パブリッシャーのために同じ広告インプレッションで複数の入札リクエストを受け付けているエクスチェンジは、インプレッションをより適切な形で購入したいと考えるプログラマティックバイヤーから敵視されてきた。だが、経済の低迷によって、そうしたエクスチェンジの終焉が思わぬ形で早まっている。

トラフィックの急増によって入札リクエストの処理にかかるコストが増えたいま、すでに追い詰められていたDSP(デマンドサイドプラットフォーム)のあいだで、入札の重複をなくそうという経済的インセンティブがにわかに高まっているのだ。たとえば、DSPのメディアマス(MediaMath)は、重複したインプレッションを販売するSSP(サプライサイドプラットフォーム)を含まない新たなサプライチェーンの構築に乗り出している。4月には、同じくDSPのザ・トレード・デスク(The Trade Desk)は、インプレッションを購入しているすべてのSSPに対し、同じオークションを対象とした重複するリクエストの送信を2週間以内にやめるよう通告した。同社はその後、期限を数週間延長したが、最終的にはSSPが自分たちに従わざるをえなくなると考えている。

「入札の重複の問題に取り組むことで、パブリッシャーが、自社のSSPとのパートナーシップの平等主義的測定を可視化できるようになることを期待している。今後は、提携先を増やすことが収益の大幅な増加に結びつくとは限らなくなるからだ」と、ザ・トレード・デスクで、EMEA(欧州/中東/アフリカ地域)パートナーシップ担当ディレクターを務めるジョエル・リバシー氏は述べている。

こうした動きによって、一部のSSPで問題が生じる可能性がある。アドテク企業のトレマー・インターナショナル(Tremor International)で最高製品責任者を務めるカリム・レイエス氏は、次のように説明した。「このような取り締まりは、当社のSSPに影響を及ぼすだけでなく、ほかのすべてのSSPに影響する。彼らのようなDSP経由では、我々が取り扱っているすべてのインプレッションをまとめてバイヤーに提供することができなくなるからだ」。

「正確さに重点を置いている」

4年前にヘッダー入札が登場して以来、パブリッシャーはオークションの重複について、ザ・トレード・デスクのようなDSPの恩恵を受けてきた。同じインプレッションに対する入札リクエストが多いほど、ひとつのDSPから得られる利益が増える確率が高くなったからだ。ザ・トレード・デスクが取り締まりをはじめたからといって、こうした取引に対するインセンティブがなくなるわけではないが、同じエクスチェンジを繰り返し利用することでパブリッシャーが得られる恩恵は少なくなるはずだ。

「ザ・トレード・デスクが入札の重複を締め出そうとしていることには、経済的合理性があると思う。ただし、そのやり方は荒っぽいものだ」と、アドテクコンサルティング企業のアドプロフス(AdProfs)の創業者、ラトコ・ビダコビッチ氏は指摘する。「ザ・トレード・デスクがパブリッシャーとSSPに求めているのは、提供するインプレションを減らし、すべてのインプレションが公平に扱われるような形にすることだ。たとえば、ある特定のインベントリー(在庫)を販売するSSPがある場合、同じインプレッションに対して複数の入札リクエストを処理するために、そのSSPと提携するわけではない」。

メディアマスが提携先のSSPのあいだで入札の重複が起こらないように、別のアプローチを取っている理由のひとつもここにある。メディアマスは、自社が推奨するエクスチェンジ経由で参加できるオープンオークションの構築にメディア予算を注ぎ込んでいる。対象となるエクスチェンジで、同じパブリッシャーのインプレッションが重複して販売されることは一切ない。

「入札の重複に関していえば、我々は正確さに重点を置いている」と、メディアマスでエコシステム担当グローバル責任者を務めるジェレミー・スタインバーグ氏はいう。「その狙いは、SSPやパブリッシャーとパートナーベースで協力しながら、パフォーマンスデータを『Sellers.json』や『サプライチェーンオブジェクト(SupplyChain Object)』といったツールとともに活用し、クライアントにとってどのようなインプレションが最適なのかを知ることにある」。

反応は、おおむねポジティブ

それでも、ザ・トレード・デスクの取り締まりに対するSSPの反応は、おおむねポジティブなものだ。実際、エンジングループ(Engine Group)のSSPであるEMXグローバル(EMX Global)のCEO、マイケル・ザカルスキ氏は、ザ・トレード・デスクの取り組みを重複のないインベントリーを送信できる新たな機会と捉えている。

「ひとつのインプレッションはひとつのエクスチェンジから一度だけ販売されるべきだと我々は考えている。ただし、パブリッシャーがひとつのエクスチェンジまたはソースのみからインベントリーを販売する状況にはまだないと思う」と、ザカルスキ氏は話す。「バイサイドでコスト削減が進めば、バイヤーとセラーの提携を強化する方向にお金が使われるようになるだろう。サプライチェーンが簡素化されるうえ、よりカスタマイズが容易で柔軟性の高いマーケットプレイスが必要になるからだ」。

これまでは、複数のラッパーの統合による入札の重複が度を超した形で発生し、不当に操作されたプログラマティックオークションが横行していた。今後は、こうした慣行がより精査され、抑制されるようになるだろう。ただし、ヘッダー入札の基本原理、すなわちパブリッシャーが同じインプレッションに対して複数のオークションを同時に実行できるという状況がなくなることはない

「明らかなことは、ザ・トレード・デスクが市場での力を利用して、パブリッシャーとアドエクスチェンジのインセンティブを変えようとしていることだ」と、 プログラマティックコンサルティング企業ジャウンス・メディア(Jounce Media)の創業者、クリス・ケーン氏はいう。「セラーはバイヤーが価値を見出すことをするだろう。そして我々は、バイヤーがより効率的なサプライパスに価値を見出しているのを目にしはじめている」。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)