※この記事は2018年07月08日にBLOGOSで公開されたものです

平成26年度から始まった「高校生等奨学給付金」。これは低所得世帯の高校生に対して、教科書費、教科外活動費、修学旅行費などの、授業料以外の負担を軽減するために、低所得世帯を対象に支給される給付金である。

これが周知不足により、私立の高校生だけでも推計で2万人が受け取れてないという。(*1)

記事によると、私立の高校生だけでも2万人、さらに国公立の対象者はわからないとされており、給付金をまともに支給できていない状況が見て取れる。

給付金については、通常は進学する学校側から案内があるが、文科省では今年から奨学給付金と就学支援金を同時にあんなにするリーフレットを作成。都道府県に配布して周知を図るらしい。

で、マイナンバーはどこに消えたんだい?

本来、マイナンバーに期待された市民側の利便性は、マイナンバーにより収入の額などを一元化して、このような給付に対して申請せずとも受け取れる仕組みが産まれるということだったはずだ。

しかし、マイナンバー制度がスタートしてからそろそろ3年。いまだに申請主義(申請書が出されないと支給などがされない仕組み)は健在で、子供の親は様々な申請に追われている。

普通に進学するだけでもお金も各種手続きも大変だという話を同年代の友人知人から聞く中で、さらに今回対象になっているような低収入世帯が公的な扶助を受けるための申請の数はどれだけ膨大なことだろう。

申請主義は、その申請を受け付ける側も大変である。

学校は役所の代わりに保護者に対して申請を案内しなければならないし、役所側も今回のように案内のリーフレットを作るなどの手間もかかる。申請主義ではなく、条件に該当すれば自動的に給付されるようなシステムであれば、こうした手間も削減される。せっかくマイナンバーの制度があるのだから、しっかりとこれを活用するべきである。

フリーのライターをやっていると、複数の会社から報酬が出る。そのすべての会社から「マイナンバーをお知らせください」という手紙が来て、それに1つ1つマイナンバー登録のための返信をする必要がある。会社によって書式もバラバラで、マイナンバーカードのコピーをとったりとらなかったり大変である。もちろん重要な個人情報を含むので、返信は簡易書留である。窓口が空いている時間に郵便局に出向かなければならない。マイナンバー導入の初年度は、そんな手間を十数件分行ったし、今後、新しい仕事先と仕事をするときも、その手間をかける必要がある。

そんな手間がかかるシステムなのに、それをちゃんと運用すれば避けられるはずの申請主義の手間が、低収入世帯やそれに対応する教師や役所の窓口(いまや、役所の窓口は非正規であることがほとんどだ!)に押し付けられていると思うと、腹立たしいものがある。

申請主義がやめられないなら、マイナポータルで各種申請をすべてできるくらいにはして欲しい、その場合はもちろん生活保護世帯にスマホやパソコン、そしてICカードリーダーを支給するくらいのことはして当然である。

税金を使って作り上げたマイナンバーというシステム。作ったからにはちゃんと使って欲しい。

国や行政からすれば「国民の財布を監視するためにしっかり使っている」のだろうが、せめて国民が享受できる利便性の分くらいはちゃんと活用させて欲しいものである。

*1:低所得世帯の高校生2万人が給付金申請漏れ 周知不足で(朝日新聞デジタル)