東京では食べられない!「地方チェーン店」のたまらない魅力
コロナ禍で見直されている「地方の魅力」。なんでも手に入るように見える東京だが、実は「東京にはない魅力的なチェーン店」も、少なからずある。(取材・文=昼間 たかし)
コロナ禍でも店舗数が増えた! 資さんうどんの衝撃
地方取材を数多くこなす筆者が、がぜん注目しているのが「資さんうどん」である。福岡県北九州市のソウルフードなのだが、なんとコロナ禍で店舗数を拡大。これまでは、福岡・山口・佐賀・熊本・大分の5県で店舗展開だったが、2021年10月末には宮崎県にも初出店した。
日本にはうどんを名物とする地域が多い。讃岐うどんの香川だけでなく、伊勢うどんの三重、稲庭うどんの秋田などに、福岡も加えたい。
コシの効いた硬い麺で喉ごしを楽しむ讃岐うどんとは対局的に、福岡のうどんはとにかく柔らかく、口の中でふんわりとした食感を楽しむスタイルだ。
福岡県には「牧のうどん」「ウエスト」「東筑軒」「資さんうどん」と、いくつもうどんチェーンがある。どれも県内では誰もが知るブランドだが、展開しているのは主に九州・中国地方。唯一「ウエスト」が関東に出店しているものの千葉に数店、町田市に1店あるだけだ。このグローバルな時代に、ほぼ地元でしか食されていないレア感が福岡県のうどんの魅力でもある。
北九州のソウルフード
その中にあって筆者が特に推したいのが「資さんうどん」だ。本拠地は福岡県北九州市。かつては「修羅の國」のセンターゾーンのような風評もあったが、工業都市として発展し、歴史に裏打ちされた独特の文化が根付く街である。
1976年創業の「資さんうどん」は、そんな北九州のソウルフードだ。その魅力は、まず手軽さである。どこにでもあり、24時間営業店も多い(コロナ禍で時短営業もあり)。
さらにメニューがめちゃくちゃ豊富。天丼、カツ丼、親子丼、牛丼、カレーなどのご飯系メニューも豊富である。
「カツカレーぶっかけうどん」(860円)のような、カロリーを忘れて喰らいつきたいメニューもある。北九州発祥のソースを絡めた焼きうどんにとんカツを乗せた「カツのせ焼きうどん」(1040円)も、王道を行くジャンキーさでは負けていない。
とにかく、なにを食べるかに迷うメニューの豊富さだが、看板は「ごぼ天うどん」(700円)。載っているのは「おでんに入っているごぼう天」ではなく、縦割りしたごぼうをカラッと揚げた天ぷらで、これに肉をプラスして「肉ごぼ天」にすれば、ごちそう感が一気に高まる。
うどんが運ばれてくるのを待つ間も油断はできない。「おでん」が店内に暴力的な美味さの匂いを漂わせているからだ。玉子にするか牛すじにするか、両方とも食べてしまうのか。とにかく、食のリミッターの解除は必然である。
工場がたくさんあった北九州市は、いまでも大衆食堂をはじめ、気軽にお腹を満たせる飲食店が多い。そんな昔懐かしい「食堂」の風情に、ファミレス的要素を加えたのが「資さんうどん」である。人気の理由もわかるだろう。
デザート「ぼたもち」もある。ぼたもち(おはぎ)はお彼岸のイメージだが、こちらでは伝統的に1年を通して人気。仕事を終えた工場労働者に人気で、屋台なんかでも出していたそうだ。
首都圏での知名度はハッキリ言って高くないが、グーグルの検索トレンドは地味に右肩あがりで注目度は上がっている。今年7月には『SUKESAN BOOK』と題して公式ファンブックが福岡県内の出版社から発行されたぐらいだ。
ともかく、まだ東京では楽しめない味。九州エリアに足を運んだ際には、ふらっと立ち寄っても良いかもしれない。ただ、肉ごぼ天、おでん、ぼたもちコンボに誘惑されて、食べすぎないように気をつける必要はあるだろうが。