そんなにエアコンが嫌いなのか? - 赤木智弘
※この記事は2018年07月21日にBLOGOSで公開されたものです
アツイゼー アツイゼー アツクテシヌゼー古いゲーマーにしか分からないネタをぶちこんだところで、みなさまはこの暑い夏をいかに凌いでいるだろうか?
僕は幸い、暑い時間に室内にいられる仕事なので、暑い時間はエアコンのお世話になっている。
さて、もうこれなしでは生活自体が成り立たないと言っても過言ではない、素晴らしい文明の利器であるエアコンについて、この2週間ほど、ネット上でいろいろと騒ぎになっているように思う。今回はこれをまとめて論じたい。
西日本豪雨の避難所にスポットエアコンがついて、それが安倍晋三首相の視察に合わせてつけられたとか、そうではないとかが騒ぎになっていた(*1)ようだが、僕が疑問に思ったのは、そもそも小学校の体育館になんで最初からエアコンがついてないのかということだ。
学校の教室にエアコンが必要なことは、もはや言うまでもないが、学校の体育館だって結構な蒸し風呂である。ましてや教室と違い運動をする場所なのだから、熱中症はもちろん、寒さで体が硬くなっての怪我がないように、空調設備があるべきであるはずだ。
また、今回のような災害があれば、学校の体育館は避難所になる。ただでさえ被害があり、多くの人との雑魚寝環境など、ストレスフルであることは言うまでもないのに、それに加えて暑い寒いを被災者に我慢させるようでは、避難所として不適切ではないか。
学校の体育館だけではなく、避難所に指定されるような場所には、空調の整備を義務付けるべきではないか。これだけの災害大国かつ曲がりなりにも先進国だと思われている国で、避難所に対しては「当面の雨風さえしのげればいい」という感覚は、古臭いのではないかと思う。
震災から逃れても、避難所で体調を崩しては意味がない。ただでさえ快適では無いことが明らかな避難所だが、できる限り被災者に快適に過ごしてもらえる環境づくりが必要だろう。
そして、夏の甲子園。これも「暑くて苦しんでる球児を見世物にしている」と批判されがちだ。特に甲子園は朝日新聞がメインスポンサーということで、気軽に叩きやすいことから、バッシングが盛んである。
これについては、甲子園のことだけでいいのであれば、甲子園球場の持ち主である阪神電気鉄道が甲子園をドーム化すればいいだけの話である。しかし実際には、地方での予選でドーム球場が使われることはほぼ無いであろうし、野球だけではなく他の屋内競技においても過酷な猛暑は熱中症はもちろん、注意力の低下による事故などにも繋がりやすく、大問題である。どうにしても甲子園球場だけで高校野球が行われるのではないのだから、もっと全体を見て考える必要がある。
なぜ高校野球の大会が8月に行われるかといえば、8月が夏休みだからである。全国の高校生が同時に休みをとって大会に参加できるのは8月頃しかないから、8月に行われるのである。しかし、8月に大型連休を設定する必要は本当にあるのだろうか?
実際、8月に夏休みがある理由は「暑いから」であろう。やはり暑いことは勉強にとってマイナスなのだ。しかし学校の教室にエアコンが設置されれば、暑いことを理由に8月を休みにする理由はなくなる。むしろさまざまな屋外活動を考えると、夏や冬は空調設備の効いた学校などにいたほうがよく、逆に春や秋に屋外活動をするほうが効率的である。
結論としては、学校に空調設備さえあれば、例えば3月下旬に学校の年度が終わってから、4月いっぱいを休みにしてしまって、学校生活のスタートをを5月からにしたり、10月に休みを入れても、なんの問題もないのである。
中でも僕は4月を休みにすることをおすすめしたい。理由としては受験との兼ね合いである。今の8月でさえ、高校3年生の球児には受験勉強と練習の両立が大変であると聞く。人数が十分にいる高校の野球部では、ベンチ入りが望めない高3のメンバーは、早めに野球部の活動を切り上げて、受験勉強に移行するそうだ。もし休みが10月になり、甲子園大会も10月になれば、これまで以上に両立は大変だ。
しかしこれが4月であれば、まだ十分に余裕はある。問題としては新入生の1年生が試合に参加できないことだが、別に2、3年だけの出場でも構わないのではないかと僕は思う。せっかく大会をやるなら、選手たちには少しでも良い環境で戦いに挑んで欲しい。
最後にもうひとつ。
学校にエアコンを設置しようとすると反対する人がよく主張するのは「エアコンをつけると我慢できない子供になる」というものである。
確かに、エアコンがついた部屋にずっといると、外に出るのが億劫だったり、エアコンがない室内というものに入りたいという気持ちが全く起こらなくなる。
それが「我慢できないということだ!」ということなのだろうが、ではその我慢に、一体何の価値があるのだろうか?
多少の電気代の節約にはなるかもしれないが、しかし熱中症で病院に運ばれれば1ヶ月のクーラー代以上のお金が飛んでいく。その程度のお金の節約と引き換えに命をかけるなど、狂気の沙汰と言っても過言ではない。
そもそも、エアコンに慣れた子供がエアコンを求めたとして、それは「エアコンの効いたところにいる」という効率的な猛暑の対処を覚えたというだけのことである。
暑いからといって、暑い場所で冷たいものを飲み食いしていれば、必要以上に体を冷やすことになってしまう。屋外で冷えた水物をがぶ飲みするよりは、クーラーのきいた場所でぬるい水道水を飲んでいたほうが、よほど健康的かつ、効率的なのである。
だいたいこの手の「子供にエアコンは」みたいなことを言っている大人というのは、朝夕はエアコンの効いた車で通勤し、昼はエアコンの効いたオフィスで仕事をして、夜はエアコンの効いた自宅でくつろいでいるような連中だ。
子供は大人を見て育つ。大人がエアコンの効いた室内で悠々としているのに、子供がエアコンの効かない場所を好きになるはずもないのである。
これは勉強も同じで、家で勉強をしたり本を読んだりしない親が、いくら子供に口先だけで勉強しろと言っても無駄である。子供に勉強や読書の習慣を付けさせたければ、子供に口で言うよりも、まずは親がそれを実践して子供に学習習慣を当然のことだと思い込ませるのが一番の近道である。
いずれの話題にしても、エアコンが無いことで生じている「無理」や「ムダ」。そしてなにより熱中症という「生命のリスク」を考えれば、エアコンを使わない理由は存在しない。
ちなみに、東京オリンピックに向けて完成を急いでいる新国立競技場。もちろん冷暖房完備で快適な施設かと思いきや、客席の下から冷風が吹き出す冷房をカットしたそうである。
カットした冷房の代替案は、甲子園名物「かち割り氷」。そしてそれを指示したのは、内閣総理大臣の安倍晋三氏だとのこと。(*2)
ああ、オリンピックの夏もまた暑そうである。熱中症で国際問題にならなきゃいいけど。
*1:安倍総理視察とエアコン設置は全く無関係。 設置の指揮を取ってきた者として明確に申し上げます。 熱中症回避のため人の多い避難所優先でエアコンを配備しています。 総理が視察した岡田小以外の倉敷真備地区・水島地区、広島県、愛媛県の避難所複数にもエアコンは設置され、被災者から喜ばれています(世耕弘成 Twitter)https://twitter.com/SekoHiroshige/status/1016933978484293632
*2:新国立の暑さ対策にかち割り氷? 甲子園の先達が挙げる課題(iRONNA)https://ironna.jp/article/7362