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はじめに

メルセデス・ベンツのEVブランドであるEQは、突如として数々のモデルを投入した。中型SUVのEQCが登場したのは2年以上前だが、それからしばらくは沈黙を続けていた。その間、ライバルたちのゼロエミッション攻勢が強まっていたにもかかわらずだ。

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ところが、最近になってそのラインナップ拡充が加速した。ミニバンタイプのEQVが英国に上陸し、小型SUVのEQBと大型サルーンのEQSは右ハンドル投入間近だ。しかし、それらのどれをとっても、EVの販売台数を大幅に伸ばせるだけのポテンシャルで、今回のテスト車に敵うものはないだろう。


テスト車:メルセデス・ベンツEQA 250 AMGライン・プレミアムプラス    JOHN BRADSHAW

その点の大本命と見込まれる、メルセデスEQのエントリーモデルであるEQAが、今回のテスト車だ。2020年春に市販モデルが登場し、今年一年で英国の路上で見かける機会が増えた。パフォーマンスとコスト、そして市場投入時期との妥協が絶妙なクルマだと、メルセデスは形容する。

こういうことは、メルセデスのようなプレミアムブランドでは珍しい。いつもなら、デザインもエンジニアリングも妥協がないと思われることを望み、新型車をそう紹介するものだからだ。

しかし、いまは自動車業界にとって滅多にない挑戦のときだ。マーケットをリードするコンパクトEVを、いち早くショールームに並べようというのであれば、いつもと違うアプローチを取るのにはもってこいのタイミングなのかもしれない。

その妥協の中でも特筆すべきなのは、プラットフォームだ。競合モデルの多くとは異なり、既存の内燃機関モデル用アーキテクチャーをベースにしているのである。

詳細は追って説明するが、簡単にいえば、EQAは、AクラスやBクラス、CLAやGLAと、ベースを構成するコンポーネンツを共有している。そして、それらと同じドイツのラスタット工場で生産される。

そのため、メカニカルレイアウトは、アウディQ4 Eトロンなどとまったく違い、むしろエンジン車で見慣れた前輪駆動を採用しているのだ。はたしてそれは、この急激に変化し、重要度が非常に高まっているクラスで、新たなベンチマークとなりうるのだろうか。

意匠と技術 ★★★★★★☆☆☆☆

5万ポンド(約700万円)以下のEVには、技術的にお決まりになりつつある点がいくつかある。たとえばキアEV6からフォルクスワーゲンID.3、アウディQ4 Eトロン、テスラ・モデル3、そしてフォード・マスタング・マッハEなどがそうで、さらに多くの例を挙げることもできるが、駆動用モーターはリアに搭載されている。そのおかげで、優れたパッケージングも可能になっている。

ところが、EQAはその手法を取らなかった、数少ない例外のひとつだ。


充電ポートは右リアフェンダーに設置。急速充電は最大100kWに対応するが、いまやこの数値では物足りなく感じるようになってきている。    JOHN BRADSHAW

その大きな理由が、EQAのプラットフォームが全面新設計ではないこと。ベースになっているのは前輪駆動車用シャシーのMFAで、それを電動車用に改修して使用している。構造的にみてもっとも近いのはAクラスではなく、車名も近いクロスオーバーのGLAだ。

そのことは、エクステリアにも明確に現れている。地上高を引き上げた車体のシルエットはほぼ変わらず、デザイン要素やディテールが異なっていても、共通性は一目瞭然だ。

駆動用のリチウムイオンバッテリーは、ネット値66.5kWhの容量を持ち、補強フレームに囲まれてキャビンの床下ほぼ全面を埋めている。これは、かなり重たいユニットだ。フォルクスワーゲングループは、同様のレイアウトで約500kgというが、その容量は77kWh、同等サイズのポールスターは75kWhを絞り出す。

