40代50代になると、肌のみならず髪のエイジングも気になります。なかでも深刻なのは、白髪染めのように手軽な解消法がない薄毛の悩み。
そこで今回は、女性の薄毛について詳しい井上憲医師に、病院での薄毛治療についてお話を伺いました。


薄毛は病院で治療できます(※写真はイメージです。以下同じ)

40代・50代から気になる女性の薄毛。じつは病院に相談できるんです



出産や閉経がきっかけになる女性の薄毛。病院での治療について詳しく解説します。セルフチェックシートもあるので、気になる方は確認してみてください。

●Q1:女性の薄毛の主な原因は?男性型脱毛症(AGA)との違いについて



男性の薄毛は主に遺伝やホルモンの影響によるものが多く、前頭部から頭頂部にかけて進行するケースが多いですが、女性の薄毛は過剰なストレスや極端なダイエット・妊娠・閉経によるホルモンの乱れ、不規則な食生活などの影響が考えられます。結果としてヘアサイクルが乱れてしまうことが薄毛の原因となります。

●Q2:薄毛治療は何科ですか?よい病院の見つけ方は?



基本的には大学病院や総合病院での薄毛治療の専門外来があるのは稀ですので、個人医療機関がおすすめです。
ただ、最近では女性の薄毛専門医療機関とうたっているクリニックなどもあるようです。

担当医との相性や治療方針の説明と同意が得られるか、まずは「脱毛症」の治療を掲げているクリニックを受診し、担当医にご相談ください。

患者一人一人にも個性や目標があるように、医師も個性や治療方針にこだわりがある方もいます。医師と患者の悩みとそれに対する治療のベクトルが一致することが、これから治療を進めてゆくにあたりとても大切なことです。

●Q3:薄毛治療には保険が適用されますか?



治療機器を用いた施術や発毛育毛剤(外用薬・内服薬)については基本的に保険適応外のものがほとんどですが、薄毛のタイプによって併用するホルモン剤やビタミン剤は一部保険適応のものがあります。

●Q4:薄毛治療にはどんな治療法がありますか?




男性・女性どちらも詳細内容には多少違いはあるものの大まかに以下のものとなります。

(1) 発毛・育毛促進外用薬(トニック・洗髪剤など)

(2) 発毛・育毛促進内服薬

(3) メソセラピー(成長因子などを頭皮へ直接注入)

(4) 植毛などの外科的治療

痛みを伴わず気軽にできる治療を優先される方が多いかと思いますので、まずは(1)や(2)から試すことをおすすめします。

その後効果や納得の度合いによって、それ以上踏み込んだ治療へレベルアップするか検討する…という形がベターかと思われます。

現代の発毛育毛専門薬は内服薬・外用薬ともに効果が期待できる成分のものが開発されておりますので、日常に気軽に取り入れていきたい方にはこのような方法がおすすめです。

●Q5:薄毛治療を始めるのは何歳くらいの方が多いですか?



40〜50代の方が最も多いです。

20〜30代で出産と育児に加え仕事をされている女性も多くなってきた現代、疲れやストレスの度合いは昔とはまったく異なりますし、個人個人の「美意識」のレベルもかなり高まっています。

加えて40〜50代になるとホルモンバランスの乱れなどで生理不順・更年期症状も現れてきます。
その頃から「毛量が減った」「ハリ・コシがなくなった」「セットが決まらない」などで悩まれる方が多くなってきている印象です。

●Q6:病院で薄毛治療をするメリットは?




市販の育毛トニックなども多種ありますが、発毛促進剤のひとつであるミノキシジルなどの発毛育毛成分について言えば、医療用のものの方が高濃度配合されているため効果効能が高いと思われます。

加えて内服薬などについても、医療機関では正しいルートで正規の薬剤を仕入れているため、ネット通販などに比べてローリスクです。

なにより、担当医に直接相談することにより、自分に合った治療法を一緒に見出してくれる、いわゆる「発毛育毛パートナー」が治療にあたりとても重要なものと考えています。

●Q7:一例として治療薬の値段を教えて下さい。



女性用の製剤のみを列挙します(男性用にも内服薬・外用薬ともに多種あります)

・内服薬:ビビスカルプロフェッショナル 1万円〜1万5000円/月

・外用薬:リポゲイン 6000円前後/1本

・医療用育毛シャンプー:5000円前後/1本

●Q8:普段の生活でできる薄毛防止方法は?




上記の内服薬や外用薬を正しく毎日使用することに加えて、夏など発汗が多い時期にはしっかりと頭皮ケアをすることが大切です。

もちろん、普段の生活習慣(食事や適度な運動、十分な睡眠など)を整え、自分なりのストレス発散法を実行することも重要です。
フィジカルやメンタルが健康になれば、毛髪もハリやコシのある美しい髪をキープすることができます。

●Q9:こんな症状があったら薄毛かも?セルフチェックシート



□最近抜け毛の量が増えてきた気がする
□生え際や後頭部、つむじ部分が気になる
□産後抜け毛がひどい
□スタイリングが決まらなくなってきた
□髪の毛が細くなりボリュームが減った
□頭皮が透けてきて人目が気になる
□遺伝的に気になる

以上のようなお悩みがある方は、脱毛症治療のできる医療機関でご相談されることをおすすめします。

●Q10:妊娠・出産で薄毛になったときの対処法は?



妊娠中には発毛剤の内服薬も外用薬)も使用を控えたほうがいいので、スカルプシャンプーなどを使用して毎日しっかりと頭皮ケアをし、洗髪後はしっかりと乾燥させ、バランスのいい食事を心がけてください。

産後、授乳後に生理が再開すれば毛髪サイクルが復活する方が多いですが、それでも気になるときには医師にご相談ください。

●薄毛が気になったら早めに相談を!「簡単に増えた」という人も



薄毛の悩みについては男女ともになかなか相談しにくいものですが、早期に治療を開始することがとても大切です。

薄毛が気になりはじめる40〜50代の女性は、仕事や家事、育児、介護などで多忙な毎日を送られている方も少なくありません。そんな中でも、手遅れにならない段階から正しいヘアケアをすることで、悪化を防ぐことはできます。

治療を開始した方の中には「思っていたより簡単に増えた」という意見も多く、少しでも気になったときには医師にご相談してみる勇気も大切かと思われます。

<取材・文/星野星子>

●教えてくれた人
【井上憲先生】



産婦人科医師。医療法人社団暁明会井上メディカルクリニック
理事長/院長。慶應義塾大学医学部卒後研修修了、日本産科婦人科学会認定専門医、母体保護法指定医、東京産科婦人科学会学術編集委員、杏林大学医学部非常勤講師