この週末から6週連続開催となる春のGIシリーズ。その1週目を飾るのは、伝統のGI天皇賞・春(5月1日/阪神・芝3200m)だ。

 ここ5年の結果を見ると、1番人気は3勝、2着2回とパーフェクト連対。配当面もわりと落ち着いているが、過去10年の結果を見ると、直近5年とその先の5年とでは趣がまったく異なる。

 その先の5年、つまり2012年〜2016年は1番人気がすべて不発に終わって波乱の連続。3連単では高配当が続出し、2012年には140万円超えの高額配当が飛び出している。ここ最近のイメージよりも、配当的には爆発力を秘めた一戦と言える。

 さらに、このレースの傾向を掘り下げていくと、今年はフルゲート18頭での争いとなるが、過去フルゲートで行なわれた時はほぼ例外なく荒れている。1番人気の勝利と言えば、1991年のメジロマックイーンまで遡(さかのぼ)らなければならない。それ以降、1番人気は勝利どころか、2着もない状況が続いている。

 要するに、今年は"波乱必至"の様相にある。

 加えて、この春のGIは荒れ模様。そうした流れを受けて、日刊スポーツの奥田隼人記者は「天皇賞・春もひと筋ではいかない」と踏んでいる。

「今年のJRA平地GIは、ここまでフェブラリーSから5レースが行なわれ、1番人気の勝利はいまだありません。馬券圏内(3着以内)に入ったのも、直近に行なわれた皐月賞のドウデュース(3着)が初めてでした。

 3連単の配当を見ても、高松宮記念の270万円超えを筆頭に、大阪杯の50万円超え、フェブラリーSと桜花賞も7万円超えと高配当が頻発。例年にないほどの波乱傾向にあって、今回も穴を狙わない手はないでしょう」

 そうして、奥田記者は穴馬候補としてタガノディアマンテ(牡6歳)の名前を挙げた。

「脚部不安で、昨年1月からおよそ1年間の休養を余儀なくされましたが、復帰戦となった2走前のGIII中山金杯(1月5日/中山・芝2000m)で、いきなり勝ち馬からコンマ4秒差の4着と健闘。続く前走のGII京都記念(2月13日/阪神・芝2200m)では2着と好走しました。しかも同レースでは、道中で行きたがる面を露わにしながらという内容でしたから、着順以上に力を見せた印象があります。

 長期休養前には、オープン特別の万葉S(京都・芝3000m)で1着、GIIステイヤーズS(中山・芝3600m)で2着という実績があるように、長距離適性も確か。半兄には4000m強の障害GIで上位に入る実績を持つタガノエスプレッソがおり、スタミナについては血統面の裏づけもあります」


天皇賞・春での大駆けが期待されるタガノディアマンテ

 父は、冒頭で触れた2012年の大波乱を招いたオルフェーヴル。断然人気で11着に沈んだが、タガノディアマンテはその父の無念を晴らし、父が手にできなかった栄冠を手にできるのだろうか。

「課題は折り合い面となりますが、4月20日の1週前追い切りに騎乗した鞍上の幸英明騎手は『(行きたがる面を見せた)前走はゲート直後に(意図的に前へ)出していったもので、折り合いは大丈夫だと思います』と話していて、そこまで心配する必要はなさそうです。前に壁を作って、馬群でじっと脚をタメることができれば、かなり面白い存在だと思います」

 奥田記者はもう1頭、気になる馬がいるという。

「マイネルファンロン(牡7歳)です。前走のGIIアメリカジョッキークラブC(1月23日/中山・芝2200m)では、11番人気ながら後方から脚を伸ばして2着と奮闘しました。

 同馬への期待は何と言っても、その意外性と晩成血統でしょう。3歳時(2018年)にはGI皐月賞(13着)にも出走した素質馬ですが、古馬になってからも当初目立った活躍を見せたのは、4歳時のGIII函館記念(函館・芝2000m)で2着に入ったことくらい。

 それが、6歳になった昨年、7月のオープン特別・巴賞(函館・芝1800m)で2着と好走。2番手から粘り込んで11戦ぶりの連対を果たすと、そこから2走後のGIII新潟記念(新潟・芝2000m)では、12番人気の低評価を覆して大外一気の差し切り勝ちを決めました。巴賞とは一転したスタイルで、デビュー30戦目にして重賞初制覇を遂げました。

 父は晩成血統で有名なステイゴールド。同産駒は最近も、マイネルファンロンと同世代のステイフーリッシュが大躍進。日本の中距離路線でくすぶっていましたが、海外の長距離重賞で新境地を開拓し、今年に入ってサウジアラビアとドバイの重賞で連勝を飾っています。

 また、マイネルファンロンは母系も優秀。半妹には昨年のGIオークスを制したユーバーレーベンがいて、底力を秘めています。

 距離は2200mまでしか経験がなく、一気の距離延長は未知数ですが、新潟記念や前走のAJCCで見せた後方で脚をタメる戦法ならば、適性次第で大仕事をやってのける可能性が十分にあると思っています」

 今年の天皇賞・春は、ディープボンド(牡5歳)とタイトルホルダー(牡4歳)が「2強」と称され、人気も2頭に集中している。だが、この春のGIを振り返れば、そうした馬たちが立て続けに馬群に沈んでいる。そういった動向を鑑みれば、ここに挙げた面々が歴史的な高額配当を生み出してもおかしくない。