路線バスは信号操作が可能!? なぜ時間通りに運行? 世界も驚く日本の交通事情とは

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路線バスのための信号制御システムとは? どれほどの地域で導入されている?

 日本の公共交通機関は、世界中においても時間に正確だといわれています。とくに、路線バスの場合は他車や信号の有無を含める交通状況によって時間が左右されがちですが、比較的に時刻表通りに運行しています。なぜ、路線バスはスムーズな運行が可能なのでしょうか。

比較的に時間通り運行されている日本の路線バス

 実は、交通量の多い一部の路線バスには、利便性を高めて利用者を増やすための「PTPS(公共車両運転システム)」が採用されており、大幅な遅れが出ないようにコントロールされています。

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 PTPSとは、バスなどの公共車両が優先的に通行できるよう、バス専用・優先レーンの設置や、違法走行車両への警告、優先信号制御などをおこなうシステムです。

 システムの仕組みは、地上設備である光学式車両感知器と、バスに搭載されている専用装置が相互に通信し、「青信号の延長」や「赤信号の短縮」といった、バス優先の信号制御をおこなうものとなっています。

 あくまで「交通状況に応じて信号を制御する」システムであるため、常に青信号でバスを通過させるという性質のものではありませんが、交差点での停車時間を短くする効果もあるため、「スムーズな運行」には大きく貢献するシステムです。

 現在、PTPSはどれほどのエリアで導入されているのでしょうか。首都圏を中心に路線バスを展開する、小田急バス株式会社の担当者は次のように話します。

「現在、東京都では三鷹駅や吉祥寺駅周辺を通っている『新川通り』で導入されています。当初は、車載装置は一部の車両にしか搭載されていませんでしたが、2019年にほぼすべての車両に装備が完了しています。

 導入について、そもそもPTPSは、対応した信号機が無ければ意味がありません。そして、信号機の導入はあくまで行政側が主導なため、我々はシステムに対応した車両を揃えたということになります。

 また、今後の導入に関しては、行政側が対応した信号機を導入すれば、検討する可能性はあります。しかし、予算的な問題から、信号ができたからすぐに対応というわけにはいかないでしょう」

 信号機を管理する警察(交通課職員)はPTPSについて、次のように話します。

「もちろん多くの地域で導入できるに越したことはありませんが、システムが効果を発揮するような交通量の多いエリアは、設備導入のために交通を遮断するのが難しく、一言で『じゃあやりましょう』という簡単な問題ではありません。また、予算との兼ね合いもあります。

 今は、導入できるタイミングを伺いつつ、ドライバーの皆様に路線バスを優先する運転を心がけて頂けるよう呼びかけています」

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 路線バスが通行するエリアでは「バス優先レーン」や「バス専用レーン」がありますが、これらの道路の走行・駐車は道路交通法違反となる可能性があるので注意が必要です。

 バス優先レーンにおいては、駐停車は禁止されており、違反した場合は「路線バス等優先通行帯違反」として、違反点数1点・反則金6000円(普通車)が科せられます。

 バス専用レーンでは、右左折時や緊急時以外、一般車両による走行はできません。当然、駐停車も禁止のため、より一層の注意が必要です。

 PTPSは、路線バスのために信号を制御するという画期的なシステムではありますが、行政とバス会社の連携、コスト、設置タイミングといったさまざまな問題から、現在は一部地域での導入に留まっているようでした。

PTPS以外にもある、交通管理システムとは?

 先述のPTPSは、政府による「高度道路交通システム(ITS)」の1種であるうえ、「進行通関システム(UTMS)」のサブシステムのひとつに過ぎません。

 UTMSのメインシステムは「高度交通管制システム(ITCS)」となり、そこにはPTPSをはじめ、さまざまなシステムが組み込まれています。

 では、路線バスのためのPTPS以外には、どのような渋滞緩和システムがあるのでしょうか。

 まず、「信号情報活用運転システム(TSPS)」は、信号灯火の情報を事前にドライバーに知らせるシステムです。

 事前に赤信号に変わるタイミングを把握することで、急ブレーキを踏むリスクを軽減できます。また、青信号になるタイミングを伝えることで、急発進を抑制する効果も期待されています。

混雑する都市部でも円滑な運行をおこなうようにさまざまなシステムが活用されている

 次に、「歩行者等支援情報通信システム(PICS)」は、歩行者に道路状況を知らせるシステムです。高齢者や障がい者などの人たちに、交差点の名称や信号情報を知らせることで、交通事故の抑制につながっています。

 2019年度からは「高度化PICS」と呼ばれる、Bluetoothを介してスマートフォンに歩行者用の信号情報を送信するシステムも実用化が始まっています。

 高度化PICSを利用することで、スマホ側の操作で青信号の延長も可能です。また、「安全交通支援システム(DSSS)」も交通事故抑制に大きく貢献しています。

 運転者にとって死角になる交差点などの周辺状況を「視覚情報」「聴覚情報」で配信するによって事故を抑制しています。

 さらに、「現場急行支援システム(FAST)」と呼ばれる、緊急車両向けの交通システムも存在します。

 救急車・消防車等の緊急車両に対してスムーズに事故現場に到着できる経路の情報を提供するだけでなく、優先信号の制御をおこなうシステムも併せて搭載しています。

 FASTによって「現場急行の時間短縮」および「緊急走行による交通事故防止」が期待されています。

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 これらのように、すでに多くの交通システムによって日常生活の利便性は大きく上昇しています。

 今までは、「偶然」の要素が強かった道路状況も、今後はすべてが計算の上に成り立つ「必然」のものになっていくのではないでしょうか。