EQAに、重量面で取り立てて不利な材料はないが、航続距離はそういうわけにはいかない。WLTPモードの公称値は402〜423kmで、ほぼすべての競合車に及ばない。

フロントに交流非同期モーターを積んだ前輪駆動レイアウトは、効率向上に寄与しなかったようだ。四輪駆動のEVを生産するメーカーによれば、エネルギー効率や航続距離の改善に大きく貢献するのは、主要な駆動輪をフロントではなくリアにすることだという。

エントリーグレードのEQA 250は、最高出力が191ps、最大トルクが38.3kg−m。主な競合モデルに対して、パワーは劣るがトルクは太刀打ちできるレベルだ。さらなるハイパワーや四輪駆動を求めるなら、2モーターの228ps仕様と292ps仕様が選択できる。250と同じモーターを使っているが、極めてわずかに航続距離が伸びている。

サスペンションはほぼすべてのモデルで、コンベンショナルなスティールのコイルスプリングとパッシブダンパー、通常のスタビライザーを用いる。型式は、フロントがストラット、リアがマルチリンクだ。

テスト車は最上位仕様のAMGライン・プレミアムプラスで、アダプティブダンパーが標準装備される。さらに、可変レシオの速度感応式パワーステアリングが装着され、切りはじめのギア比が速くなっている。ただし、半導体不足の影響からか、現在はこの仕様が英国向けラインナップから外されている。

内装 ★★★★★★☆☆☆☆

EQAは5座クロスオーバーハッチバックとして、適度な実用性を備えている。しかし、マスタング・マッハEやスコダ・エンヤックiVに乗ったあとだと、とくに広くは感じられない。

前席は、着座位置も操作系の配置も高めだが、足回り、肘周り、頭上のいずれもゆとりがある。ドライバーズシートは快適で、乗り降りしやすい高さだ。


構成パーツのほとんどは、メルセデスの小型車に共通するもの。素材の質感は十分とはいえないが、プレミアム感を演出するには十分といえるだろう。    JOHN BRADSHAW

コントロール系も室内トリムも、メルセデスのコンパクトカーでは見慣れたものばかり。ドライバーの面前には計器盤とインフォテインメント用のディスプレイが2面並び、グロスブラックのプラスティックパネルとクロームのトリムが多用される。送風口はメルセデスの定番となった、タービン風のデザインが施されている。

高級感はかなりのものだが、けばけばしいと感じるかもしれない。その印象をとくに強くしているのが、さまざまな発光色が選べるアンビエントライトだ。しかし、マテリアルの質感は深みがなく、期待するような完全さはない。それでも、一般的なユーザーが贅沢でプレミアムだと感じるには十分だ。

タッチパネルへの依存度を高めた競合車の操作系に不満を抱いているなら、EQAに備わるエアコンの実体コントロールパネルや、センタートンネル上に独立して設置された入力デバイス、インフォテインメントのメニューを選択するショートカットボタンなどは好ましく思えるだろう。

ステアリングホイールのスポークに設置された、メーターパネルとインフォテインメントのディスプレイを操作する発射スイッチのようなデバイスは、はじめて使うとやや混乱するかもしれないが、すぐに慣れる。センターディスプレイに手を伸ばさずに済むことも多く、視線を路面から逸さずに操作できるのもありがたい。

後席は、前席よりやや物足りなく、主なライバルに後れをとっているが、小柄な大人やティーンエイジャーならば快適に過ごせるだろう。チャイルドシートの脱着は容易で、シートベルトはシートの両脇に収納スロットがあるので、シートバックを倒す際に絡まず、走行中にあちこち当たることもない。

荷室はかなりワイドだが、奥行きは中型SUVのレベルに達していない。後席使用時でトノカバーより下の容量は340Lだ。後席をすべて倒し、天井まで積み上げた場合は、エンヤックiVより400L近く少ない。しかし、それよりも不満を感じるのは、充電ケーブルの置き場が、ラゲッジルームしかないことだ。

走り ★★★★★★★☆☆☆

EQA 250は、シグナルスタートで家族を喜ばせられるような類のEVではない。もっとも、日常的なドライビングでは、十分以上のパフォーマンスをみせる。高速道路やペースの速いカントリーロードでも満足のいく勢いがあり、市街地では融通が利いて運転しやすい。

