JもNPBも延期決定…その中で見えるスタンスの違い/六川亨の日本サッカーの歩み
4月3日のJリーグ再開に向けたJリーグとNPB(日本野球機構)、3人の専門家(ドクター)チームによる新型コロナウイルス対策連絡会議の第4回目が3月23日の午前に行われ、結論としてJリーグとNPBは4月上旬の再開・開幕は断念し、それぞれ18日と24日に再開・開幕を目指すことになった。
冒頭に専門家チームの座長である賀来満夫氏(東北医科薬科大)の見解が全てを物語っていた。
「現状をどう考えているか説明した。3月19日に専門家から提言がまとめられた。現在ヨーロッパではWHO(世界保健機関)がパンデミック(世界的大流行)を宣言。アメリカ、中東もオーバーシュート(感染者の爆発的増加)しているのが現実」
「日本はどうにか押さえ込んでいるが、海外からの帰国者から患者が出ている。クラスター(集団感染)から各地に波及するとメガクラスターになる。これは絶対に避けないといけない」と警告。その上で「大人数が一堂に集まるのは危険。大規模イベントは屋内外を問わず全国から人が集まり、戻るのはリスクが高いと説明した。現段階で早期の開催は危険なので遅らせて欲しいと要望。今後開催には十分な注意と対応を取って判断して欲しい」と延期が必要との理由を説明した。
「感染はゼロリスクにならない」ことも踏まえ、いまだ患者数の増えている現状を考えれば、責任を持って「開催しても大丈夫」と言える専門家は皆無だろう。
続けて三鴨廣重氏(愛知医科大)は「第2案を出すとするなら、海外からの帰国者、高齢者(70~75歳以上)、持病を持っている、タバコを吸う人間は感染の確率が高いと提言したい」と補足した。
こうした専門家の意見を聞きながら、JリーグとNPBでは対応の違いが鮮明になった。NPBは午前の会議を受けて、午後にも球団の代表者会議(ビデオ会議を含む)を開き、斎藤惇コミッショナーは4月24日の開幕を目指すことを12球団で決議した。
一方のJリーグは25日のビデオ会議による実行委員の臨時理事会で4月3日の延期を正式に決定し、4月18日の再開を目指すことを決議する予定だ。即断即決のNPBと2日間のタイムラグがあるJリーグではスピード感が違うものの、これはNPBが12球団に対し、Jリーグは4倍強の56クラブもあるからやむを得ないだろう。
チーム数の違いは準備でも差となって表れる。村井満チェアマンが「準備にも色々あります。物資の方は準備を進めていますが、サーモメーターは56揃えるのは難しく、調達には時間がかかります」と話したのに対し、斎藤コミッショナーは「お互いに譲り合えば間に合う」とそれほど問題視はしていなかった。
それよりもNPBの問題は「チケットの販売をやり直さないといけないので、簡単にはできない」と述べた。恐らく1チームの年間試合数がJリーグより遙かに多いため、混乱が予想されることを想定しての発言だろう。
そして一番大きな違いは「興行の中止で死活問題が起きている。それぞれ行政に期待することは」という質問に対する答えだった。
村井チェアマンは「再開のための3つの提案(密集、密室、密閉を避ける)がありました。こうしたところに知恵を働かせれば、再開できないことはないと考えています。例えばJ3なら大都市ではないため人も密集しない。一律に考えずに丁寧に考えている」と答えた。
一方の斎藤コミッショナーは「命か収益なら命の優先は当たり前。命のプロテクトが第一になる。行政よりも皆で知恵を絞り合って、自分たちでリスクを回避できるか大きなチャレンジをしている。行政ではなく自分たちで考えていきたい」と行政の支援を断る考えを示した。
両氏の言っていることに間違いはない。
ただ、村井チェアマンの発言からは、“弱者に対する配慮"が感じられてならない。恐らくJ3に所属する地方のクラブは資金繰りに苦労が絶えないだろう。加えて地元の飲食業者(スタジアムグルメとスタジアムか最寄り駅の飲食店)や、警備会社のパートタイムやアルバイトなど、多くの非正規雇用者は収入が途絶えて1ヶ月が過ぎようとしている。
Jリーグはホームタウンの住民・行政・企業が三位一体となった支援体制で、その町のコミュニティーとして発展することを理念としている。3者の共存共栄がJリーグの理念でもあるのだ。
しかし斎藤コミッショナーの発言からは、「命の優先」は当然としても、行政や住民への配慮が感じられない。1つにはJの56クラブと違ってNPBの12球団はいずれも大都市にあるため、地元住民の雇用確保という意識が希薄なのかもしれない。
