子どもがやってみたいと思う習い事を一緒に見つけていくことが大事(写真:pearlinheart/PIXTA)

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今度、小学校2年生になる子がいます。新年度が近いこともあり、子どもに習い事をさせたいと思っています。せっかくなら、子どもの才能が伸びるものをと思っていますが、どう選んだらいいでしょうか。また、始めても途中でやめたいと言った場合、親はどう対応したらいいでしょうか。

(仮名:山本さん)

一般的に習い事は3月、4月から新しいプログラムが組まれることが多く、この時期は習い事に関するご相談が増えます。しかし、新年度だからという理由で習い事を「始めなければならない」というものではありませんので、子どもがやりたいのかどうかを判断基準にしましょう。習い事はいい影響を与える面もありますが、対応を間違えると悪影響になる面もあるからです。


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そのうえで、「子どもの才能を伸ばす習い事」について考えていきたいと思いますが、習い事と一口にいっても、世の中にはたくさんの習い事があります。子どもの習い事ランキングでは次のようなものがあげられています。

・体育系(水泳、体操、武道、球技など)
・芸術系(絵画、音楽、書道、バレエなど)
・勉強系(幼児教育、塾、英会話など)
・その他(そろばん、囲碁・将棋、プログラミング教室など)

習い事をすることで子どもの才能が伸びていくことは当然ありますが、次の3つについて注意しておくといいでしょう。

習い事の選択

1)子どもが「やってみてもいい」と思う

子どもが小さい頃、習い事は親主導で始めることが少なくありません。しかし、親がいくらいいと思っても、子どもの感性や性格に合わないことは往々にしてあることです。ですから、子どもの「やってみてもいい」という感覚が大切になります。

もちろん、子どもの「やりたい!」という気持ちがあることが理想ですが、人見知りの子や知らない場所への抵抗感を持つ子もいます。そのような子の場合は「やってみてもいい」という程度の気持ちがあれば十分でしょう。そのためには体験レッスンなどの機会を利用してみてください。体験とはお試しのことです。例えば、食品を買うときにどれがいいか「試食」をすることがあります。試食をしてみて、一番口に合う食品を買うことでしょう。それと同じように、お試しをします。もちろん合わなければ1回で終了です。体験の際、子どもが「やってみてもいい」という気持ちが出てくれば、子どもの感性と一致している可能性が高いでしょう。

2)才能を伸ばすことを目的にしない

子どもの才能を伸ばしてあげたいと思って習い事をするのに、それを目的にしないと言われると、違和感を持つかもしれません。「才能を伸ばすことを目的にしない」ことをなぜ推奨するかといいますと、それを目的にすると親は伸びているか伸びていないかを判断基準として子どもを見てしまうことがあるからです。子どもに過度なプレッシャーを与えたり、教室への不信感に発展したりすることもあります。

そうして、親のイライラが増える可能性があります。このケースにこれまで数多く遭遇してきました。親の期待値が高く、中には短期間で伸びることを想定している人もいます。もちろん、才能がもともと目に見える形で露出している子もおり、そのような子は、短期間で目覚ましい発展を遂げる場合もあります。しかし、それはまれなケースです。

そこで、「子どもの才能を伸ばす!」ではなく「子どもに幅広い体験、経験をさせてあげよう!」という感覚で習い事を始めることをお勧めします。すると、子どもは習い事を楽しむようになり、結果として才能が開花していく姿をこれまでいくつも見てきました。「才能を伸ばすことを目的としないほうが、才能が伸びてくる」ということは多々あることを知っておかれるといいでしょう。

3)誰が指導してくれるのか?

習い事は「何を学ぶか」も大切ですが、それよりも「誰に学ぶか」のほうがはるかに大切です。このことは、多くの親が過去に経験してきたのではないでしょうか。物理が嫌いになるのは、物理を上手に教える先生に出会っていないから、算数が苦手になったのは小学校の先生が嫌いだったからといったケースはよく聞くところです。とくに感受性の強い子どもは、「誰が教えるのか?」が極めて重要な判断基準になります。

習い事に行きたくないと言われた場合

さて、ここまで始めるまでの判断基準についてお伝えしてきましたが、せっかく始めたのに子どもが「行きたくない」と言い出してしまう。多くの親が直面することの1つです。

そうしたとき、親はどう対応したらいいでしょうか。通常は、「簡単にやめてはいけない」と考え、そのまま行かせることも多いでしょう。本当に嫌がって、どうしようもなくなってからやめさせる親も多いのではないでしょうか。

しかし、「行きたくない」といっても、大きくは次の3つのパターンに分かれます。この3つのいずれに当てはまるかで対応を変えてみてはどうでしょうか。

1)一時的な理由で「行きたくない」場合

これが最も多い原因です。先生にたまたま怒られたとか、友達と気まずい雰囲気になったといったことが、このケースに当てはまります。一時的、一過性の問題であるため、その習い事自体が嫌いになっているわけではありません。その場合は、「さっさと行っておいで」と勢いで行かせてしまいます。

2)毎回「行きたくない」と口にする場合

駄々をこねるように何度も「行きたくない」と言う場合があります。このような場合は、「わかった。そんなに行きたくないなら、やめよう!」と言ってみてください。子どもは親がやめないように説得してくることを“期待”していることがあり、その“期待”を裏切るのです。すると、子どもは「行く」と言い出すことがあります。そのようなときは、本当に行きたくない、やめたいのではなく、親がどういう反応をするか試している可能性があります。ですからこのような場合は子どもに行くように説得はしません。説得すればするほど「行かない」と意固地になるからです。

3)子どもが習い事への興味関心がなくなっている場合

この場合は基本的にやめさせます。心が離れている段階では、もはや継続しても意味がほとんどないからです。しかし、次のような心配をされるかもしれません。

「興味がなくなったからと言って、すぐにやめてばかりだと我慢強い子にならないのではないでしょうか?」

確かに、「継続は力なり」は正しいです。継続していれば、伸び方に差はあれど、それなりに伸びていくとはよく言われることです。しかし、やりたくないことを我慢して継続することに果たしてどれだけの意味があるでしょうか。とくに子どもの頃は好き嫌いがはっきりしているので、嫌いな状態で継続しても、力になるどころか、ますます嫌いになるだけということもあります。

継続する前提として「やりたいこと」「好きなこと」「ワクワクすること」が根底にあり、そのうえで、一時的に嫌なことがあっても続けると伸びていくと筆者は考えています。

たまたま大好きな習い事に出会い、それを深く追求し、継続して極めていくということもあるでしょうが、複数の習い事を浅く広く「経験する」ことで、それらの「経験」がその後の人生に役立つということもよくあることです。ですから、継続は大切ですが、なんでも継続すればいいというものではないと考えておくといいでしょう。

以上、習い事をはじめるうえで、事前に知っておいたほうがいいことをまとめました。今後の指針にお役立ていただければと思います。