『Girls Planet 999 : 少女祭典』ビジュアル

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多国籍なメンバー構成のグループが多数存在するK-POPアイドルシーン。近年は、グループの育成やオーディション番組のフォーマットが輸出され、国外でローカライズされるなど、K-POPをめぐるトランスナショナルな動きはますます活発になっている。NiziUを生んだ『Nizi Project』や、韓国のオーディション番組『PRODUCE 101』のフォーマットを日本、中国でそれぞれローカライズした通称『日プ』『中プ』が最たる例だ。

そんななか、韓国、中国、日本の3つの文化圏の参加者がK-POPアイドルとしてのデビューを目指す、視聴者投票型サバイバルオーディション番組『Girls Planet 999 : 少女祭典(以下、『ガルプラ』)』が今夏から放送。10月末に日中韓同時生放送された最終回で、新たなガールズグループ「Kep1er」としてデビューする9人が決定した。

一方、『PRODUCE 101』で発覚した番組製作側の投票操作問題によって「視聴者投票」の信頼性が揺らぎ、かたちを変えてつくられ続けるオーディション番組にK-POPファンから向けられる視線は厳しい。「操作」がなかったはずの『ガルプラ』でも投票をめぐる論争が巻き起こった。

ライターの菅原史稀と松本友也のリレー連載「K-POPから生まれる「物語」」ではこれまでもアイドルオーディション番組の功罪を論じてきたが、『ガルプラ』からあらためて見えた、多国籍な視聴者投票型オーディションの面白さと困難さ、そこから浮かび上がる、いまのK-POP産業を巡る課題とは? 菅原と松本が語り合う。

■3か国合同企画『ガルプラ』にどんな期待感を持っていたか
―『ガルプラ』は3つの文化圏に参加者が限定されていることが特徴でした。これまでにもAKBグループのメンバーが参加した『PRODUCE 48』のような日韓合同企画や、K-POPオーディションのフォーマットを用いた各国の番組は存在していましたが、それらと『ガルプラ』にはどんな違いがあったと思いますか?

松本:一番わかりやすい違いは「グローバル性」が強調されていたことでしょうか。これまでの『PRODUCE 101(以下、『プデュ』)』シリーズでは、各国に輸出され、ローカライズされてきた番組も含めて、投票権を持つのは基本的にその国内の在住者のみでした。

それによって、国ごとに選ばれやすい・好まれる参加者の傾向に違いが出たりもしていたのですが、『ガルプラ』は全世界から投票を募る「グローバル投票」をひとつの売りにしていました。「PLANET=惑星」という番組のモチーフも、そうした超国籍性を象徴していますよね。

グローバル化とローカル化が同時進行する昨今の潮流をふまえたうえで、それらを再度K-POPに合流させるような構想とも捉えられるのかなと思います。

菅原:そのときに、あくまでもこれまでの「K-POP」のあり方に他国の要素を回収していくのか、それとも他国の要素を踏まえてまた別のものが出てくるのか、といったところが大きなポイントになってくると感じていました。

中国版の『プデュ』(以下、『中プ』)や『PRODUCE 101 JAPAN(以下、『日プ』)などの番組では、同じフォーマットでも地域が違えば番組の様相もどうしたって本国(韓国)のものとは変わってくる、ということを実感しました。なので、『ガルプラ』にはいろいろ心配な要素もありつつも、3つの文化圏におけるアイドルシーンの協働がどんな化学反応を起こすのかという期待感は持っていました。

■K-POPオーディション番組のローカライズが盛ん。芸能文化やファンカルチャーの違いが浮かび上がる
─『日プ』や『中プ』など、これまでのローカライズされたオーディション番組において、地域によって違う様相というのは、どのようなところで見られましたか?