Twitterの「意味がわからない横文字」ただしく理解している? 専門用語や業界用語が使われる理由とは

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ビジネスの世界では、その業界ならではの業界用語や専門用語が存在する。
今年は新型コロナウイルス感染症に関わるたくさんのニュースが流れた。

その中で「クラスター」「パンデミック」「オーバーシュート」「ロックダウン」「ソーシャルディスタンス」などの言葉をよく耳にした。こうした言葉は、本来であれば業界関係者や専門家だけが使う言葉だが、連日の報道で使われたことで、広く一般の人にも認知されるようになった。

こうした専門用語は、ビジネス分野でも多く使われている。

8月25日、Twitterでは「意味がわからない横文字のイメージが話題」と題し、
「意味が伝わりにくい言葉をまとめた画像」がトレンドで取り上げられた。

取り上げられた投稿は6万以上のリツイートと、17万以上の「いいね」を集めるなど、大きな話題になった。


Twitterで話題の投稿として取り上げられた


この投稿の画像に書かれた「わからない横文字」は、ビジネスの分野で使われがちな言葉ばかりだ。
筆者も使っている言葉もあれば、はじめて聞いたとき頭に「?」が浮かんだものまであった。

そこで今回は、それら「わからない横文字」の意味を解説していこう。


●意味がわからない横文字を解説
・エビデンス
英語のevidenceが由来の言葉で「根拠」や「証拠」または「証言」といった意味がある。
ビジネス一般では、エビデンスの有無や裏取りができているかを確認する場合に使われることが多い。

・リソース
英語のresourceが由来で「資源」を意味する。ビジネス分野では「人材」「物資」「資金」といったものを指し「経営リソース」という場合もある。IT分野では、パソコンなどのCPUやメモリ容量などの処理能力を指す。

・アサイン
英語のassignが由来で「割り当てる」「当てがう」「付与する」といった意味や「任命する」「決定する」「選考する」という意味がある。ビジネスシーンでは主に人材の確保や配属といった意味合いで使われることが多い。

なおIT分野では、携帯電話やパソコンなどを対象にした「キーアサイン」という言葉があり、これはキー(ボタン)を操作した際に実行する動作の割り当てという意味である。

・プロパー
英語のproperが由来で「本来」「適切な」などの意味を持つ言葉。シチュエーションや企業によって定義は異なるが、「新卒入社の生え抜き社員」「正社員」「自社の社員」という意味で「プロパー社員」「プロパー職員」という場合もある。



・タスク
「仕事」「課題」などの意味を持つ英語のtaskが由来で、ビジネスシーンでは「業務」や「作業」といった意味で使われることが多い。複数の作業を管理する際には「タスク管理」という。

一方で、コンピュータ用語としては「コンピュータが処理する最小の単位」を表し、ひとつのタスクしか実行できない方式を「シングルタスク」、同時に複数のタスクを実行できる方式を「マルチタスク」という。パソコンの画面下にある「スタート」ボタンや実行中のアプリケーションを表示する領域のことを「タスクバー」と呼ぶ。

・リマインド
英語のremindが由来で「思い出させる」という意味。「re」は再び、「mind」は意識という意味を持った言葉がremindの由来。相手に気づかせるという意味のため「通知」は手段のひとつであり、対面や電話において口頭で伝える手段も含まれる。

相手もしくは自身が「まだ忘れていてもいいタイミング」で思い出させてくれる行為や通知のことをいう。

・フィードバック
「帰還」と訳される英語のfeedbackが由来。エレクトロニクスの分野で、出力された結果を入力側に戻して制御することを指す。ビジネスシーンでは、意見を反映して改善や調整することをいい、例えば「ユーザーの声を開発者にフィードバックする」と言った場合、利用者からの意見などを開発者に伝えてよりよいサービスや製品の開発に役立てるという意味がある。

・リスケ
Reschedule(リスケジュール)の略語。予定や計画(スケジュール)を組み直す、変更するという意味。



・フィックス
修正、修理、固定する、決定する、以外にも様々な意味を持つ英語のFixが由来。ビジネスシーンにおいては、「確定」「決定」「最終」といった意味合いで使われるが、業種によっては「修正」や、物理的に「固定する」という意味でも使われる。

・バッファ
緩衝(かんしょう)という意味を持つ英語のbufferが由来。本来は物理的な衝撃をやわらげるための緩衝器のことをいうが、デジタル機器において入出力装置と内部処理装置の時間的なズレを調整するために一時的に情報を記録するための装置や領域を指し「緩衝領域」という。

「緩衝」「やわらげる」「逃す」という意味合いを含んでいることから、ビジネスシーンにおいては「余裕」「ゆとり」「余力」「予備」といった意味で使われることが多い。

・プライオリティ
英語のPriorityが由来で、「優先」や「優先順位」を意味する。ビジネス分野でもほぼ同じ意味で使われ、プライオリティの高い仕事や案件などは早く対応し、プライオリティの低い仕事や案件などは後回しにする、といったように「高い」「低い」で表現する。

