49歳で整理収納アドバイザーに転身。「若すぎない講師」として成功するまで
50代から「新しいことを始めたい!」と思う人も多いはずです。でも、今さら私にできることあるの? 若い世代にはかなわないのでは? なんて考えて、なかなか一歩踏み出せないことがあると思います。そこで、49歳で整理収納アドバイザーの資格を取り、仕事を始めた阿部静子さんにお話を聞きました。53歳で初著書『ハンカチは5枚あればいい』(すばる舎)を出版され、ますます活躍の場を広げています。
49歳で整理収納アドバイザーに転身。シニア向け講座で人気になるまでのこと
現在、整理収納アドバイザーとして活躍される阿部静子さんは1967年生まれの55歳。宮城県仙台市出身で、地元でフリーアナウンサーとして仕事をしていました。49歳のとき、めまいや動悸の体調不良に悩まされ、やむなく仕事を休むことにしたそうです。
●整理収納の大切さに気づいて49歳で資格を取得
「家にいると、『なにかやらないと、私はこのまま終わってしまう』と気持ちが焦ってきました。そこで、以前、仕事で取材をして興味を持った整理収納アドバイザーの資格を取ることにしたんです」と阿部さん。元々、片づけは苦手。若い頃は、クローゼットには洋服でパンパンでした。でも、結婚・出産を経て整理収納に興味を持ち、片づけを開始。整理収納アドバイザー2級講座を受講しました。さらに、東日本大震災のときに、被害を最小限にするには家が片づいていることが大切なのだと実感しました。そんな経験から、整理収納は阿部さんにとって大切なものになっていました。
体調不良で仕事を休んでいる間に、整理収納アドバイザー1級の資格を2か月で取得。さらに、すぐに2級認定講師の資格も取得しました。
「多くの人に、整理収納や片づけを伝えたい!」という気持ちが強くなった阿部さんですが、資格を取得したからといってすぐに仕事にはなりません。
「49歳でゼロからのスタートです。とにかく“経験を積もう”と思い、カフェやレストランにお願いして、一角で小さなお片づけレッスンをスタート。市民センターなどに営業に行ったり、企業に営業電話をかけたりもしました。もちろん、断られて何度も心が折れそうに…。でも、『つまらないプライドは捨てよう。最初からうまくいかなくてあたり前』と意識を変え、コツコツ営業を続けました」
●シニア向けの片づけが強みに
そして、100件ほど営業電話をした企業のうち、3件で講座が決定。さらに、30件ほど営業をした市民センターでもいくつか講座が決まりました。市民センターでは、自分の年齢を考えて、シニア向けの講座を提案。“若すぎない講師”として、ニーズに合っていたのだと阿部さんは笑います。
そして、今でも続いているカルチャーセンターでの「ハッピーお片づけ講座」は、このときの営業の末に決まりました。
「最初はシニア向けではなかったのですが、受講生が50〜80代の方が多いので、自然にそうなりました。5年以上連続で開催し、私のベースの一つになっています。2020年12月に出版した初著書『ハンカチは5枚あればいい』(すばる舎)も、この講座が元になっています」
●片づけのコンテストではファイナリストに
さらに、実績を残そうと、整理収納のコンテストなどに積極的に参加しました。片づけのプロの全国大会「片づけ大賞2019プロ部門」ファイナリスト、「整理収納コンペティション2019プロ部門」ファイナリストに選ばれました。
幸い、予想以上に体調が早く回復したので、最初はアナウンサーと整理収納アドバイザーを両立していました。でも、講座を受講してくれた方々の「家がスッキリして気持ちも明るくなった」「家がキレイになったら、家族との仲がよくなった」など、前向きな変化にやりがいを感じるようになり、今では、整理収納アドバイザーの仕事がメインになりました。
「アナウンサーだからすぐに仕事が決まったのではと、思われる方もいるようですが、世の中そんなに甘くなかったです(笑)。まったく違う仕事なので、本当にゼロからのスタートでした。でも、人生の後半戦で新しい仕事に出会い、やりがいを感じています。あのとき、体調不良にならなければ方向転換することもなかったので、人生はなにが起こるかわかりませんね」
●新しいことに挑戦するときのポイント
そんな阿部さんに、49歳からの新しい挑戦するときのポイントをうかがいました。
・すぐに結果が出なくてもあきらめない
「すぐにうまく行くことはありません。営業、SNSの発信など、私を知ってもらうことをコツコツと積み重ねました。ブログはほぼ毎日更新していますが、この間、『3年ほどブログを読んで講座に申し込みました』という方が。続けてきてよかったです」
・目標を決める
「“片づけが苦手な方々が片づけられるようになり、その後の人生がハッピーになる”というのが、私の一番の目標です。ここからスタートし、今でも変わりません。辛いことがあって心が折れかけたときは、この目標を思い出すと乗り越えられます」
・自分の得意なことを生かす
「私はフリーアナウンサーなので、“話す、伝える”ことが得意です。どんな方でも50年生きていると、得意なものがあるはずです。仕事でなくても、人の話をじっくり聞ける、お金の計算するのが早い、いつも笑顔になれるなど…。苦手なものではなく、得意なものに目を向け、それを生かすことを考えるのがいいと思います」
・とにかく始めてみる
「50歳を目前にした私は、子どもの手が離れつつあるものの、自分の体調、親の介護など、いつなにが起こるかわからないので、できるときにやりたいことをやろうと思いました。準備をしてからではなく、完全な見切り発車です。やろうと決めたらすぐ動き、やりながら微調整しました。失敗もしましたが、そこから学ぶこともたくさんありました」