東京港に新しく開通した海底トンネル、その道は「令和島」と呼ばれる場所に通じています。東京オリンピック・パラリンピックにおいて重要な役割を果たす、新たな道路を通って行きつく東京の「果て」、今後大きく変貌しそうです。

新海底トンネルが通じる「海の森」、そして「令和島」

 2020年6月20日(土)、東京港に新たな海底トンネル「東京港海の森トンネル」が開通しました。お台場方面からこのトンネルに入り、行きつく先は「令和島」です。どのような場所なのか、実際に見てきました。

「東京港海の森トンネル」は、東京港のフェリーふ頭付近に接続しています。東京ビッグサイトの西側にある「フェリーふ頭入口」交差点を南へ、橋を渡ると大規模な物流倉庫群が現れたのち、フェリーターミナルへの側道が分岐。そのターミナルビルを横目に、本線は下り坂となり、東京港海の森トンネルの入口が現れます。


東京港海の森トンネル(2020年7月、乗りものニュース編集部撮影)。

 約2456mのトンネルを抜けた先は、「中央防波堤」の内側埋立地と呼ばれる場所です。東京のゴミの最終処分場として埋立が完了した現在は、東京オリンピック・パラリンピックの競技会場を含む「海の森公園」の建設が進められています。トンネルを抜けると左側に海の森公園、そして正面にはトンネルと同時開通した「海の森大橋」があります。

 この橋を渡り、外側埋立地と呼ばれるエリアに入ると、道路は右にカーブし、その先のT字路で途切れます。ここを左折した先は行き止まりのロータリーとなっており、目の前のフェンスの向こうでは土地の造成工事が進められていました。

 この一帯が「令和島」で、区としては大田区に属します。

 中央防波堤の帰属をめぐっては、長年にわたり江東区と大田区が対立していましたが、2019年の最高裁判決を受け、その約8割が江東区、約2割が大田区に帰属することが決定。そして、江東区が中央防波堤の内側埋立地を「海の森」、大田区が外側埋立地西側の帰属地を「令和島」とし、それぞれ2020年6月に住居表示を実施しました。なお江東区に帰属する外側埋立地の東側は、現在もゴミの埋立処分場として機能しており、住所は制定されていません。

「令和島」どんな場所になる?

 令和島の名に決まった理由について大田区は、令和に改元された年(2019年)に帰属が決まったこと、また平和島や昭和島といった既存住所との一体感もあり覚えやすいことなどを挙げています。一部報道によると、「令和」の名がついた住所としては全国初と見られるそうです。

 この地区では現在、東京港における新しいコンテナターミナルの整備が進んでおり、一部はすでに供用済みです。これにともなうコンテナ需要の増加に対応するために、東京港海の森トンネルと海の森大橋を含む「臨港道路南北線」が建設されました。

 従来、お台場側と中央防波堤を結ぶルートは、令和島地区からまっすぐ北へ伸び、海底トンネルを経て青海地区に通じる「青海縦貫線」1本でした。東京都港湾局 港湾整備部によると、青海地区にもコンテナターミナルがあり、貨物船の発着前後には青海縦貫線でトラックの渋滞が見られるといいます。このため、青海縦貫線に並行して臨港道路南北線を建設し、お台場方面とのルートを二重化したのです。


新海面処分場のAブロック(帰属未定)付近から令和島のコンテナターミナルを望む(2020年7月、乗りものニュース編集部撮影)。

 また、臨港道路南北線は前出の通り、東京オリンピック・パラリンピックの競技場が設けられる海の森公園に近く、大会時には選手や関係者の重要な輸送ルートになる見込みです。中央防波堤からお台場方面へ、臨港道路南北線をまっすぐ北上すると、豊洲市場を抜け、環状2号線に接続します。この環状2号線は、晴海の選手村に通じる大会関係者のメインルートです。

 ちなみに、中央防波堤外側埋立地の海側は「新海面処分場」と呼ばれ、現在も埋立により徐々に拡張しています。この新海面処分場は、最終的に東京ドームの約68倍もの面積になるとされていますが、帰属は決まっていません。