乃木坂46が熱狂的ファンに「接見禁止」の警告文! - 渡邉裕二

写真拡大

※この記事は2018年06月27日にBLOGOSで公開されたものです

過去に例がないほど過激な「警告文」

「最近、メンバーに対しまして、一部のファンの方による車両、歩行等による追走や居住エリアでのストーカー行為など、メンバーのプライバシーを著しく侵害する行為が確認されております」。

これは、人気アイドル・グループである乃木坂46の運営委員会が「ファンの皆さまへのお願い」と題して公式サイトにアップした〝警告文〟である。

ちなみに、乃木坂46だけではなく姉妹グループの〝欅坂46〟と〝けやき坂46〟も含めてのものとなっているが、この〝警告文〟では、一応「このような行為を実行する方はごく一部に限られており、大多数のファンの皆さまからは節度ある応援を頂いております」と断っているが、実際には「これら一部の目の余る行為により、警戒を強化せざるを得ない事態となっています」とし、迷惑行為に対しては「警察に通報する」「全ての活動において出入り禁止にする」と力強い表現で明記した上で、今後に関しては「メンバー本人に対して直接手紙・プレゼント等を手渡しする行為も禁止とさせていただきます」としている。

それにしても、こんな厳しい文言で明記した〝警告文〟は、私が認識する限りにおいては過去に例がない。何とも過激な一文である。

「会いに行けるアイドル」をキャッチフレーズにAKB48が東京・秋葉原で誕生したのが2005年のことだった。常設劇場での公演あり、握手会あり、さらには、人気を競う総選挙ありと、これまでのタレント育成の概念を破った手法でアイドル・ブームを演出してきた。乃木坂46や欅坂46、けやき坂46なども、実際には、そういったAKB48の手法を取り入れ結成してきたことは言うまでもない。

「会いに行けるアイドル」はもはや時代が許さない?

ただ、AKB48グループと大きく異なっているのは、乃木坂46や欅坂46、けやき坂46というのは、ソニー・ミュージックエンタテインメントが〝坂道シリーズ〟として運営会社を組織していることだろう。したがって、AKB48と同様に秋元康氏がプロデューサーだといっても、メンバーの選考基準もAKB48とは異なっているだろう。何より常設劇場もなければ、メンバーの入れ替わりとか総選挙というのもない。そういった意味でいうと、ファンにとっては「根本的に違う」と言うことになるのだろう。

いずれにしても、ここでAKB48と乃木坂46とのファンの違いについて論じようとは思わないが、今回の〝警告文〟を見て単純に思ったのは、CDの販売促進のためとは言え、握手会や何やらでファンの気持ちを、これでもかこれでもかと煽ってきておきながら、ファンが熱くなり過ぎたら、それは「ダメ」って言うのであれば、ちょっと運営会社は傲慢、身勝手過ぎないか?なんて思ったりもしたのだが…。

かと言って、今や、そんなことを言っていられない時代になったのも事実である。もはや時代の流れが誤算を生じるようになったのかもしれない。

もちろんファンとアイドルとのトラブルは今始まったことではない。かつては美空ひばりは「顔が綺麗すぎる」とファンの少女から塩酸を顔にかけられた事件もあったし、双子のこまどり姉妹は、公演中にファンから妹が刺され重傷を負った。当然、これは芸能界の大ニュースとなって現在でも語り継がれている。

最近では、〝実害〟こそなかったが元AKB48の岩田華怜のファンがストーカー規制法違反で逮捕されている。また、女優の菊池桃子に至っては、元タクシー運転手からストーカー行為を受け大きなショックを受ける出来事もあった。

ストーカー事案は何かが起こってからでは遅い

しかし、芸能界に最も衝撃を与えたのは、16年5月に東京・小金井市で起こった傷害事件だろう。音楽活動をしていた大学生の冨田真由さんが、熱狂的ファンだった28歳の男に待ち伏せされメッタ刺しにされた。この男は、彼女に贈ったプレゼントが返され、SNSも遮断されたことから「許せない」と愛情が殺意に変わったという。

だが、事件を語る以上に大きな問題となったのが冨田さんが何度も何度も警察署に身の危険を訴えながらも、警察署の不手際で見過ごされてしまっていたことだろう。

このようにストーカー被害というのは、事件が起こってからでは手遅れなことが多い。

特に、過去のストーカー被害と決定的に違うのは、ネット上でのトラブルが増えていることである。SNS上での〝つきまとい〟とか〝思い込み〟も増えているし、当然、熱狂的ファンには〝妄想〟を抱く輩も多いかもしれない。

一般論になるが、アイドルのファンに限らず、例えば学校や会社でも好きな子がいたら「家を見てみたい」なんて思う男性諸君は多いと思う。ただ、その後の行動は「理性」ということになるが、最近はTwitterやFacebook、さらにはInstagramなどで、情報を得る機会が急激にアップしている。そう言った中で、もしかしたら「理性」を制止できなくなる人が増えてくることだってあるだろう。これは、もしかしたら否定出来ないことかもしれない。

菊池桃子にストーカー行為をした元タクシー運転手は、3ヶ月前にも菊池へのストーカー行為で現行犯逮捕され、「接見禁止命令」まで出され「二度と近づきません」としていたのだが、現実は「どうしても会いたくて行ってしまった」。

「元運転手は事務所に交際を求めるメールを出したり、自宅近辺をうろついたりしていた。妄想が過ぎ、自分の行動を抑制できなくなってしまったのでしょう。もっとも、大事に至らなくてよかったのですが、こういった行為を野放しにしていると、大きな事件に発展しる可能性もあります。こういった行動を起こす傾向は、若い人に比べると年齢が上に広がっています」(週刊誌記者)。

今回の「警告文」を契機にファンとの関係性を再考すべき


もはや、ストーカー行為は他人事ではない。ある意味で〝現代病〟とも言えるかもしれない。大袈裟ではなくメンタルな部分でのカウンセラーが必要になるだろう。

乃木坂46の場合、20枚目のシングル「シンクロニシティ」の発売握手会を現在行っているが、白石麻衣、桜井玲香、西野七瀬が欠席しているという。また、その他の一部のメンバーにも欠席が出ている。

握手会の開催は、CD販売時においては「ファンとのお約束」だから、一部のメンバーであっても「欠席」というのは、ファンに対して「約束の不履行」ということにもなりかねない。が、しかし、今のところはファンも「仕方ない」と諦めているのだろう。だが、その一方で良くも悪くも芸能界のボーダレス化が一気に進み、ますます〝素人芸化〟するアイドル・ビジネスというのは、必然的にもファンとの交流が重要なポイントになっている。

チャットや握手会、チェキ会などが、最近ではYouTubeに広がり、ショールーム、さらにはギフティングなどといったライブ配信プラット・ホームまで登場するなど、プロだろうと素人だろうと活動の範囲はどんどん広がっているのも事実だ。

しかし、一部のルールを無視したファンから身を守るのは「自己責任」なんてことになったら、それは、将来のアイドルを目指す人にとっては逆効果になりかねない。ここは一度、立ち止まって考え直すことが重要だろう。そう言った意味でも、今回の乃木坂46の〝警告文〟が、いいキッカケになってほしいのだが…。