そして地元自治体との関係に関しても、親会社はいずれも大企業だけに、行政からの支援を受けずに球団は存続してきた歴史が影響している可能性もある。
村井チェアマンは、4月18日の再開が難しい場合は、新型コロナウイルスの潜伏期間である2週間後を目安に、5月2日の再開を目指すことになる。専門家チームは「暖かくなればウイルスの活動も沈静化し、湿度も高くなる」と期待を寄せている。
GW(ゴールデンウィーク)には、全国各地のスタジアムで歓声が響くことを期待せずにはいられない。
冒頭に専門家チームの座長である賀来満夫氏(東北医科薬科大)の見解が全てを物語っていた。
「現状をどう考えているか説明した。3月19日に専門家から提言がまとめられた。現在ヨーロッパではWHO(世界保健機関)がパンデミック(世界的大流行)を宣言。アメリカ、中東もオーバーシュート(感染者の爆発的増加)しているのが現実」
「感染はゼロリスクにならない」ことも踏まえ、いまだ患者数の増えている現状を考えれば、責任を持って「開催しても大丈夫」と言える専門家は皆無だろう。
続けて三鴨廣重氏(愛知医科大)は「第2案を出すとするなら、海外からの帰国者、高齢者(70~75歳以上)、持病を持っている、タバコを吸う人間は感染の確率が高いと提言したい」と補足した。
こうした専門家の意見を聞きながら、JリーグとNPBでは対応の違いが鮮明になった。NPBは午前の会議を受けて、午後にも球団の代表者会議(ビデオ会議を含む)を開き、斎藤惇コミッショナーは4月24日の開幕を目指すことを12球団で決議した。
一方のJリーグは25日のビデオ会議による実行委員の臨時理事会で4月3日の延期を正式に決定し、4月18日の再開を目指すことを決議する予定だ。即断即決のNPBと2日間のタイムラグがあるJリーグではスピード感が違うものの、これはNPBが12球団に対し、Jリーグは4倍強の56クラブもあるからやむを得ないだろう。
チーム数の違いは準備でも差となって表れる。村井満チェアマンが「準備にも色々あります。物資の方は準備を進めていますが、サーモメーターは56揃えるのは難しく、調達には時間がかかります」と話したのに対し、斎藤コミッショナーは「お互いに譲り合えば間に合う」とそれほど問題視はしていなかった。
それよりもNPBの問題は「チケットの販売をやり直さないといけないので、簡単にはできない」と述べた。恐らく1チームの年間試合数がJリーグより遙かに多いため、混乱が予想されることを想定しての発言だろう。
そして一番大きな違いは「興行の中止で死活問題が起きている。それぞれ行政に期待することは」という質問に対する答えだった。
村井チェアマンは「再開のための3つの提案(密集、密室、密閉を避ける)がありました。こうしたところに知恵を働かせれば、再開できないことはないと考えています。例えばJ3なら大都市ではないため人も密集しない。一律に考えずに丁寧に考えている」と答えた。
一方の斎藤コミッショナーは「命か収益なら命の優先は当たり前。命のプロテクトが第一になる。行政よりも皆で知恵を絞り合って、自分たちでリスクを回避できるか大きなチャレンジをしている。行政ではなく自分たちで考えていきたい」と行政の支援を断る考えを示した。
両氏の言っていることに間違いはない。
ただ、村井チェアマンの発言からは、“弱者に対する配慮"が感じられてならない。恐らくJ3に所属する地方のクラブは資金繰りに苦労が絶えないだろう。加えて地元の飲食業者(スタジアムグルメとスタジアムか最寄り駅の飲食店)や、警備会社のパートタイムやアルバイトなど、多くの非正規雇用者は収入が途絶えて1ヶ月が過ぎようとしている。
Jリーグはホームタウンの住民・行政・企業が三位一体となった支援体制で、その町のコミュニティーとして発展することを理念としている。3者の共存共栄がJリーグの理念でもあるのだ。
しかし斎藤コミッショナーの発言からは、「命の優先」は当然としても、行政や住民への配慮が感じられない。1つにはJの56クラブと違ってNPBの12球団はいずれも大都市にあるため、地元住民の雇用確保という意識が希薄なのかもしれない。
そして地元自治体との関係に関しても、親会社はいずれも大企業だけに、行政からの支援を受けずに球団は存続してきた歴史が影響している可能性もある。
村井チェアマンは、4月18日の再開が難しい場合は、新型コロナウイルスの潜伏期間である2週間後を目安に、5月2日の再開を目指すことになる。専門家チームは「暖かくなればウイルスの活動も沈静化し、湿度も高くなる」と期待を寄せている。
GW(ゴールデンウィーク)には、全国各地のスタジアムで歓声が響くことを期待せずにはいられない。