【4月5日の話】世界最長の吊り橋「明石海峡大橋」が開通…瀬戸内海の海難事故を防げ
明石海峡大橋・開通式
1998年4月5日、兵庫県神戸市と淡路島を結ぶ吊り橋・明石海峡大橋が開通した。橋の長さは3911m、橋を吊るためのワイヤーを支える2本の主塔間は1991mあり、世界最大の吊り橋とされている。
1988年5月の工事開始から、およそ10年の歳月をかけて完成した明石海峡大橋。いったいなぜ、これほど巨大な橋が架けられたのか。歴史学者の濱田浩一郎さんがこう語る。
「架橋の構想自体は戦前からありましたが、技術やコストの問題から、なかなか実現まで至りませんでした。直接の契機は、瀬戸内海周辺で大きな船の事故が続いたことでしょう。
1945年、明石海峡で汽船『せきれい丸』の沈没事故が発生し、304名もの方々が亡くなりました。10年後の1955年には、『紫雲丸』という宇高連絡船(岡山県宇野と香川県高松を結ぶ船)が他の船舶と衝突・沈没し、こちらも168名の犠牲者が出ています。うち100名は、修学旅行中の児童だったこともあり、世間にかなりの衝撃を与えました。公立の小中学校にプールの設置と水泳の授業が義務づけられたのも、この事故がきっかけです」
その後、架橋の機運が一気に高まり、1988年から現地工事が始まった。1995年1月17日には、明石海峡付近を震源地とした、マグニチュード7.2の阪神淡路大震災が発生。当時は主塔が設置され、メインケーブルを架設している最中だった。地震によって周辺の地盤が動き、橋の長さが若干変化する事態となったが、影響はわずかだったという。
震災から3年後、1998年に橋は無事に完成する。4月5日におこなわれた開通式は、どのような様子だったのか。
「当時の報道によれば、セレモニーで車の通り初めパレードがおこなわれたようです。ゲートは午後5時に開き、待ち構えていた一般車両が、神戸側と淡路島側の2方向からいっせいに入りました。橋からの景色を楽しむため、ドライバーたちがノロノロ運転するような光景も見られたとか。この日だけで、約1万7500台もの交通量があったようです」(浜田さん)
写真・本州四国連絡高速