脳科学者・中野信子が語る“不倫”願望の男女差「心理状態の差異は本質的にはない」
著名人の不倫騒動が日々世間を騒がせる昨今、ある調査では、恋人や結婚相手以外の人とセックスをしている性交経験者の割合は男性が4割強、女性が3割強だという。以前『不倫』(文春新書)で脳科学者の目線で“なぜ不倫は減らないのか”を説いた中野信子が、今回国際政治学者の三浦瑠麗による共著『不倫と正義』(新潮新書)を企画し、発売直後から大きな話題になっている。今回改めて中野信子に、人はなぜ不倫をするのか…話を聞いた。(前後編の後編)
【写真】脳科学者・中野信子、撮り下ろしカット
【前編はこちら】脳科学者・中野信子が語る“不倫”が大バッシングされる理由「個人が社会正義を行う構造」
中野 男女差はないんじゃないですかね。不倫といっても、いろいろな形があります。既婚男性と未婚女性という組み合わせが一般的だと思われていますが、決して一般的ではないです。未婚男性と既婚女性だったり、どちらも既婚であったり、あるいはどちらも婚姻関係にはないけれども複数の人とお付き合いをしてたり。そこそこバリエーションがありますし、主観の問題でもあるので、比較は難しいですよね。性差というのはあまり考えなくてもいいのではないでしょうか。非対称があるとすれば、経済構造ですよね。
いまだに男性に比べて、女性は収入が少ないですから、それが不倫にも関係するのではないか。あともう一つ、育児行動に対する非対称がどうしてもあります。バイオロジー(生物学)の非対称性があるので、それが心理状態に効いてくる部分もあるかと。ただ婚外交渉に対する心理状態においては、男女の差異は本質的にはないんじゃないかと思います。
中野 女性の経済的な裁量権が大きくなったということは無縁ではないと思います。最近は「ママ活」という言葉が聞かれると思うんですけど、それをする女性というのは少なくはないんだろうなと。
中野 ママ活は比較的、経済状態に余裕がないとできませんので、そういうのもあるのかとは思います。あと既婚女性が婚外交渉をしたときに、離婚という帰結もある訳ですよね。そうなったときに、自分の経済状況に余裕があれば、そういう行動を取りやすいだろうなとも思います。
中野 実際に統計を取ったのかどうかという問題もありますが、やっぱり遊ぶ人は遊ぶと思うんです。生理的に多くの人に目移りするという人が、年齢を経たからといって変わるとは考えにくい。婚姻関係を結んでからは目立たないようにしているとしか理解できないですね。
中野 生得的な要素が大きいと考えていいと思います。味の濃い食べ物を好きという人は、次々と味の濃い食べ物が欲しくなりますよね。いきなり薄味で我慢しろと言っても、それで薄味が好きになるかというと、ちょっと難しい。しばらくは薄味で頑張れたとしても、美味しいと感じたとしても、やっぱり濃い味がくると、そっちを食べちゃう。
だからといって薄味が好きな人も濃い味が好きかというと、濃い味は品がないと思ったり、そもそも嫌いだったりする訳ですよね。味覚そのものの話で言えば、生育環境が関係していますけど、脳が薄味が好きか濃い味が好きかというのは、わりと生まれつきの部分が大きいので、そんなに変わるとは考えにくいです。
中野 濃い味が自分は好きだけど、体に良くないから薄味で過ごしましょうと、それを一生できる人もいなくはないです。我慢をする能力というのは、また別のものなので、我慢をする能力が高いか低いかによっても変わってきますから。
中野 そうなんですよね(笑)。我慢する必要が生じることに対して、それだけのメリットが結婚生活にあると思えば、結婚生活を続けるのもいいと思うんですけど、メリットがないのであれば、あえて結婚を選ばなくてもいいんじゃないかなという風には思います。ただ年齢を重ねていきますと、相手に選ばれなくなるという残酷な現実もありますからね。
中野 自分の状態を正確に知るというのは知性じゃないですか。そこそこ選ばれていないという現状があるのに、まだモテると思っているのは、正直イタいというか(笑)。
中野 自分は理詰めで人を分析するような部分が強いですけれども、三浦さんは人間の心の機微という現実を大事にする人なんですよね。対談することで、理で仕組まれた格子の中に息吹を吹き込んでくれるようなところがあって、すごく心地よい体験で面白かったです。より有機的に物事も見られるようになったという良さがありましたね。
【前編はこちら】脳科学者・中野信子が語る“不倫”が大バッシングされる理由「個人が社会正義を行う構造」
──不倫をしたいという願望に男女差はあるのでしょうか。
中野 男女差はないんじゃないですかね。不倫といっても、いろいろな形があります。既婚男性と未婚女性という組み合わせが一般的だと思われていますが、決して一般的ではないです。未婚男性と既婚女性だったり、どちらも既婚であったり、あるいはどちらも婚姻関係にはないけれども複数の人とお付き合いをしてたり。そこそこバリエーションがありますし、主観の問題でもあるので、比較は難しいですよね。性差というのはあまり考えなくてもいいのではないでしょうか。非対称があるとすれば、経済構造ですよね。
いまだに男性に比べて、女性は収入が少ないですから、それが不倫にも関係するのではないか。あともう一つ、育児行動に対する非対称がどうしてもあります。バイオロジー(生物学)の非対称性があるので、それが心理状態に効いてくる部分もあるかと。ただ婚外交渉に対する心理状態においては、男女の差異は本質的にはないんじゃないかと思います。
──女性の地位が高まってきて、不倫が増えたという傾向はありますか?
