●最初のシーンはむずがゆさも「自然体でいけた」

歌舞伎俳優の中村芝翫が主演を務めるNHK BSプレミアムのスペシャル時代劇『十三人の刺客』が、きょう28日(21:00〜23:00)に放送される。主人公・島田新左衛門を演じた芝翫と鬼頭半兵衛を演じた高橋克典は、小学生の頃からの幼なじみ。本作で初共演を果たした2人に、共演の感想や本作の魅力を聞いた。



本作は、57年前に公開された傑作時代劇のリメイク。暴君・松平斉継(渡辺大)の暗殺を命じられた御目付役の島田新左衛門(中村芝翫)は、信頼できる強者たちを集め、13人の刺客団で斉継の命を狙う。極秘裡に進められていた暗殺計画だったが、新左衛門の剣のライバルで斉継を守る鬼頭半兵衛(高橋克典)が事前にキャッチ。刺客団は中山道で奇襲作戦を練るも、半兵衛の奇計にあい失敗に終わる。そして新左衛門は、中山道落合宿を買い取り、砦に改造、明石藩一行を迎え撃つという作戦に変更。新左衛門は斉継を討てるのか、半兵衛が守り切るのか。命を懸けた激闘の結末は果たして……。

芝翫と高橋は同じ小学校の先輩後輩で、高橋が1歳上。本作で初共演が実現し、芝翫は「小学校からの先輩、幼なじみというのはおこがましいんですけど、竹馬の友としてドラマの中でも共演させていただけたことがすごくうれしかったです」と喜び、「最初のシーンはむずがゆいところがありましたが、島田新左衛門、鬼頭半兵衛という役を作らず自然体でいけたような気がします」と語った。

高橋は「家も近くて一緒に電車で小学校に通っていたんです。仕事を離れると僕が先輩ですけど、この世界では(芝翫が)大先輩ですから、敬語になるんです」と2人の関係を説明。自身がデビューする前に芝翫の稽古を見学したこともあったそうで、「彼は舞台の上で立派に稽古していて、そのときから僕の中では、ものすごい近い友達ですけど、やっぱり大先輩。彼の背中を見ながらやってきたところがあるので、今回初めて一緒にやらせてもらって、喜びと同時に緊張がありました。家族ではないけど限りなく家族に近いような、そういう感覚の中でできたことがすごく楽しかったです」と打ち明けた。

高橋はまた、「彼が子供の頃から培ってきたものを間近で見られて感慨深いものがありましたし、非常に勉強になりましたし、刺激になりました」と振り返り、「とても豊かな表現。喜怒哀楽のさまざまな感情をいろんなさじ加減で表現しているのを見て、あらゆる局面を演じてきたんだなと感じました」と芝翫の演技を称えた。

一方の芝翫は、高橋のかっこよさを改めて感じたという。「このドラマでわかったんですけど、子供のときから僕は克典さんに嫉妬していたんじゃないかなと思います。後光が差しているようでした。そのまま全然変わらない。自然体でかっこいいというのは、ドラマで大事なんだなと感じます」と話し、「また克典さんと共演させてほしい」と早くも再共演を望んだ。

●共演シーンで「自然に涙がこぼれた」



本作では、芝翫の息子である中村福之助も刺客の1人として出演。芝翫は、撮影を行った京都の東映撮影所での若い頃の思い出を話し、「楽しい思い出もありますけど、苦しい思い出もある東映。そこへ息子を連れてきて、自分の主演のドラマでやっているというのは時代の流れを感じますし、東映の楽屋に『中村芝翫』とかかっているのを見ると、自分自身も芝翫になってここに来られたんだなと。息子を連れてこられたのもうれしいですし、次は僕のドラマではなくて自分自身で東映の撮影所に来て時代劇をもっともっとやってほしいですね」と感慨深げに語った。

また、芝翫が「基本的に僕は息子にあまり教えない。僕自身もよその先輩方に教えていただくことが多く、役も人間性もそこで教わったところがあるので、3人の息子も外で教えてもらうようにしています。向こうから聞いてきたら教えますけど」と息子たちとの関係性を明かすと、高橋は「教えたほうがいいよ。お願いしますよ!」と要望した。

本作には、往年の時代劇の魅力がある。高橋は「最近の時代劇はカメラがよくなって見えすぎるというのがありますが、(本作は)色も映像も往年の時代劇。僕らが見ていた時代劇をあえて作っていて、それがとても素敵でした」と述べ、芝翫も「東映のスタッフのみなさんが生き生きとしていました。照明が素晴らしかったです。時代劇のいろんな醍醐味がこのドラマには含まれていると思います」と魅力を伝えた。

後半の立ち回りは最大の見せ場。高橋は「テレビでよくあそこまでできたなと。どこか血が騒ぐ感じがありました」と振り返り、芝翫は「私はみそ蔵で待っている役なので立ち回りの現場はほとんど見ていませんが、完成した作品を見て泣きました。よくぞ13人で戦ったなという結束の固さ。よく『空前の立ち回り』と言われていますが、後半はセリフではなく立ち回りで表現している。それも面白いなと思います」と熱く語った。

そして、芝翫は「色恋があったり華やかなドラマではないですけど、人の心にしみわたるドラマではないかなと思います」とアピール。敵として戦うことになる新左衛門と半兵衛の「男の友情」を見どころとして挙げ、終盤のシーンについて「自然に涙がこぼれました。子供のときのこととか、いろんなことを思い出しました」と打ち明けると、高橋も「そういう相手がいるというのはいいなと。そんな友がいた人生は幸せなことだったのではないかと。そんな感慨も含めて見ていただけたらと思います」と少し照れくさそうに話した。













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