全世界での危機が起きることで競合の企業たちが意外な協力関係を結んでいる。

4月第1週、BBCとBBCグローバル・ニュース(BBC Global News)、CNN、そしてユーロニュース(Euronews)のコマーシャルニュース部門がチームを組んだ。この3つの組織は5000万ドル(約54億円)ほどの価値がある広告在庫を共同で確保し、それを公共の安全と健康のための広報向けに無料広告スペースとして提供する。総合すると8億人にリーチする規模だ。

「これは我々ができるポジティブなことだ。我々のような商業的な存在にも担うべき役割があって、全員が責任を感じて自分の役割を高めることが重要だ」と、BBCグローバル・ニュースのCEOであるジム・イーガン氏は言う。

コロナウイルスは収束の兆しを見せておらず、人々のニュースへの渇望は世界中でまったく収まっていない。イーガン氏はBBCによる最初のQuibi(クイビー)番組、キーワード・ブロックの悪影響、そしてコロナウイルス終息後でも継続するだろう習慣について語った。インタビューは以下、読みやすさのために若干の編集を加えている。

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──トラフィックへの影響はどのようなものか?

1月はこれまでの記録を破る結果となったし、3月(のトラフィック)は我々にとって非常に大きいものになっている。3月は閲覧者数が1億8000万にまで上っている。昨年はほとんどの時期において、1億を少し下回るものだった。世界中で影響を受けていない場所が存在しないような真にグローバルな現象が起きているなか、BBCはアジアやサハラ砂漠以南のアフリカまでリソースを注ぐことができるグローバルな組織であることが功を奏している。

事態に反応する形でのイノベーションも出てきている。その一例が「コロナウイルス・カインドネス」と呼ばれる、ポジティブなニュースを伝えるセクションだ。また、以前から計画していたローンチも行っている。たとえば、4月6日にアメリカとカナダでローンチされたQuibi上のBBCの番組だ。制作チームはすべてリモート勤務となっている。英国首相のボリス・ジョンソンが集中治療に移動したときには、ちょうど番組のリリースの準備をしている最中で、直前でニュースを急遽更新する必要があった。だが、最初の番組を出すことができて良かった。

──ビジネス側への影響はどうか?

誰もが広告サイドで経験している突然かつ顕著な動きは、我々も受けている。この状態が永久に続くわけではないだろうと楽観的に見てはいるが、非常に、極めて荒れている。中国ではようやくポジティブな空気が戻りはじめたばかりだ。中国の観光関係のクライアントがいくつか、市場へと復活しはじめている。トラベル分野では、人々が旅行を開始するときにその前面に存在できるよう尽力している。

──クライアントには何を伝えているのか?

このような環境では全員がいつもよりも融通を利かせなければいけない。具体的な最終地点というよりは、大きな視点での方向性を与えることの方が重要だ。どんな結果になるかはまったく予測できないから、やりながら考えるしかない、というわけにはいかない。幅広い異なるシナリオに備えて準備をすると同時に、我々がどこに向かっているのかという感覚をリーダーたちが保とうとすることが重要だ。CEOたちは自分たちが望む以上にフレキシブルになる必要がいま、出てきている。

──これからの3カ月にはどのように備えているのか?

幅広い異なるシナリオを想定している。おそらく抑えられて溜まった需要が存在しているはずで、それは比較的すぐに改善されるだろう。ヨーロッパで最初に状況が若干改善したように見えたことが、ダウジョーンズでの7%以上の上昇につながった。マーケットは元に戻りたがっている。大規模な事業縮小のようなアプローチよりは、短期的な方策で困難を乗り切ろうとしているのはそれが理由だ。事業縮小や大量解雇をしてしまうと、消費者の気分やお金が戻ってきたときにそれを上手く収益に結びつけるポジションを逃してしまうため、戦略的には賢くないだろう。

──最悪の状態を抜けた後、いまの消費者と企業の行動のうち、どのようなものが残ると思うか?

この事態の結果としてグローバリゼーションが終わることはないだろう。すべての人に影響を与えるような真にグローバルな危機においては、これまでの経済ナショナリズム的なフェーズはもたないということがより強い共通認識となるだろう。

ブランドパーパス。この事態において、ブランドのいくつかは正しい対応をし、いくつかは間違えるだろう。英国におけるもっとも明らかな例は、プレミアリーグ(Premier League)だ。メジャーかつ有名なサッカー選手たちは事態に対する反応をどうすれば良いか、ひどく当惑している。

おそらく一時的にではなく、今後ずっと、習慣が変わることになるだろう。自宅から勤務していて、「通勤はなくなっても嫌じゃない」と言っている人がどれだけいることか。

トラベル分野は戻って来るだろうが、それはより時間がかかるかもしれない。高度3万5000フィートの上空で金属のチューブのなかに500人の他人と一緒に閉じ込められて座るという体験を、人々がどれほどすぐにしたいと思うかはわからない。我々は少し違った考えを持つようになるかもしれないし、これまでとは違った要素が重要だと考えるようになるだろう。いくつかのことは今後恒常的な変化となるだろうし、パブリッシャーとして変化する消費パターンに非常に敏感になる必要があると思う。

──ブランドとの働き方はどう変わるのか?

繊細になることは重要だ。ブロックするキーワードリストがあるなか、ブランドが何をすべきか、ニュース業界を救うために市民としてブランド側に責任があるなどと、我々がブランドたちに対して説教をするようなことはそれほど意味はないだろう。ブランドたちはそもそも大きなプレッシャーを感じている。ブランドを助けるための我々のエディトリアル、そしてコマーシャルにおける判断を活用するために、ブランドたち自身も現状に対応するべく努力をしていることに繊細であることが、我々の重要な仕事だ。事態がいずれ前とまったく同じには戻るわけではなくて、消費者の選好などいくつかのことは恒常的な変化を見せるとブランドたちが理解できることが重要だ。

従来のプロセスに関する規制やルールはいったん脇に置かれている。先週もCNNとユーロニュースとそれを体験した。

──これがパブリッシャー間での連帯が増えることに繋がるのか?

我々とユーロニュース、CNNのあいだで、これがきっかけでこれ以上の何かに繋がっていくのかはわからない。ブランドたちはパブリッシャー間の違いをはっきりさせたいと思っている。このような危機的な状況では、それよりも重要なことがあり、ほかのことは重要ではない、という理解がある。そういう点では、重要なプロジェクトに関しては協働し、それに対してより理解が深まるのは非常に良いことだ。

Lucinda Southern(原文 / 訳:塚本 紺)