電気モーターによる回生ブレーキのコントロールのダイレクトさや、空走での勢いの維持を可能な限り高めたことは賞賛に値する。おかげで、好みや環境に合わせた運転スタイルを見つけることが難しくない。また、EVでは見過ごされがちだが、電費を向上して航続距離を伸ばすのに効いてくることもある。


EVに期待しがちな強烈なスタート加速は味わえないが、追い越し加速は力強い。ただし、滑りやすい路面では、発進でも制動でもタイヤグリップの低さが顕著に感じられる。    JOHN BRADSHAW

それを補完するのが、スポーツ/コンフォート/エコが設定される走行モードのコントローラーと、ステアリングホイールに設置された、エネルギー回生レベルを簡単かつ直感的に調整できるシフトパドルだ。開けた道でのコースティングや、一時停止などの交通法規を先読みした回生制御とも相まって、完全な1ペダル運転と効率アップを可能にする。

路面が滑りやすい状況では、明らかにスタンディングスタートでの十分なトラクションを稼ぐのに苦戦し、ホイールスピンを防ぐための電子制御がかなり介入しているのがわかる。それでも、効き具合は控えめだ。

ただし、スロットルペダルを適切に操作すれば、0−97km/h加速は8.4秒をマーク。0−100km/hの公称値が8.9秒なので、それ以上の結果だといえる。それでも、同じようなコンディションでテストしたQ4 Eトロン40にはコンマ3秒のビハインドだが。しかし、発進でのトラクションが必要ない高い速度域からの加速性能では、EQAが上回っている。

フットブレーキでの制動時には、大きめのピッチが出て、急に車体の重さを感じさせるようになる。スリップしやすいコンディションでは、発進加速時と同じく、縦方向のグリップ限界の悪影響が出てしまう。

ブレーキペダルのフィールと、踏み込みに対する制動力の増し具合は、EVとしてはまずまず。ただ、完全制止の際には、スナッチやカックンブレーキといった挙動が出てしまうこともある。

使い勝手 ★★★★★★★★☆☆

インフォテインメント

10.0インチのディスプレイを2面設置したMBUXインフォテインメントシステムは、5年前なら最先端装備に見えた。それから変わったことがあるとすれば、メルセデスがより大きな画面を導入し、タッチスクリーンへの依存度を引き上げたことくらいだ。

しかし、シュツットガルトが送り出す最新のデジタル技術の中には、あるべき使いやすさを持ち合わせていないものもある。旧式のシステムのほうが、はるかに直感的な操作ができたと思えることがあるのだ。


大画面と先進機能を備えるインフォテインメントシステムではあるが、使い勝手が向上したとは言い難い面も。とくに、自然な視線上に情報が表示されないARナビには、集中力が削がれる。    JOHN BRADSHAW

インフォテインメントディスプレイは、ステアリングホイールの親指パッドと、センタートンネル上のもっと大きな入力デバイスで操作できる。アクセスはイージーで、固定されたメニューボタンもある。

音声入力も可能だ。ただし、コマンドを常に一度で認識してくれるわけではない。

テスト車は最上位機種で、出来のいいヘッドアップディスプレイが備わる。制限速度やナビゲーションの矢印を表示してくれて、じつに使い勝手がいい。

ARナビゲーションディスプレイには、相変わらず集中力を削がれる。少なくとも、われわれはそういう感想を抱いている。インフォテインメントディスプレイへ向ける自然な視線から逸れたところに、情報が表示されるからだ。

燈火類

フルLEDのヘッドライトとテールライトは、全グレードに標準装備。アダプティブライトは、明るいのだが、対向車を眩惑しそうなときもある。自動減光のレベルは、もっと低いほうがいい。

ステアリングとペダル

ほどよいサイズのキラキラしたスポーツペダルと大きなフットレストが、ほどよい間隔で配置される。足元のスペースは、かなりの広さがある。

操舵/安定性 ★★★★★★☆☆☆☆

テスト車の20インチホイールとピレリPゼロ・エレクトは、発進時のトラクションと制動時の縦グリップより、横グリップのほうが効く。スプリングが柔らかく感じられ、重くて背の高い車体は、一般的なコンパクトEVよりバネ上の動きが多い。