中野 女性の経済的な裁量権が大きくなったということは無縁ではないと思います。最近は「ママ活」という言葉が聞かれると思うんですけど、それをする女性というのは少なくはないんだろうなと。
──ママ活アプリというのがあるぐらいですからね。
中野 ママ活は比較的、経済状態に余裕がないとできませんので、そういうのもあるのかとは思います。あと既婚女性が婚外交渉をしたときに、離婚という帰結もある訳ですよね。そうなったときに、自分の経済状況に余裕があれば、そういう行動を取りやすいだろうなとも思います。
──昔から結婚前に女遊びをした男性は、結婚すると遊ばなくなるみたいな通説がありますけど、実際はどうなのでしょうか。
中野 実際に統計を取ったのかどうかという問題もありますが、やっぱり遊ぶ人は遊ぶと思うんです。生理的に多くの人に目移りするという人が、年齢を経たからといって変わるとは考えにくい。婚姻関係を結んでからは目立たないようにしているとしか理解できないですね。
──いろんな人と恋愛したい人と、一人を愛し続ける人では、何が違うのでしょうか。
中野 生得的な要素が大きいと考えていいと思います。味の濃い食べ物を好きという人は、次々と味の濃い食べ物が欲しくなりますよね。いきなり薄味で我慢しろと言っても、それで薄味が好きになるかというと、ちょっと難しい。しばらくは薄味で頑張れたとしても、美味しいと感じたとしても、やっぱり濃い味がくると、そっちを食べちゃう。
だからといって薄味が好きな人も濃い味が好きかというと、濃い味は品がないと思ったり、そもそも嫌いだったりする訳ですよね。味覚そのものの話で言えば、生育環境が関係していますけど、脳が薄味が好きか濃い味が好きかというのは、わりと生まれつきの部分が大きいので、そんなに変わるとは考えにくいです。
──ということは女遊びをしていた人は、結婚しても変わるのは難しいと。
中野 濃い味が自分は好きだけど、体に良くないから薄味で過ごしましょうと、それを一生できる人もいなくはないです。我慢をする能力というのは、また別のものなので、我慢をする能力が高いか低いかによっても変わってきますから。
──まあ結婚制度がなければ我慢する必要もないですよね。
中野 そうなんですよね(笑)。我慢する必要が生じることに対して、それだけのメリットが結婚生活にあると思えば、結婚生活を続けるのもいいと思うんですけど、メリットがないのであれば、あえて結婚を選ばなくてもいいんじゃないかなという風には思います。ただ年齢を重ねていきますと、相手に選ばれなくなるという残酷な現実もありますからね。
──女性に選ばれなくなった現実を受け入れられない男性も多いですよね。
中野 自分の状態を正確に知るというのは知性じゃないですか。そこそこ選ばれていないという現状があるのに、まだモテると思っているのは、正直イタいというか(笑)。
──最後に『不倫と正義』の対談は、中野さんにとって、どのような体験だったでしょうか。
中野 自分は理詰めで人を分析するような部分が強いですけれども、三浦さんは人間の心の機微という現実を大事にする人なんですよね。対談することで、理で仕組まれた格子の中に息吹を吹き込んでくれるようなところがあって、すごく心地よい体験で面白かったです。より有機的に物事も見られるようになったという良さがありましたね。