているから尊敬しています。

――ギャルは社会のルールから逸れてると思われる事もあると思うのですが、逆にルールの方がおかしい、と感じることはないですか

あいちょりす:日本の”暗黙のルール”みたいなものは全部しょうもなすぎ。

あおちゃん:学校でも、髪染めただけで怒られる校則とかがあって、それだと『怒られたってことは自分は落ちこぼれなのかな」と思い込んで、どんどん非行の道に走ってしまう事もあると思う。抑え込みすぎるルールには疑問です。

まーちゃん:今は私たちの学生時代よりも、どんどん校則が厳しくなっていると感じていて。もっと言えば世間的にもルールが厳しい方向に向かっている気がして、日本全体が縛られすぎていて不安を感じます。

あおちゃん:そうそう。そんなに規制して何がしたいの?ゴールは何なの?「個性が大切」とか偉い人は言うけど、縛られすぎて、同じ髪型に同じ肌色、同じ服装の人間ばかりになってしまっていて、サイボーグの国にしたいのかと思う。

――見た目で誰かに迷惑をかけるわけじゃないですもんね

あおちゃん:そうなんです。例えば会社員って髪の毛の色が明るすぎるとNGじゃないですか。理由は取引相手からの信用がなくなるからだって。髪の毛の色なんて染め粉混ぜて塗っているだけでその人の信用には一切関係ないし、規制するところを間違えていると思う。

まーちりん:「新しいことを始めよう」って偉い人は言うけど、縛った中じゃ何にも生み出されないですよね。

――見た目はもちろんですが、信念など、気持ちの面で譲れないものってありますか?

まーちりん:やると決めたら努力は惜しまない事!理想や目標など自己像のイメージはきちんと持って行動する事ですかね。

あおちゃん:どんなに否定されたり古いとか汚いと言われても、私たちの大好きなギャルファッションは、オワコンなんかじゃないって常々思ってます。

――ギャルがいる時代は元気だとも言われます

あおちゃん:ギャルは常に時代の先をいっているし、いつだってギャルがそれぞれの時代を作ってきたし、これからもそうなるはず。

ぇりもっこり :流行りや回りに合わせない=「媚びない」です。気持ちの面で譲れない部分はメイクが他の子達より濃いし、独特なので自分が好きなことをやる。万人受けより自分がその時の可愛いと思ったメイクや服装は、「外野は空気」精神で着てます。

あと、「いつ死んでも悔いのない人生を送りたい」がモットーなので、やりたい事は絶対にやる!やらない後悔よりやる後悔!

――力強い言葉です。浮世離れしているように見えますけど、皆さん本当しっかりしてますよね。皆さんからは「普通」と言われる人たちのことはどう見えているんですか。

あおちゃん:同級生とかでも、「ギャルになってよかったね~、テレビとか出れるようになったからよかったね~、私は会社でちゃんと働いてるけど』って上から目線で言ってくる人もいるんですよね。それっておかしくないですか?

――というと?

あおちゃん:お前保育園の卒園アルバムに会社員になりたいって書いたのかよって思う。第三希望の人生生きてるじゃん、第一希望の顔して第三希望の人生生きてるくせになんでそんな上からなのって思う。そんな人に何も言われたくない。

――厳しい言葉ですが、そうかもしれません。

あおちゃん:悔し紛れにいろんなこと言ってくるけど、私は本当にやりたいことをやって叶えているし、進んでいるし、あなたの本当にしたいことは何がしたいの、リスクがあっても第一希望の人生生きてみたらって思う。

まーちりん:本当にそう。死んだらやりたいこともできないし、言いたいことも言えないし、生きている内にしなきゃ。死を背負う覚悟で生きて行かなきゃ。必死に。

あおちゃん:リスキーに生きていった方がいいんですよ。リスクを負わない人に成功はないんで。私たち成功したいんで。

あいちょりす:豪邸に住みたいもんね!(笑)

まーちりん:そう!悔いなく人生を楽しみたいんです!

平均的な人生がいい、普通でありたいと安全圏を望むひとが多い中、リスクを負ってでも常に高みを目指す彼女たちは輝いていた

――ギャル、ガングロギャルを増やしていきたいという皆さんの目標は、何を成し遂げたら達成になりますか?

あおちゃん:渋谷にギャルが溢れかえったり、ギャルブランドや服が増えたらかなぁ。「え、ギャル...」とかじゃなく、ギャルがいるのが当たり前みたいな認識になったら達成!

その為には、私達がみんなの憧れになれるように、若い世代に知られることが大切だと思っています。

ぇりもっこり :自分たちのサークル「Black Diamond」のメンバー大幅増も目標ですね。でもやっぱり目安は、渋谷センター街でギャルを見かけるようになったらですね。

るな:あ、あと、日サロが右肩上がり。

一同:確かに(笑)

――3年後はどんな姿になりたいですか?

まーちりん:次の元号で新しいギャルの形を作る代表者になる!

ぇりもっこり :私は、絶対にギャルはやってないと言い切って(笑)、面影がないくらい落ち着いて結婚して子供を作って第二の人生を謳歌したいです。

あいちょりす:私も安定した彼氏が出来て落ち着き始めてることを願います(笑)

――最後に、これからやり遂げたい事をおしえてください。

あおちゃん:今の流行りの言葉ってオタク用語みたいなのが多いから、本家ギャル語を作りたいな。

ぇりもっこり :平成が終わるので新しい年号になってからその時代の代表と言えば私達くらいのギャルになりたいです。渋谷=ギャルの聖地のイメージを取り戻したいです。

まーちりん:やりたい事を胸を張って堂々と自由にできる、楽しく生きれる仲良しな日本になれるように私たちも色々発信していきたいです。

等身大のギャルたちは、自分の意思をしっかり持ち、日本の未来を真剣に考える"力強い女性"たちだった。

新たなステージに挑戦する彼女たちは今まで以上に輝やき、平成最後の年も次の元号も日本を盛り上げてくれるだろう。

Photographer_中村圭介

【取材:清水かれん】