施工不備が見つかった物件の改修が遅れているレオパレス21(記者撮影)

レオパレス21が再び約束を破った。

同社は4月30日、施工不備問題について、改修工事の完了時期を先送りすると発表した。従来は明らかな施工不備のある物件、1.3万棟の改修を2020年12月までに終えるとしていた。

ただ、改修工事はそもそも遅延していたうえ、同社の名古屋支店では工事部門の社員7人が新型コロナウイルスに感染。緊急事態宣言を受け、4月中旬から改修工事そのものも中止に追い込まれている。

当初は2019年の夏前までに改修を終えるとしていたが、前述のように2020年12月末までに延長。今回再延期することになった。なお、新たな工事完了時期は「未定」とした。

アパート開発は縮小へ

レオパレスは2018年春から数回にわたって建築した賃貸アパートの施工不備が発覚。天井裏や屋根裏に住戸間を仕切る界壁(かいへき)がなかったり、天井部材が耐火性能を満たしていなかったり、認定されていない部材で壁が施工されるという建築基準法違反を犯していた。

2020年3月末時点で施工した3.9万棟中のほぼすべてで調査を終えた。1.3万棟で明らかな不備があったほか、1.6万棟は界壁の一部に隙間があるなど軽微な不備があった。ただし、改修工事が完了した物件は1.3万棟のうち990棟にとどまっており、工事完了の再延期は時間の問題だった。

同時に発表したのは「抜本的な事業戦略の見直しの方向性(骨子)」(経営改善策)だ。レオパレスは2月、村上世彰氏率いる大株主で、取締役全員解任を求めるレノらが要求した2月の臨時株主総会の直前に、4月に経営改善策の骨子を発表し、5月に詳細な計画を出すとしていた。

今回発表した経営改善策の骨子では、中核事業である賃貸事業は強化し、アパート開発事業を縮小。介護関連事業は存続させ、海外事業とホテル・リゾート事業は撤退・譲渡するとした。

だが、これは既存路線の焼き直しでしかない。というのも、賃貸事業は売上高の84%を占め、同11%のアパート開発事業はすでに縮小傾向にあるためだ。介護や海外、ホテル・リゾート事業はいずれも10年近く赤字が続き、事業の撤退・譲渡は当然の判断と言える。

レオパレスの広報担当者は「抜本的な見直しの意味とは、海外、ホテル・リゾート事業の撤退を決めたこと。賃貸事業の強化など詳細内容は2020年3月期の本決算と同時に発表する」と説明した。同社は当初、5月13日に2020年3月期の決算発表を予定していたが、4月30日現在では未定となっている。

残された時間は多くない

レオパレスに残された時間はそう多くないかもしれない。同社のビジネスモデルは、地主に賃貸物件を建てさせるアパートの開発事業と、建てたアパートを同社が一括で借り上げる賃貸事業がセットになっている点に特徴がある。

アパート開発事業はリーマンショック前まで、連結営業利益の9割近くを稼ぐ圧倒的な収益柱だった。これは地主に対して競合や相場より高額の一括借り上げ家賃を提示することで、好採算のアパート開発事業の受注を増やす戦略がうまく機能してきたからだ。

だが、リーマンショックが同社を直撃。金融機関の融資引き締めでアパート建築の受注が急減したうえ、自動車や電機業界の派遣切りで、アパートの入居者も減少。特に賃貸事業では受け取る家賃より、地主に支払う家賃のほうが高くなる「逆ざや」が発生し、巨額の空室損失引当金の計上に追い込まれた。2010年3月期に790億円という、今回の施工不備(2019年3月期に686億円)を超える最終赤字となった。

この時の反省から、レオパレスはアパート開発事業を縮小し、賃貸事業で安定収益を稼ぐビジネスモデルに舵を切った。だが、ここで懸念されるのは新型コロナウイルスの影響だ。

レオパレスが扱っている賃貸住宅のほとんどは単身者向けのワンルームだ。契約者の6割弱が法人との契約で、主要顧客は建設業、製造業、人材派遣業がそれぞれ15%強ずつを占めている。外出や経済活動の自粛が長引けば、こうした業種にはリーマンショック時のような派遣切りや雇い止めが押し寄せる。同社にとっては入居率を押し下げる要因となりかねない。

施工不備問題の長期化に伴い、1年間で最も高くなる3月末の入居率は83%にとどまった。入居者から受け取る家賃収入より、不動産オーナーに支払う賃料が多くなる逆ざや水準が発生するのは入居率80%がメドとされる。

入居率は2019年10〜12月にも80%を割り込んだが、コロナショックによる自粛が長引けば再び80%割れに転落しかねない。

巨額の売却損計上の可能性も

2019年12月末時点でレオパレスの現預金は約800億円ある。一方で借入金は約300億円、補修工事引当金は約500億円だ。逆ざやによるキャッシュアウトが長引けば、資金繰りはますます苦しくなる。

残された道は資産の切り売りだが、その道筋も厳しい。会社側が表明した海外事業やホテル・リゾート事業は万年赤字のため、平時でも売却が難しかった。コロナショックの現在ではなおさらだ。この事業では推計で400億円超のセグメント資産を抱えている。売却手法次第では巨額の売却損が発生する可能性もある。

2020年3月期決算の発表と同時に公表する詳細な経営改善策で何を示すのか。そして、その後に定時株主総会が行われる。2月の臨時株主総会ではレノらの株主提案は否決されたが、前回棄権した大口の投資家も経営陣の再任反対など波乱要因となりそうだ。