PA Archive/PA Images
PA Archive/PA Images

アンビエント・ミュージックの巨匠ブライアン・イーノ氏が、このところ芸術作品や限定・レアアイテムなどに光を当て、より高収益化する手段として流行しているNFT(non-fungible token)についての持論を語りました。

ブライアン・ピーター・ジョージ・セント・ジョン・ル・バプティスト・ド・ラ・サール・イーノ(要するにブライアン・イーノ)と言えば、ギークな人々にはWindows 95の印象的な起動音を数か月もかけて制作したことで知られるアーティストですが、彼のもとにも何か作品をNFTとして販売しないかというお話がこれまでに複数回、持ち込まれたことがあったそうです。

イーノ氏は、NFTの説明を聞いてもそのほとんどは、「このテクノロジーで何ができるか」という話だったと述べ「どうすれば世の中をより良くすることができるか」という話ではなかった。一言でいえば「どうすればそれを金に変えられるか」という話ばかりだったとしました。

われわれ庶民からすれば、それらは「絶対に儲かる」夢のような話のはずですが、イーノ氏の返答は「これまでのところ、その分野で作る価値のあるものがあると私に確信させるものは何もない。私にとって価値のあるものとは、銀行口座にどれだけ入るかでなく、世の中に価値を提供するために何を実現すべきかということを意味する」とのこと。そして「もし、金を稼ぐのが第一の目的だったなら、いまとは違う人間として、違うキャリアを歩んでいただろう。おそらく、アーティストという職業は選ばなかったはずだ」とその考えを語りました。

さらにイーノ氏は「NFTは、アーティストがグローバル資本主義から少しばかり恩恵を受けるための手段であり、金融化(financialization)のミニチュア版に過ぎないと思う。なんと素晴らしい。これのおかげでアーティストもまた、ちっぽけな資本家というクソったれ野郎(asshole)になれるんだよ」とエレガントな言葉でNFTを売る行為について説明しました。

実際にはイーノ氏の信頼する知人らもNFTを気に入っている模様で、イーノ氏本人もNFTに関する「質問には心を開いておくようにしている」としました。それでも最後には「いまは主に詐欺師(NFTクリエイター)がカモを探して歩いているような状況だ。そして目を輝かせたアーティストが大勢、喜んで後者に…まあ、私の皮肉はこの辺にしておこう。要するにいまはあまりそれについて前向きには感じていないと言うことだ」と述べています。

2021年は、多くの著名人や企業、スポーツ団体、アーティストetc…がNFTを売り出し、大金を手にしたとの話題が多く聞かれた年でした。

NFTはブロックチェーン技術を用いて固有のデジタルアイテムの所有権を売買するのに使われるもので、日本語に直訳すれば「非代替性トークン」となります。いったいどんなものがNFTで売買されるかと言えば、たとえば絵やアニメーション、オーディオ、ビデオゲーム用のアイテムなど。なかには世界初のツイートを売ったジャック・ドーシーの例もあります。さらにはメタバース向けのスニーカーなど、デジタルアイテムだけでなく現実世界のコレクターズアイテムとも紐付けられるNFTもあります。ただ、一方で、ブロックチェーン技術のエネルギー効率の悪さなどは、消費する電力を生み出す際に発生するCO2の観点などから環境保護に悪影響を与えるという批判なども出ており、かつて環境汚染への批判を取り上げたアルバム「PlasticBeach」を発表したことのあるGorillazが、バンドの20周年記念のNFTを販売して批判されたりしていました。

Source:The Crypto Syllabus

via:NME, The Verge