渡辺直美

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ここ数年で一気に浸透した「自分らしさ」というフレーズ。社会や他人の価値観に合わせるのではなく、自分自身を尊重する考え方は社会を明るく照らすけれど、自分らしさってそもそも何か。どうやって見つけるのか。その言葉の前で立ち尽くしてしまう人もいるのではないだろうか。

「自分らしい人が一番美しい」というメッセージを発信し続けている、お笑い芸人の渡辺直美。そのユニークなファッションやパフォーマンスは多くの人にパワーを与え、Instagramのフォロワーは950万人を超え国内トップを誇る。夢を追いかけるため、ニューヨークに拠点を移したこともポジティブなニュースとして世間を賑わせた。

彼女はいつだって自信に溢れ、自分らしい生き方を貫いているように見えるが、10代の頃は「周りの人と比べてしまい、自分に自信がなかった」と話す。そこから、どのようにして自分らしさを見つけていったのか。10代の若者が、やりたいことや知りたいことを見つけるための学びの場「Inspire High」にて、「自分らしさをどう見つける?」をテーマに思いの丈を語った。エナジー溢れる最高なセッションは、大人たちの明日の励みにもなるはず。新しい年を迎える前に、一度立ち止まって、最高な自分を見つけるきっかけになると嬉しい。

■クラス中でウケたモノマネ、高校受験の失敗、芸人としてのブレイク

Googleの検索窓に「自分らしさ(スペース)」と入力すると、「わからない」という検索候補が上位に出てくる。

いくら個性を尊重し、多様性を称賛するような風潮になっても、肯定よりも謙遜を美徳としてきた日本文化と厳しい社会では、自尊心を保つことは想像以上に難しい。そうして、「そもそも自分らしさって何だろう? どうやって見つけたらいいんだろう?」と、立ち尽くしてしまう。

自分らしさは、無理に見つける必要はない。ただ、見つけようとする行為によって、自信を持つことができたり毎日を気分よく過ごせたりする手助けになるはず。一歩手前で立ち尽くしている10代の参加者に、渡辺直美さんは寄り添うように自身の経験を笑顔いっぱいで話してくれた。

直美さんは、じつは根がネガティブで、考えすぎてしまう性格だという。10代のころはネガティブがより顕著で、人と比較して自分自身にあまり自信がなかった。そこからいまの自分につながる転機が訪れたのは、中学校2年生のこと。

渡辺:幼い頃から人を笑わせることが大好きだったんです。だけど、中学生になると思春期の影響もあって人前に出ることが苦手になり、仲の良い友人の前だけでモノマネを披露して、こっそり楽しんでいました。

授業が早めに終わったある日、「残りの時間で、渡辺さんにモノマネをしてもらいましょう」って先生が無茶振りをしてきて。私が普段からモノマネをしているなんてクラスのほとんどは知らないし、求めていない子もいたんですよね。そんななかでドキドキしながらモノマネを披露したら、すっごくウケたんです! みんなに笑ってもらえたことが嬉しくて、それが自信になって、芸人になることを決意しました。

そこから、直美さんは夢に向かって一直線に歩みを進める。中学卒業後、15歳でアルバイトをスタート。高校受験に落ちたことを引きずらず、夢のために頭をすぐに切り替えた。

渡辺:3つの高校を受けたのに、ぜんぶ落ちちゃって。「落ちたなら仕方ない、働かなきゃ」と思って、受験に落ちたその日にバイト先に連絡をして、次の週から働き始めました。18歳になったらNSC(吉本工業の芸人養成所、吉本総合芸能学院)に通って芸人になることは決めていたし、そのためにやるべきことは何だろうって考えたんです。

見事芸人の道を進み、ビヨンセのモノマネでブレイク。その後、26歳でニューヨークへ短期留学。34歳の今年、日本で多くのレギュラー仕事を抱えるなか、世界で活躍するために拠点をニューヨークに移した。挫折にも前向きに立ち向かい、潔く決断できるのは、どうしてなのだろうか。