面白いのに!『ガンダムX』はなぜイマイチ人気がないのか……
「これ、いいと思うんだけどなぁ」と感じる作品がイマイチ一般に受け入れられないということは昔からしばしばある。
近年だと2019年の大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』がかなり面白かったが、戦国時代モノではないということと、1964年の東京オリンピックに関わった人たちの群像劇だったため「大河でやらなくても」との声もあった。僕も最初そう思っていたぐらいだし。
結果的に『いだてん』は第6回以降視聴率が最終回まで延々1ケタ台という状況が続いたが、ちゃんと観ている人には毎回感動をあたえていた名作。「しっかり観れば面白い、いいドラマだな」と今も確信している。
こちらのコラムでしばしば引き合いに出すガンダムシリーズにも、こういう不遇の名作扱いされるものがある。『機動新世紀ガンダムX』なんかは、その筆頭ではないだろうか。(文:松本ミゾレ)
「まともな人ばかりでネタにならない」という感想も
先日、2ちゃんねるに「機動新世紀ガンダムXがイマイチ人気ない理由」というスレッドが立っていた。ここに本作のイマイチ話題になりにくい原因を推察するオタクたちの意見がどしどし書き込まれている。
ちょっと引用させていただきたい。
「声がね(注:主人公ガロードの声のことと思われる。慣れれば味があるが、最初は誰もが戸惑う)」
「敵に魅力が足りない」
「Wの次ってのが運悪い」
「まともな人ばかりでネタにならない」
敵に魅力が足りないというか、目立つ敵がそこまで多くないという側面はあったかもしれない。フロスト兄弟はまあ別として、新地球連邦と宇宙革命軍にあんまりアイコンになるような人がいなかったというか。そのあたりが妙に現実っぽくて面白いと言えば面白いんだけども。
まともな人ばかりというのも、言い得て妙。ノモア・ロングのような頭のイッてしまった人も一応登場するものの、活躍の機会があまりに少なく、人物造形はいいのに記憶に残りにくくなる。
先発作品群がキレッキレ過ぎたのも不人気の原因かも…
『機動新世紀ガンダムX』は1996年に放映された。ガンダムシリーズではあるものの、これまでの作品群とはまた独立した世界で物語が展開する。MSもガンダムも登場するが、その他の作品のどのガンダムとも雰囲気が異なる。
もっとも、90年代と言うのは『機動武闘伝Gガンダム』や『新機動戦記ガンダムW』など、宇宙世紀ではない世界観のガンダムが続いて制作されてはいたので、『ガンダムX』だけが特殊というわけではない。
『Gガンダム』のあまりに従来のガンダム観を度外視した、規格外れの作風はオールドファンには不評だったが、僕みたいな現在アラフォーで、放映当時の1994年には小学生だったような層にはバチボコに受けていた。
『ガンダムW』は翌1995年に放映されたもので、複数のイケメンがガンダムに乗っているという昨今にも続くスタイルを確立した立役者。
で、『ガンダムX』。前述の2作品に比べるとあんまり認知度が高くないと言うか、今も話題に上がることはさほど多くない。現に僕もこちらで何年もガンダム与太話をやってきたが、『ガンダムX』の話をした記憶がほとんどない。
個人的にも好きな部類の作品なのに何年も話題にすらしなかったというところが、いかにも本作の世間的な評価の一例みたいになってしまっていたわけだ。
やっぱこう、地味なんだろうなぁ。戦闘シーンも、文字通りの必殺兵器であるサテライトキャノンがあまりに凄いものだから、それを使わない局面ではどうしたってそこまで過激には描けなかったんだろうし。
量産型MSも色々と種類はあるけど、それぞれの機体が初登場した場面で、かつてのグフやドムほどの活躍をしていたか? と問われれば「う〜ん」と思ってしまう。
放映当時、ドートレスのガンプラは出てた記憶がある。たしか何種類かのドートレスバリエーションに任意でカスタム出来る仕様だったが、僕は全然欲しくなかった。ほとんど活躍しない上に地味だし、何か癖のあるパイロットが乗ってるわけでもなかったからなぁ。
通しで観れば、これはもう間違いなく面白いんだけども、ガンダムとして観るとちょっと肩透かしを食らうみたいなところがあったのが、『ガンダムX』という作品だったのかもしれない。
まあ、『Gガンダム』が文字通り爆熱の太陽なら、『ガンダムX』はまさに月だ。月は太陽より地味だけど、いつもそこにあるもの、なくてはならないものなのだ。