テスラやポールスターほど一体感が期待できず、ワインディングロードを活発に走らせると、ややそれを望まないようなところをみせながらも、それなりにこなしてくれる。緻密で効果的なトラクションコントロールとスタビリティコントロールによってコースを外さず走り、最終的には横方向の抑えられたボディコントロールが安定したコーナリングを保証してくれるので、安心して走れるのだ。


ボディの挙動は、重さと足回りのソフトさを感じさせ、飛ばしたときのクルマとの一体感は多くのライバルに及ばない。それでも不足を感じるほどではなく、安定して走る。    JOHN BRADSHAW

テスト車に装着されていたアダプティブダンパーは、走行モードを切り替えても、このコーナリングの挙動に大きな違いを生むことはない。スポーティなセッティングでは、垂直方向のボディコントロールの制御がやや改善されるが、決して洗練されているといえるようなものにはならない。

路面が平坦でないと、前後方向の荷重移動が頻繁に起こる。とくにそれを誘発するようなことをしなくても、上り下りが続くような地形では波打ちやピッチが出る。それでサスペンションのトラベルを使い切ってしまうようなEVもあるが、このEQAはそこまでではない。とはいっても、運転に自信をもたらしてくれる足回りとはいえないのもまた事実だ。

快適性/静粛性 ★★★★★★★☆☆☆

メルセデスはこのクルマを、上質感を高めるべく、遮音性と気密性にとりわけ注意を払って開発したという。

たしかに、高速道路の速度域では、かなり静粛性の高いクルマだ。そうはいっても、全体的に見れば、室内騒音の計測値はどの速度域でもQ4 Eトロン40との差は1dBA以内に収まっている。


静粛性は開発時の重点項目だったというだけあって優秀だが、騒音レベルはQ4 Eトロンとほぼ同等だった。20インチタイヤは多少突き上げを感じさせるが、ランフラット仕様よりはよさそうだ。    JOHN BRADSHAW

20インチのタイヤとホイールは、それほど大きなロードノイズをたてるわけではないが、荒れた舗装や盛り上がった金属ジョイントでは、突き上げや衝撃音を発生する。より小さなサイズではランフラットタイヤも用意されるが、そちらはおそらく乗り心地にもう少し妥協を強いるはずだ。

エントリーレベルのEQAスポーツ仕様でも、コンフォートシートは標準装備され、座面は角度と太もも裏側のサポートが調整可能だ。上位グレードでは、表皮が合成皮革のアルティコとスエード調のダイナミカのコンビネーションになるが、スポーツ仕様のシンプルなレザーシートほど耐久性はなさそうに思える。

視認性は全方位とも良好だ。さらに、駐車時には360°パーキングカメラも役に立つが、装備されるのは最上位グレードに限られる。

購入と維持 ★★★★☆☆☆☆☆☆

メルセデスは既存プラットフォームを用い、実質的にはGLAのスピンオフとなるEVラインナップの最小モデルをうまく生み出した。それにより、魅力的な価格設定でEQAを市場投入しようと狙ったのだろう。

だとすれば、どこかで計算を間違えたに違いない。明らかに的外れだからだ。それも、決して小さくないずれ幅で、である。


EQAの残価率は、ライバルたちより低いと予想される。ただし、時間が経つとともに、その差は縮まっていきそうだ。

エントリーレベルのEQA 250スポーツは、アウディQ4 Eトロン35の最廉価グレードより10%ほど高価だ。また、より大容量のバッテリーを積むポールスター2などと比べても、同じような位置付けのグレードを5%ほど上回る価格だ。

少なくともEQAがヒートポンプを標準装備しているという点は、ライバルたちに対するアドバンテージだ。寒い時期には、競合車より高いエネルギー効率を期待できる。フォルクスワーゲンID.4やQ4 Eトロンなどはオプション設定されているが、マスタング・マッハEには用意されていないアイテムでもある。

