派遣社員から契約社員を経て、ようやく正社員になれたけれど……(studio-sonic/PIXTA)

→安井さんへのキャリア相談は、こちらまでお送りください。

初めまして。40代独身女性です。

やりたい仕事(広報)ができるなら非正規でもいいと思って今の会社に派遣として7年、契約社員として7年、その後、正社員雇用されました。

ただ、希望しない部署(経理含む庶務)に異動になってしまいました。引き継ぎもほとんどなく慣れない仕事で毎日ミスがあり、同じ年でプロパー正社員の女性から陰口をたたかれて会社に行くのがつらい状況です。

広報への異動を申し出、広報室長からも欲しいと直々に言われましたが現部署の上司からは人手不足を理由に出させてもらえませんでした。

せっかく正社員になりましたが、また派遣などで広報職を探すべきか、我慢してここにとどまるべきか悩んでおります。

また、それとは別で10代の頃から青年海外協力隊としてボランティア活動したいという思いがあります。会社にはボランティア休暇の制度があるため休職が可能ですが、その分キャリアは積めず戻ったときに現状よりさらに苦しい立場になる気がしております。つまらない悩みと思われるかもしれませんが、40代の進路としてアドバイスいただけると幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

一般職庶務 43

万人に当てはまる正解や王道はない

ご自身の人生を考えた際に、何が自分にとってより重要なのか、そういった自分自身の価値観に基づき判断をされるといいでしょう。


この連載の記事一覧はこちら

頂戴した相談を拝見するに、43さんは正社員というステイタスにそこまでこだわりがあるわけではないと察します。その一方で、これまでのキャリアを通じても、また広報関係の仕事を始め、ご自身で現在お持ちのボランティア活動という具体的な夢も含め、「やりたいことをやる」に重きを置いているように見受けられます。

その意味では、43さんの価値観としては「やりたいことができる充実感>安定感」という図式なのだと思います。

それにもかかわらず、現状はご自身にとってやりがいを感じにくい仕事に従事してしまっているがゆえに、ご自身の価値観と異なる行動となってしまっており、モヤモヤした感じを持ってしまっている、ということかと思われます。

つまり、ご自身で持っている思考や価値観と行動および現状が不整合を起しているがゆえの消化不良であり、悩みであると思われます。本連載でも何度も申し上げておりますが、キャリアや人生には万人に当てはまる正解や王道は存在しません。

個々人がそれまでの人生や経験を通じて培ってきた価値観や志にのっとり、自分ならではの正解を追及し続けるのが人生であり、キャリア道です。

その意味では、43さんはキチンとご自身の価値観に基づいたキャリア上の優先順位をお持ちであり、なおかつ具体的な夢も持っておられるわけですから、非常に幸せなことだと思います。

そういった自分ならではの価値観や志を持てずに、いつも周りに流され、人生やキャリアの荒波にもまれつねに迷子になってしまっている人が多数です。私はそういった周りに流され自分をいつまでも持てない方たちを拙著『非学歴エリート』にて「浮遊層」と名付けましたが、まさに自分の軸がないがゆえにフラフラとしてしまっている状態なのです。

そうなってしまいますと、寄らば大樹の陰ではありませんが、やはり大多数のやっている事が正解とばかりに「世間の常識」を探そうとし、その行動に沿うことで「つかの間の安息」を手に入れようとするのです。

もちろん、そういった考えもあるでしょうし、決して否定するわけではありません。

正解がないがゆえに皆手探りなわけですし、それこそ自分の価値観に基づき意思決定をし、間違えたと思ったら方向転換をしつつ、自分なりの冒険を通じて自分の人生に責任を持って生きて行けばよいのですから。

周りに流されず、自分の信じる道を

ところでそういった手探りな状態よりは、43さんのようにご自身の価値観に基づいた行動指針をすでにお持ちのほうが本来は生きやすいわけですが、それだけではちょっと物足りません。

おそらく43さんにあと必要なのは、「自分を信じて自分の生き方や信念を貫く勇気」でしょう。43さんのような生き方や考え方は世間的には決してマジョリティーではないと思います。であるがゆえに、どこかで恐怖心というか、ご自身の生き方や志に対して迷いがあるのかもしれません。「果たしてこれでいいのだろうか」と。

でも、そこを突き詰めることで見えてくる幸せもあるでしょうし、実際にご自身の好きなことをやられていた過去のほうが、正社員というステイタスでやりたくないことをやっている現状よりも幸せだったはずです。

先程、人生やキャリアに万人に当てはまる正解はないと申し上げました。本来100人いれば100通りの人生やキャリア道があってしかるべきなのです。

人生やキャリアにおける未来地図や教科書、前例がないと迷う気持ちもわかります。でも、43さんの場合はご自身の過去、つまり今よりも幸せだったという事実が、明確な道しるべであり、未来地図なのではないでしょうか。

「大切なのは世間でいう安定感ではない。自分らしくいることによる充実感なのだ」。それが43さんの生き方なのではないでしょうか。

人生に迷ったときには過去を振り返ることで、自分にとっての価値観や幸せの形を今一度思い出すことも大切なのかもしれません。

40代だからうんぬんは関係ありません。今まで培ってきた悩みや苦労がある40代であるがゆえに、ちょっとは自分にわがままになり、自分なりの幸せの形を追求する権利もあるというものです。

43さんが、周りの声や評価に流されず、ご自身の信じる道を歩み、結果としてご自身ならではの幸せの追求に邁進されるであろうことを応援しております。