もしもトニ・クロースがユーロ初戦のフランス代表戦において、ベンチスタートをする確率を問われるのであれば、それは最初のトライで宝くじを当てるのと同じくらい低いものだといえるだろう。それほどまでにドイツ代表ヨアヒム・レーヴ監督とは親密な関係を築いており、これを活かす形でチームのことを常に客観的に分析することができる。

 つまり絶妙な距離感で評価できるという自負がある選手であり、周囲を喜ばせるだけの発言をするタイプではない。それは連覇を狙った前回のワールドカップにおいて、最大の敵は?との質問に「ドイツ代表自身」と答え、そしてまさかのグループリーグ敗退という屈辱的結果に終わったことからもみてとれるだろう。ただそれでも今回、クロースの目には「とても気持ちの入った選手が多く、非常に意欲的だと感じる」と説明。

 確かに今回対戦するフランス代表は最有力候補の1つであり、一方のドイツはその「一歩後ろ」に下がったところに位置しているかもしれない。つまりは2戦目のポルトガル戦、そして3戦目のハンガリー戦が方向を占う戦いであり、「ここ2週間で1・2歩前進した」ドイツがどこまでやれるのか、ひとまずは火曜日のお楽しみということになる。

 野心を抱くことへの重要性を説くクロースにとって今、何よりも重要なことはシステムどうこうより、チームと個々人が、レーヴ監督の求めるものへ納得できているということである。きっとレーヴ監督はそのことに満足感を覚えているのではないか、もしもそれができていなければ、すでにクロースがそれを口にしているはずである。