クルマの流行が移り変わっていくように、車内外の装備品も、いまでは見られなくなったものが少なくありません。ただ、もはや顧みられなくなったものばかりではなく、復活の兆しを見せているものもあります。

車内の喫煙具 セダンで根強い需要

 いまではあまり見られなくなってしまったクルマの装備品を5つ紹介します。

灰皿&シガーライター

 JT(日本たばこ産業)の統計によると、喫煙人口は減少傾向にあり、その割合は2008(平成20)年度に男性39.5%、女性12.9%でしたが、2018年度には男性27.8%、女性8.7%となっています。これにともない、車内に灰皿を標準装備したクルマも激減しています。

 かつてはインパネから引き出すタイプ、あるいはセンターコンソールやドア部分に内蔵された灰皿などがありましたが、2020年現在の新車ではほとんど見られず、自動車メーカー各社がオプションとして用意している灰皿も、その多くはドリンクホルダーに置くボトル型のものです。タバコに火をつけるための電熱式シガーライターも同様で、それが収まるシガーソケットは、電源供給用のアクセサリーソケットなどに変わっていきました。


新車から激減しているシガーライター(画像:charmboyz/123RF)。

 シガーライターを取り付ける場合、アクセサリーソケットを耐熱仕様のシガーソケットに換装する必要もあり、これをオプションで用意している車種も少なくなっています。ホンダの乗用車で対応しているのは1車種、セダンの「グレイス」のみです。

 ホンダ車の純正アクセサリーを販売するホンダアクセスによると、「グレイス」は年配のユーザーが多く、シガーソケットの要望もあるためだとか。また日産では、同じくセダンの「シルフィ」「シーマ」において、灰皿とシガーライターを標準装備としています。

クルマの「キンコン♪」なぜ聞かれなくなった?

 もやは復活することはまずない、というものもあれば、近年復活の動きがある装備もあります。

速度警告音

 かつて、普通自動車では速度が100km/h以上、軽自動車は80km/h以上になると、「キンコン」という警告音が鳴るようになっていました。自動車技術総合機構によると、この速度警告音を発する装置はかつて、自動車の保安基準でも装備が義務づけられ、車検においても、正しく音が鳴ることを確認していたといいます。

 ところが、1986(昭和61)年3月にこの項目は保安基準から削除され、これを受けて自動車メーカーも速度警告音を廃止していきました。輸入車の業界団体である日本自動車輸入組合によると、この装備は日本独自のものであるとして、日米自動車協議においてアメリカ政府から日本に対して撤廃が求められたといい、背景に海外自動車メーカーの意向があると見られるそうです。


かつての普通自動車では、100km/hを超えると速度警報音が鳴った。写真はイメージ(画像:blueone/123RF)。

車速連動ドアロック

 この機能は、メーカーによっても採用が分かれるため、必ずしも「見なくなった」というものではないかもしれません。クルマが走り出し、15km/hや20km/hなど一定の速度に達すると全ドアが自動でロックされるというものですが、たとえばホンダでは多くの車種で採用されているのに対し、日産は現在の国内販売車種では採用していないといいます。

 2017年10月にモデルチェンジした「レガシィB4」に、この機能を新たに設定したスバルによると、この技術は1980年代から存在するものの、少なくとも「レガシィB4」までの10年間で採用例はなかったそうです。というのも一時期、「緊急時にドアが開かなくなる」という問題がクローズアップされたからだといいます。

 この機能を後付けするキットも市販されていますが、その製造元によると、自動車メーカーや開発者により、事故時に「ドアロックをしていないと車外に放り出されてしまう」という考えと、「ロックされていると救出が難しくなる」というふたつの考え方があって、採用の有無が分かれているといいます。なお、スバルではこれを改めて採用するにあたり、万が一の衝突時に全ドアを自動的に解錠する機能を持たせています。

「意味なかったのでは?」で消えていったグッズも

 シートカバーやグッズにおいても、あまり見られなくなったものがあります。

レース生地のシートカバー

 カー用品店などで売られているシートカバーの多くは、防水性や速乾性といった機能を持つ生地のものがほとんどで、座席の上半分に装着する白いレース生地のカバーを装着したクルマは、あまり見かけなくなりました。しかし、トヨタでは「クラウン」、日産では「スカイライン」といったセダンモデルを中心に、需要は減少したものの、レースカバーを純正オプションに残しているといいます。

 特にタクシー業界では根強い人気があり、トヨタの新世代車両「JPNタクシー」でオプション設定されているのはもちろん、様々なメーカーがタクシー向けにレースカバーを製造・販売しています。一方でマツダなどは、セダンであってもこれを設定していません。


ホンダ「インサイト」純正オプションのレース生地カバー(画像:ホンダアクセス)。

アースベルト

 リアバンパー付近から下へ垂らし、接地するように装着するベルトのことです。導線が内蔵されており、クルマに溜まった静電気を大地へ逃がす「アース」の役割があるとされ、たとえばドアノブに触れたときにビリッとくるのを防ぐのはもちろん、静電気を要因とする万が一の事故を防止するという目的がありました。いまもカー用品店などで販売されてはいますが、製造元によると、人体の静電気を除去する様々なグッズが登場したこともあり、ニーズは少なくなっているそうです。

 カー用品大手のカーメイトでもかつては製造していましたが、2000年代には取り止めています。というのも、あるときその効果の根拠を見直したところ、「そもそもタイヤのなかにスチールが組み込まれている時点で、意味がなかったのではないか」という結論に至り、販売停止を決めたのだとか。実は、クルマに溜まった静電気は、走っているだけでもタイヤを通じて放電されています。

 現在販売されているアースベルトのなかには「懐かしのアイテム」とうたっているものもあり、一種のドレスアップアクセサリーとして取り付けている人もいます。

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 このほかにも近年、たとえばスマートフォンなどで音楽を楽しむ人が増えたことから、CDプレイヤーを廃止している車種もあります。クルマの使い方や車内の過ごし方が変化するとともに、装備品も変化しています。