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フリーランスの労働組合結成の動きを加速し、労働環境を改善しようとウーバーイーツユニオン、ヨギーインストラクターユニオン、ヤマハ音楽講師ユニオンの関係者が3月4日、「フリーランスユニオン準備会」を立ち上げ、集会を開いた。

各ユニオンの報告パートで、ウーバーイーツユニオンの土屋俊明執行委員長は、「配達員からすると、(運営会社から)意地悪されているように感じざるを得ないような報告を次から次へと受ける」と語った。

●「現場の声を反映してもらえないと、最悪の場合、命を落とすことに」

土屋氏は、配達員のアカウントが突然停止され、ウーバー側に理由を尋ねると「交通安全クイズに回答してください」とアナウンスされ、システムに回答が認識されるまでアカウント停止状態が続く最近の事例を報告し「こんなことは日常茶飯事」と語った。

また、過去に置き配の仕様を強制されたことや、注文を受けるかどうかを応答する制限時間が、30秒から一時的に15秒になったこと、昨年の新報酬体系への変更で1件300円均一が発生したことなどを挙げ、運営会社の一方的な対応を問題視した。

土屋氏は「現場の声を仕組みに反映してもらえないと最悪の場合、配達員が命を落とすことになる。会社とは対等なコミュニケーションが必要だ。フードデリバリー業界を安全で健全にしたい」と語る。

ウーバーイーツユニオンは現在、運営会社から団体交渉を拒否されているとして東京都労働委員会に救済申し立てをしており、5月31日に結審、7月にも判断が示される見通しだ。

交通安全クイズについては集会後、実際に体験したという男性にも話を聞くことができた。この男性は、アカウントに突然ログインできなくなり、再登録した後に交通安全クイズが送られてきたことから、クイズとアカウント停止の関係性が気になったという。結局、48時間近く再開設までかかり、「簡単にアカウントを止められて、再開設にも時間がかかると日々の生活に困る人が出てくる」と語る。

ちなみに、運営会社に尋ねたところ、「交通安全のクイズは、交通ルールの遵守をお願いするために、新たに配達パートナーとして登録される全ての皆様にご案内しております。アカウントを止めた事実はございません」との回答があった。

●韓国ではフードデリバリー運営会社がフリーランスと労働協約を結ぶケースも

集会では労働政策研究・研修機構(JILPT)の呉学殊・統括研究員も、フードデリバリーサービスの配達員へのヒアリング結果と課題を報告した。

呉氏がヒアリングした配達員は原付バイクで約2年間で2000回以上配達した。配達の打診を拒否する回数が多いと、条件の良い案件が減る「干される」状態になり、最終的にアカウントが停止になる場合があるという。

呉氏は3つの問題点を挙げる。

(1)アカウントが停止される理由が不明確、サポートセンターの対応者によってばらつきがある。

(2)配達回数などで報酬が上乗せされる「インセンティブプラン」を達成するために無理をして事故が起きるリスクがある。労災保険に特別加入できるが、配達員が全額負担しなければならず、加入しにくい実態がある。

(3)サポートセンターの対応者が頻繁に代わり、円滑なコミュニケーションが難しい。組合をつくっても「配達員は労働者に該当しない」という理由で労使協議や交渉を拒否する。

呉氏によると、フリーランスの保護法制が進む韓国では、ネット経由で単発の仕事をするギグワーカーの保護が進む。韓国のフードデリバリー運営会社大手は、フリーランスと労働協約を結び、配達員の健診費用や制服費用、休暇費まで出している。呉氏は「労働協約はいわば憲法のようなもの。配達員の労働環境が大きく改善される」と話し、日本でも国が主導してフリーランス保護の政策を進める必要があると提言した。

(※3月14日16:40:一部表現を修正しました)

(ライター・国分瑠衣子)