フェイブルティックス(Fabletics)は大規模な実店舗を展開しているファッション企業のなかでも、リテール従業員をひとりも解雇もしくは一時帰休せずに、ここまで持ち堪えてきた珍しい会社のひとつだ。彼らは700人の店舗従業員のための再編成トレーニングプログラムを素早くローンチ。このプログラムを使って従業員をほかのビジネス部門へと移したのだ。そのように従業員をキープすると決断したことで、店舗の再オープンのプロセスが容易になることを期待している。

ギャップ(Gap)からレント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway)、エヴァーレーン(Everlane)に至るまで、多くのブランドたちは解雇を行っている。それによって経済的な負担を軽くし、ビジネスを維持しようとしている。しかし、それをすることで将来的には困難を生むことになる。店舗が再オープンするなかで、ブランドたちは新しい従業員、もしくは一時帰休した元従業員たちを雇う必要が出てくる。従業員を一時帰休扱いにしたブランドですら、労働力を見つけることに苦労する可能性がある。一時帰休された人員たちは法的には同じ会社に戻る義務はないからだ。

フェブルティックスがリテール閉鎖について社内での議論をはじめたのが3月1日のこと。そして公式にすべての店舗を3月11日に閉鎖した。店舗勤務の従業員は平均で時給12ドルを稼ぐ。そしてこの期間、誰も給料のカットはされなかったと、リテール部門責任者でありシニアバイスプレジデントのロン・ハリーズ氏は言う。アリゾナ州やフロリダ州といったリテールの再オープンを許可している州にも拠点があるものの、フェイブルティックスはどの店舗に関しても再オープンはしておらず、いつオープンするかの具体的な日付も持っていないようだ。段階的に店舗をオープンする計画を持っている。まずリスクが比較的低い地域からとなる。

ふたつの独立プログラム

フェイブルティックスは店員をふたつの独立したプログラムに参加させた。ひとつは店舗マネージャーのようなリテールのリーダー向け、もうひとつはリテールの販売員向けだ。リーダー向けの方は、現存のマネージャートレーニングプログラムを凝縮したバージョンになっており、通常では6週間の長さが3週間で完了された。彼らが抱えるリテールリーダー職176人全員を3月中旬から5月中旬にかけてプログラムに参加させ、重要なマネージメント技能を学習させた。プログラムを終了するためには参加者は全員が、学習したスキルに基づいた最終プレゼンテーションを行う必要があった。プログラムは彼らの社内のトレーニングディレクターが率いて行われ、Zoom(ズーム)を通じて遠隔で、そして小規模なチームをマネージメントすることにフォーカスを置いて行われた。

ハリーズ氏によると、フェイブルティックスが抱えている42の店舗が再オープンするのを待つ時間の有効活用として、スキルを改善する方法をリテールマネージャーたちに与えることが計画であった。

「リテールの販売員に対してはまた別のプログラムを用意した。彼らにはグローバルメンバー業務のサポートをして欲しかった。電話やチャットの応対、そこで配送やメンバーシップ関連の問題についての質問を捌いてもらう、といった具合だ。これらの業務は通常であれば我々のグローバルメンバー業務のチームが処理する。これは4月中旬に開始され、すでにこの新しいスキルを130人のリテール販売員に研修してもらった」と、ハリーズ氏は言う。

これらの従業員たちは既存のカスタマーサービス部門を補強している。カスタマーサービスでは通常よりも高くなったeコマースへの需要が理由で仕事量が増えている。

従業員を維持できた理由

5月1日から5月11日の間だけでも、リテール従業員は合計4050時間で1万2000本の電話対応を行ったとハリーズ氏は言う。店舗が再オープンすれば、販売員たちはそれまでの職に戻るとハリーズ氏は説明した。しかし、なかには「複数分野にまたがる従業員」として、フェイブルティックスの実店舗での勤務と自宅からのeコマースやメンバーシップ対応の勤務とを行き来する者も出てくるかもしれないとのことだ。実店舗で勤務しつつも、オンラインでのカスタマーサービスの質問にも回答できる従業員の数を増やすことは、ブランドが長らく欲していたことだと、ハリーズ氏は言う。

従業員はキープするだけでも高くつく。彼らのビジネスにおける中心的な存在である月額50ドルのメンバーシップ制度は、コロナ禍においても着実に成長しており、最近になって200万人を越えた。従業員を維持することができたのは、これが理由だとハリーズ氏は言う。ブランドのなかには従業員を大量解雇したことで、再オープンが難しくなっているところがあるが、フェイブルティックスはその事態を避けようとしていると述べた。

「シンシナティにあるケンウッド・モール(Kenwood Mall)の地域マネージャーのひとりが、ショッピングモールの様子を動画で見せてくれた。モール内の再オープンした複数の店舗を見ることができたが、悲惨な体験になっていた。(店員の)顧客とのやりとりは悪く、カスタマーサービスも悪く、準備ができていない状態だった。スタッフの数も足りてなかった。解雇、もしくは一時帰休してしまうと、必要な時に一体何人が戻って来てくれるのか。そのような状況において人々にやる気と情熱を持ってもらうのは難しい」と、ハリーズ氏は言う。

他社における同様の事例

フェイブルティックスのアプローチはスーツサプライ(Suitsupply)のようなほかのブランドも取っている。フォッキー・デ・ジョンCEOは従業員たちを維持したことで再オープンがよりスムーズであったと語った。スーツサプライもまた、店舗閉鎖の初期は従業員をビジネスのほかの業務に活用した。

リテールはそもそもが難しいカテゴリーだ。多くのブランドたちが店舗を再オープンし、客足を戻せる日を強く待ち望んでいる。コロナウイルスのあとのリテール業界において、再オープンしてからいかに早く最大キャパシティで店舗運営ができるかは、非常に重要だ。

「世界中で、ここ2カ月のあいだ、段階的に店舗を再オープンしてきている。従業員が戻ってきたことは非常に助かった。また、慎重に運営している。従業員が出勤してきたときに体温を測り、清掃を定期的に行い、手指消毒剤を常に使えるようにしている。私たちのビジネスはとてもパーソナルなものなので、人々の信頼を得ることは、とても重要だった」と、デ・ジョング氏は言う。スーツサプライは25カ国いじょうに100以上の店舗を運営している。

Danny Parisi(原文 / 訳:塚本 紺)