ただし今回のテストでは、気温が14℃以上あったので、ヒートポンプの恩恵を感じることはできなかった。英国の高速道路における典型的なツーリングのシーンに相当する113km/h巡航では、電費が5.1km/kWhだった。

フル充電での航続距離は341kmになる計算で、テスラ・モデル3のスタンダードレンジとスタンダードレンジ・プラス、フォルクスワーゲンのもっとも小さなバッテリーを積むモデルには勝るという程度。これまでテストした主要なライバルの多くは、今回のEQAを10〜25%上回る結果を残している。この価格のクルマとしては、満足できる結果ではなかった。

スペック

レイアウト

EQAは、メルセデスのコンパクトカー用プラットフォームであるMFAの改修版を使用する。これとの関連度がもっとも高いのは、小型クロスオーバーのGLAだ。エントリーレベルの仕様はフロントモーターの前輪駆動だが、リアにモーターを追加した4マチック仕様も用意される。

駆動用バッテリーパックの重量は480kgで、キャビンの床下に搭載される。テスト車の前後重量配分は、実測で53:47だった。

パワーユニット


コンパクトカー用プラットフォームのMFAを、EV用に改修したものがEQAのベース。構造的にもっとも近いのは、GLAのそれだ。

駆動方式:フロント横置き前輪駆動
形式:同期電動機
駆動用バッテリー:水冷式リチウムイオンバッテリー、−kWh(グロス値)/66.5kWh(ネット値)
最高出力:191ps
最大トルク:38.3kg−m
許容回転数:13000rpm
馬力荷重比:97ps/t
トルク荷重比:19.5kg−m/t

ボディ/シャシー

全長:4465mm
ホイールベース:2729mm
オーバーハング(前):915mm
オーバーハング(後):821mm

全幅(ミラー含む):2025mm
全幅(両ドア開き):3780mm

全高:1620mm
全高:(テールゲート開き):2140mm

足元長さ(前):最大1100mm
足元長さ(後):最大740mm
座面〜天井(前):最大970mm
座面〜天井(後):最大930mm

積載容量:340〜1320L

構造:スティールモノコック
車両重量:1965kg(公称値)/2030kg(実測値)
抗力係数:0.28
ホイール前・後:8.0Jx20
タイヤ前・後:235/45 R20 100T
ピレリPゼロ・エレクト
スペアタイヤ:なし(パンク修理キット)

変速機

形式:1速リダクションギア
ギア比
最終減速比:−
リダクション比:9.6:1 
1000rpm時車速:14.2km/h

電力消費率

AUTOCAR実測値:消費率
総平均:4.8km/kWh
ツーリング:5.1km/kWh
動力性能計測時:2.1km/kWh

メーカー公表値:消費率
混合:6.1〜6.4km/kWh

公称航続距離:402〜423km
テスト時平均航続距離:322km
CO2排出量:0g/km

サスペンション

前:マクファーソンストラット/コイルスプリング、スタビライザー
後:マルチリンク/コイルスプリング、スタビライザー

ステアリング

形式:電動、ラック&ピニオン
ロック・トゥ・ロック:2.5回転
最小回転直径:11.4m

ブレーキ

前:330mm通気冷却式ディスク
後:320mmディスク
制御装置:ABS、ブレーキアシスト
ハンドブレーキ:電気式(ステアリングコラム右側にスイッチ配置)

静粛性

アイドリング:−dBA
全開走行時(145km/h):70dBA
48km/h走行時:59dBA
80km/h走行時:62dBA
113km/h走行時:67dBA

安全装備

ABS/ESP/ブレーキアシスト
Euro N CAP:5つ星
乗員保護性能:成人97%/子供90%
交通弱者保護性能:81%
安全補助装置性能:75%

発進加速

テスト条件:湿潤・滑りやすい路面/気温16℃
0-30マイル/時(48km/h):3.4秒
0-40(64):4.7秒
0-50(80):6.4秒
0-60(97):8.4秒
0-70(113):11.0秒
0-80(129):14.1秒
0-90(145):18.0秒
0-402m発進加速:17.1秒(到達速度:139.9km/h)
0-1000m発進加速:−秒(到達速度:−km/h)

