クライン・グループ(Kline Group)によれば、ビューティーおよびパーソナルケア市場は過去60年間でもっとも急激な落ち込みを経験すると予測されており、多くのカテゴリーが衝撃的な需要不足に直面している。ヘアカラーはそのなかには含まれないひとつのセグメントだ。

米国では、7万7000の美容院が閉鎖を余儀なくされたと伝えられているが、その一方で、ウォルマート(Walmart)のCEO、ダグ・マクミロン氏は、米国民はトイレットペーパーのパニック買いからヘアカラー剤の購入に移行したと述べている。必要不可欠な食品や薬品を販売するウォルマート、ターゲット(Target)などの小売店で、ヘアカラー剤の売上が急上昇している理由は明白だ。人々はすでにほかのものを買うため、これらの小売店を訪れているためだ。

ロレアル(L’Oral)のCEO、ジャン・ポール・アゴン氏は、人々が少しでも日常を取り戻せば、美容院にも顧客が戻ってくると予想している。ロレアルはロレアル・パリ(L’Oral Paris)ブランドのヘアカラー剤を販売しており、美容師向けの商品も製造している。

一方、デジタルネイティブ企業はいま、売上の急上昇を経験している。マディソン・リード(Madison Reed)のCEO、エイミー・エレット氏によれば、3月中旬以降、家庭用ヘアカラー剤の売上が10〜12倍に増加しているという。「信じられないほどの需要だ」と、エレット氏は話す。「すべての人が不安を感じているというフィードバックがある。そんなときに鏡を見て、いつもと違う自分が映っていたら、感情的になってしまうのかもしれない」。

米DIGIDAYの姉妹サイトであるグロッシー(Glossy)の記事によれば、マディソン・リードの売上は「5000万ドル(約53億円)を優に超えており」、5100万ドル(約54億円)以上を資金調達している。製品の粗利益率は78%だ。

ヘアカラーリストの救済

マディソン・リードは12のカラー・バー(Color Bar)の営業を休止し、3月13日、本社も閉鎖した。エレット氏はその際、ほかのサービス業のように、100人いる直営サロン従業員をレイオフや一時帰休にするのではなく、マディソン・リードのコールセンターで働いてもらうことにした。

「創業以来、我々のコールセンターは常に、資格を持つ認定ヘアカラーリストのみで構成してきた。つまり、チームメンバーの能力が大前提になっているということだ」。マディソン・リードは4月はじめ、従業員の能力を紹介し、女性たちに自宅で髪を染める方法を教えるため、Facebookライブ動画(Facebook Live)シリーズ「カラーリスト・オン・コール(Colorist on Call)」を始動。エレット氏によれば、需要の急増に対応するため、ウェブサイトとソーシャルのデジタルコンテンツシリーズも見直しているという。

マディソン・リードはさらに、美容院で働くヘアカラーリスト向けのアフィリエイトプログラム「カラーリスト・コーポラティブ(Colorist Cooperative)」も始動した。ヘアカラーリストはまず、カスタムリンクを受け取る。マディソン・リードの商品を購入したことのない顧客がそのカスタムリンクでオンライン注文したら、ヘアーカラーリストのペイパル(PayPal)口座に25ドルが入金される。ちなみにマディソン・リードのヘアカラー剤の価格は、22ドルまたは25ドルだ。

「(新型コロナウイルスが)到来したとき、美容院が難題に直面するであろうことははっきりわかった。我々はどうすれば支援できるかを考えはじめた」。ヘアカラーリストの数や報酬の金額に上限はないと、エレット氏は説明する。

今後も物理店舗は重視

新型コロナウイルスの感染が拡大する前、マディソン・リードは2024年末までに直営のカラー・バーを100カ所増やし、フランチャイズモデルを導入するという目標を設定していた。エレット氏によれば、すでに4つのカラー・バーが完成しており、米国の屋内退避勧告が解除されたらオープンする予定だという。フランチャイズ展開については、まだ確定している計画はない。

「(D2C[Direct-to-consumer]とフランチャイズモデルは)需要の変化とともに急展開を迎えている。それでも、戦略を変えるつもりはない」とエレット氏は話す。「美容院の閉鎖はまったく望んでいないが、美容院に通いながら、そのあいだに自分で髪を染める人が増えるのではないかと思う。いま、我々の商品を購入している人たちは『たった22ドルか25ドルで、最高の髪が手に入るなんて。しかも、子供たちがようやく寝た夜の11時に、ワインを飲みながら髪を染められる』と喜んでいる。我々は常に、人々に選択肢を与えることを重視してきたのだ」。

Priya Rao(原文 / 訳:ガリレオ)