・レジュメ
再開する、続ける、履歴書といった意味を持つ英語のresumeが由来。ビジネスシーンでは、「要約」や「概要」といった意味で使われ、文章を簡潔にまとめたものを指す。



・ロジック
英語のlogicが由来の言葉で「論理」を意味する。筋道の通った考え方や思考のことをいい、ビジネスの分野では「ロジカルな思考」「ロジカルに考える」など「論理的な○○」といった使われ方をすることも多い。

・ファクト
英語のfactが由来で「事実」を意味する。ビジネスシーンで「ファクトベース」という使われ方をすることがあるが、これは「事実に基づいて」という意味である。

・コミットメント
英語のcommitmentが由来で「かかわりあい」「関与」や「誓約」「公約」といった意味がある。単に「約束」することではなく、深く関わり責任がともなうことを意味する。

・ナレッジ
英語のknowledgeが由来の言葉で「知識」を意味する。ビジネスシーンでは、企業や組織にとっての有益な情報や付加価値がある経験や知識などのことを指す。

蓄積した知識や経験、情報などを明確にして共有・活用することで、製品やサービスの開発・向上を図り、その企業や組織の競争力の活性を促す手法を「ナレッジマネジメント」という。


●意味がわからない横文字を使う理由
上記の解説を見て、わざわざカタカタ英語を使わずに日本語を使ったほうが的確に伝えることができるのでは? と思うものもいくつかある。

ではなぜビジネスシーンにおいて、わざわざカタカナ英語を使うのだろうか?
少し考えてみたい。


ビジネスシーンではなぜわかりにくい言葉を使うのか?


英語を由来にするビジネス用語が増えているのは、
・IT業務、企業の増加と拡大
・国内への外資系企業の進出
・国内企業のグローバル化
こうした要因が考えられる。

海外のしきたりや習慣、用語が日本企業や日本のビジネスシーンに持ち込まれることは決して珍しいことではない。ただし、日本人どうしのコミュニケーションや、業務上のやり取りにおいて「正しく伝える」という意味では少々問題があるように思える。
つまりこのことが、わざわざカタカナ用語を使う理由にもなってくるのだ。

どういうことかというとひとつには、
ビジネス分野以外の人(部外者)に理解し難い言葉を使うことによって、セキュリティ確保や仲間意識の向上といった効果が得られる。

要するに「専門用語」「業界用語」には、「隠語」といった要素があるということだ。
こうした意味合いがあるとするならば、わかりにくい言葉をあえて使うという行為にも納得できる面がる。

またもうひとつは、
会話する相手が「専門用語」「業界用語」の理解度で、相手のスキルや知見を計る。
そうした判断や判定を行うツールとして利用できるという側面もある。

たとえば、あきらかに使われた専門用語や業界用語がわからない相手には、情報の保守やセキュリティ面から伝える内容は精査しなければならない。また、それが新人や経験の少ない相手の場合は、内容や伝え方に配慮する必要も出てくる。
無配慮に専門用語や業界用語を使ってしまうと、パワーハラスメント(以下パワハラ)などに取られる可能性もあるからだ。

会話の中で、相手の理解力やスキルを見極める際に、専門用語や業界用語を使うのは有効な方法ともいえるため、ビジネスシーンで「あえて」わかりにくいビジネス用語を使うケースは決して少なくないだろう。

さらに、ほかにも考えられる理由としては、
専門用語や業界用語は、複数の意味やニュアンスを持っていることがある。

たとえば上記でも説明した「コミットメント」という言葉は、
一般的な「約束」と捉えても間違ってはいない。
しかし「(責任をともなう)約束」「(事案に)深く関わりう約束」という「重要な約束」「責任をもって引き受ける」という責任を伴う約束事の意味も持つこともある。

日本語で「約束」と「公約」「契約」など、区別して言ったほうが正確に伝わる。
しかし「コミットメント」という言葉を使うことで、「責任の重さ」を相手や周囲に素早く、強く伝えることができるとしたら、それは時間に追われるビジネスシーンでは有用な言葉の使い方になるともいえるだろう。

このように、業界や専門分野においては、一般的に広く認知されていないであろう言葉であっても、それをあえて使うことには「有効性」や「使う意味」があるのだ。

相手に理解できない言葉を使い続けたり、利用を強要したりするのはパワハラになるので論外だが、業界外の人に理解できない言葉でも、あえて使う意味や理由はあるのだ。

また、専門用語や業界用語を理解できないことや知らないことは決して悪いことではない。
理解できれば、より正確で迅速に相手の意志や意向を理解できるのは確かだが、
理解できなければ、わかるようにほかの言葉や表現で伝えてもらえばよいだけなのだ。

専門用語や業界用語が、お互いのコミュニケーションを作るわけではない。

相手と自分の違いを理解し、適した言葉や表現を使うことで、
高いコミュニケーションが実現され、お互いが理解しあえるのである。

言葉や用語は必要に応じて使い分けることが重要で、使い分けるためには言葉の意味を正しく理解しておく必要があるのだ。


執筆:S-MAX編集部 2106bpm