ライバルの発進加速

ライバルの発進加速
アウディQ4 E−トロン 40スポーツ
テスト条件:降雨/気温12℃
0-30マイル/時(48km/h):3.1秒
0-40(64):4.4秒
0-50(80):6.0秒
0-60(97):8.1秒
0-70(113):10.9秒
0-80(129):14.6秒
0-90(145):19.7秒
0-402m発進加速:16.5秒(到達速度:135.5km/h)
0-1000m発進加速:30.7秒(到達速度:160.5km/h)

キックダウン加速

20-40mph(32-64km/h):2.7秒
30-50(48-80):3.0秒
40-60(64-97):3.7秒
50-70(80-113):4.6秒
60-80(97-129):5.7秒
70-90(113-145):6.9秒

制動距離

テスト条件:湿潤・滑りやすい路面/気温16℃
30-0マイル/時(48km/h):11.7m
50-0マイル/時(64km/h):31.9m
70-0マイル/時(80km/h):62.6m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:3.70秒

ライバルの制動距離

アウディQ4 E−トロン 40スポーツ
テスト条件:降雨/気温12℃
30-0マイル/時(48km/h):10.1m
50-0マイル/時(64km/h):27.4m
70-0マイル/時(80km/h):55.5m

結論 ★★★★★★☆☆☆☆

EQAは、メルセデスのような立場にあるメーカーが、改善すべき問題に慌てて取り組んだ結果、という印象を拭えない。さもなければ、まだ立ち上がったばかりのEV市場への投資を最高級モデルのEQSから始めて、そのあとで手頃なモデルを売って元手を回収しようという、おそらくは計画があったのだろう。量販車を売るときの常套手段だ。

いずれにせよ、エンジン車のプラットフォームをベースにしているので、専用設計のEVには敵わないところもある。パフォーマンスや上質感、ドライバビリティではライバルに迫る。ところが航続距離や、乗り心地とハンドリングの洗練性、実用性では後れをとっている。


結論:競争力はあるが、全てが平均点レベル。車両価格を考えれば、もっと高い水準を期待したいところだ。    JOHN BRADSHAW

そしてなにより、既存のコンポーネンツを流用しているにもかかわらず、価格が高い。ベースとなったエンジン車はもちろん、競合車と比べても、ひときわ割高だ。

メルセデスブランドの熱狂的信者であれば、はじめてのEVとして喜んでこのクルマを選ぶだろう。しかし、世界初の自動車メーカーの仕事であり、しかも価格が高いのだから、もっと出来はよくてもいい。

担当テスターのアドバイス

マット・ソーンダース

もっと寒い時期に、ヒートポンプを持たないライバルと比較して、航続距離の差がどれくらい縮まるのか試してみたいところだ。しかし、それよりも先に確かめてみたいのは、日常使いで不満を感じないようなタイヤへ交換した場合の変化だ。

イリヤ・バプラート

EVのエネルギー回生をゼロにして、下り勾配をブレーキングエリアまでコースティングして、効率のレートが上がっていくのを見るほど、解放された感覚を味わえるものは滅多にない。ファントウドライブとは別物だが、個人的には楽しい。

オプション追加のアドバイス

5万ポンド(約700万円)の予算があるなら、四輪駆動の300か350AMGラインを選びたい。前輪駆動で満足だというなら、250スポーツがおすすめとなる。いずれにしろ、下手なインチアップとランフラットタイヤの装着は禁物だ。

改善してほしいポイント

・縦グリップと転がり抵抗に優れた通常タイヤを装着してほしい。
・より高電圧の急速充電器に対応してほしい。5万ポンド(約700万円)級のクルマであれば、最大100kWでは物足りない。
・垂直方向のボディコントロールをさらに磨き上げて、高速道路での乗り心地にみられる忙しなさを消してもらいたい。