日本オラクルは12月22日、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)の2021年の取り組みを総括するとともに、最新のアップデート状況などについて説明を行った。

日本オラクル 事業戦略統括 事業開発本部の佐藤裕之本部長は、「OCIの進化の方向性は、柔軟な基盤、データ基盤、クラウドセキュリティ、配置の柔軟性の追求の4点にあり、それによって、エンタープライズ・データを支えるクラウドプラットフォームへと進化している」と語り、この1年間の取り組みについて振り返った。

日本オラクル 事業戦略統括 事業開発本部 本部長 佐藤裕之氏


IaaSの強化としては、Armベースインスタンスの提供開始、ストレージおよびネットワークの強化によるリソースの拡大が行われた。データベースサービスの強化としては、MySQL Heatwaveの新コンポーネントやMySQL Autopilotを追加することによるデータプラットフォームの構築を実現し、Oracle Autonomous JSON Databaseの提供などによる新たな自律型サービスの導入を実現した。

加えて、重要なエンタープライズワークロードの移行をさらに容易にするためにOracle Cloud Lift ServicesやOracle Support Rewardsの提供を開始したほか、ロードバランサーでWeb Application Firewallの利用を可能にし、4つのセキュリティサービスの強化を行った。佐藤氏は、これまで協業が少なかったVMwareとの連携が増えたことも強調した。

2021年のOracle Cloud Infrastructureの進化


OCIで提供しているサービスについては、68種類から95種類に増加していること、追加された新機能や機能強化が350以上に達したこと、無期限のトライアルサービスであるAlways Freeによって提供するサービス数が11種類から24種類に増加したことが紹介された。

さらに、佐藤氏は国内市場向けのビジネス強化として、2021年6月にISMAPを取得し、数多くのサービスを登録していること、11月にCloud Center of Excellence(CCoE)サービスの提供を開始したこと、同じく11月にはData Driven Digital Transformationスタートアップサービスの提供を開始したことにも触れた。

2021年のOracle Cloud Infrastructureに関わるビジネスサービスの拡充


そのほか、国内年次フラグシップイベント「Oracle Cloud Days 2021」を11月にオンライン開催したのに続き、12月には開発者とエンジニアを対象にしたオンラインイベント「Developer Day」を開催。そのほか、年間を通してオンライン無償開催の「Oracle Cloud ウェビナー」を40回以上、技術者向けの「Oracle Code Night」も40回以上開催した実績も強調した。

佐藤氏は、無償のOCI トレーニングを提供する「Oracle Cloud Infrastructure 無償学習プログラム」に加えて、2022年3月31日までの期間限定で認定試験の無償受験が可能になるプログラムも新たに用意したことにも触れた。

日本におけるOCIの導入事例としては、野村総合研究所が資信託窓販向けソリューション「BESTWAY」をOCIで稼働したこと、ファンコミュニケーションズがOCIでMySQLデータベースの利用を開始したこと、パーソルキャリアが転職サービス「doda」を支える基幹業務データベースをハイブリッドクラウド構成に移行したことが紹介された。

佐藤氏は、Oracle Database 21.3で50以上の機能を強化したほか、大規模なオンライン・グローバルイベント「Database World」を開催したことに触れながら、「コンバージドデータベースやオートノマスデータベースといったコンセプトはそのままに、マイクロサービスのデータストアとして活用するための機能強化が増えている」などと述べた。

佐藤氏の説明に続き、2021年9月以降に発表したOCIに関する85以上の新機能や機能強化のうち、3つの機能について詳細な説明が行われた。

2021年11月に提供を開始した「Oracle Cloud Infrastructure AI Services」は、クラウドサービス、アプリ、データ資産にまたがる無償の統合AI/MLプラットフォームだ。同プラットフォームの特徴は、専門知識がなくてもMLを利用できることに加えて、Oracle DatabaseやExadataなどに蓄積したデータや、Fusion Application、NetSuiteといったアプリケーションからのデータを活用できるエンタープライズ向けAIであることだという。

今回、「Oracle Cloud Infrastructure AI Services」にテキスト分析、音声認識、画像認識、時系列データに基づく異常検出、時系列データに基づく需要予測、データラベルなどの機能が追加された。

事業戦略統括事業開発本部シニアマネージャーの大澤清吾氏は、新機能について、「Children's Medical Research Instituteでは、画像認識とデータラベルの機能を利用し、様々なタイプの細胞を検出するプロセスを自動化。1カ月かかっていたシミュレーションを5分に短縮したり、10時間かかっていた分析時間を数分に短縮したりといった効果が出ている。また、SS Global LLCでは、時系列データに基づく異常検出機能によって、車両や貨物、運転手から収集した運送業界における各種データをもとに、正常性やリスクを判断。これが、大幅なコスト削減につながっている」と説明した。

日本オラクル 事業戦略統括事業開発本部シニアマネージャー 大澤清吾氏


また、事業戦略統括 事業開発本部 シニアマネージャーの谷川信朗氏は、10月に発表された最新のクラウドデータ基盤アーキテクチャである「Data Lakehouse on Oracle Cloud Infrastructure」の機能強化について、次のように説明した。

「データレイクとデータウェアハウスにサイロ化された運用が改善された。あらゆるデータに対してどこからでも分析を可能にし、両者の長所を統合したアーキテクチャーへのシフトを実現する。Autonomous Data Warehouse(ADW)に新しいクエリオフロード技術を導入し、Data WarehouseからDataLakeまで、すべてのデータをより高速なクエリで分析することを可能にしたほか、ADWをOCI Data Catalogと統合し、Lakehouse内のオブジェクトを簡単に発見、理解、アクセスを可能としている」

日本オラクル 事業戦略統括 事業開発本部 シニアマネージャー 谷川信朗氏


鉱物採掘技術を提供するMineSenseでは、OCI上のレイクハウスの活用によって、5倍の検索速度を実現したという。

クラウドでの開発ライフサイクルの自動化を支援する「Oracle Cloud Infrastructure DevOps」は、ソフトウェアをビルド、テスト、デプロイし、開発ライフサイクルの各フェーズを自動化することができる運用管理ツールだ。

コード管理(Git Repository)、ビルドパイプライン、成果物管理( Artifact Registry)、デプロイパイプラインから構成される各機能を用いてCD/CIを取り入れ、一気通貫の開発運用プロセスを実現するとともに、仮想マシン、Kubernetes環境、サーバーレスなど、実行環境を問わないデプロイを可能にした。また、サービスの価格は無料になっている。事業戦略統括 事業開発本部 シニアマネージャーの田中隆三郎氏は、「Oracle Cloud Infrastructure DevOps」の特徴について、「開発ライフサイクルにおけるそれぞれのフェーズを自動化することができ、開発者にとっては、工数の削減、品質の担保といった点でメリットがある」と語っていた。

日本オラクル 事業戦略統括 事業開発本部 シニアマネージャーの田中隆三郎氏