いつの時代もJリーグの舞台を華やかに彩ってきた、助っ人外国人選手――。

 とりわけ近年は、ルーカス・ポドルスキ(アンタルヤスポル/トルコ)、アンドレス・イニエスタ(ヴィッセル神戸)、フェルナンド・トーレス(引退)、ジョー(名古屋グランパス)、ダビド・ビジャ(引退)、レアンドロ・ダミアン(川崎フロンターレ)、トーマス・フェルマーレン(ヴィッセル神戸)など、数々のビッグネームが来日してファンを魅了している。


インテルナシオナルから鹿島に移籍してきたファン・アラーノ

 果たして今シーズンは、どのような助っ人外国人選手が新たにJリーグの舞台に登場するのか。今回は初めてJ1でプレーすることになったニューカマー外国人選手に絞り、サッカー選手の市場価値を掲載するwebサイト『transfermarkt』における移籍金(獲得費用)をひとつの基準としながら、各選手の期待値をチェックしてみる。

 まず、今シーズンのJ1リーグ(18チーム)に加入した新外国人選手は計15人(3月7日時点)。意外なことに、ディフェンディングチャンピオンの横浜F・マリノス、2位のFC東京、資金力のあるガンバ大阪、ヴィッセル神戸、名古屋グランパスは、J1未経験の新外国人選手の補強が皆無だった。

 これに大分トリニータ、柏レイソル、横浜FCを含めた計8チームは、現有戦力もしくは他のJ1チームからの獲得で新助っ人の補強を賄っている。DAZNマネーによってバブルの様相を呈している近年Jリーグではあるが、今シーズンはこれまでの傾向から一転し、派手な動きが少ない静かな移籍市場に終始した。

 そんななか、未知数の新外国人選手を積極的に獲得したのが、鹿島アントラーズと清水エスパルスの2チームだ。

 昨シーズン3位に終わった鹿島は、ザーゴ新監督の招聘のほか、DF陣に日本人即戦力を大量補強するなど、開幕前に最も派手に動いたチームと言える。その姿勢は外国人選手の補強にも表れ、レアンドロ(FC東京)、セルジーニョ(長春亜泰/中国)を放出した代わりに、初来日となるふたりのブラジル人選手を完全移籍で獲得している。

 まず、インテルナシオナル(ブラジル)から推定約1億6800万円(122万ポンド)の移籍金で加入した23歳のファン・アラーノは、開幕戦のサンフレッチェ広島戦で右MFを務めたように、レアンドロの抜けた穴を埋める。日本のサッカーにフィットするまでには多少時間を要するだろうが、テクニックと創造性に優れたプレーには伸びしろを感じさせる。長い目で見れば、投資に見合った活躍が期待できそうだ。

 一方、メキシコのケレタロFCから加入した28歳のブラジル人FWエヴェラウドは、2019年はローン先のシャペコエンセで28試合11得点を記録。鹿島が支払った移籍金は不明だが、彼がケレタロFCに移籍した際の移籍金が推定約1億700万円(78万3000ポンド)だったことから推測すると、ファン・アラーノの移籍金に近い金額が推測される。

 エヴェラウドは恵まれた体格を生かした空中戦の強さと、パワフルなショットを武器とする万能型FWで、新たな得点源として大きな期待を背負う。開幕戦は不発に終わったが、獲得に使った額を考えれば、年間ふたケタ得点は最低ノルマ。ストライカーだけにゴール量産のためには、周囲との連係を深めることが最大のキーポイントになる。

 昨シーズンまで横浜FMでヘッドコーチを務めたピーター・クラモフスキーを新監督に招いてチーム改革を目論む清水は、ニューカマー3人をいずれも完全移籍で獲得した。今シーズンのJ1のなかで、未知数の助っ人外国人選手に最も多額な資金を投資したチームとなった。

 とくに、今シーズンのニューカマー15人のなかで最高額となる推定約2億3000万円(162万ポンド)を投資したのが、開幕直前にスイスのルガーノから加入したブラジル人FWカルリーニョス・ジュニオだ。

 CFのみならず左右のウイングでもプレー可能なポリバレントタイプのFWで、ルガーノではヨーロッパリーグにも出場している。ここ2シーズンは国内リーグでふたケタ得点をマークするなど、その実力も折り紙つきだ。再開後のJリーグで最も注目すべき新外国人選手と言えるだろう。

 また、開幕戦でも能力の高さを発揮したブラジル人CBヴァウドには推定約9900万円(72万ポンド)をセアラー(ブラジル)に支払って獲得したほか、アメリカ・デ・カリ(コロンビア)からブラジル人GKネト・ヴォルピも補強した。

 清水がふたりに支払った移籍金は不明だが、昨季のコロンビアリーグ優勝の原動力となった実力派GKは、攻撃サッカーを標榜するクラモフスキーのお眼鏡にかなった足技の持ち主だ。開幕戦は3失点を喫してホロ苦いデビューとなったが、今シーズンの成績を左右するキーマンであることは間違いない。

 そのほか、完全移籍で加わったJ1ニューカマーは4人。

 広島が推定約1億3700万円(99万ポンド)を投資してボタフォゴ(ブラジル)から獲得したブラジル人MFエゼキエウ(昨年はローン先のクルゼイロでプレー)、ベガルタ仙台が推定8700万円(63万ポンド)の移籍金でボタフォゴSP(ブラジル)から獲得したブラジル人SBパラ、フリートランスファーで湘南ベルマーレが獲得したノルウェー人FWタリク、将来性を買って浦和レッズがメルボルン・ビクトリーから獲得したケニア生まれのオーストラリア人CBトーマス・デン(移籍金不明)だ。

 とくにトーマス・デンは、オーストラリアU−23代表でキャプテンを務めた将来を嘱望される大型CBで、大化けすれば”掘り出し物”の助っ人外国人選手になるかもしれない。

 一方、期限付き移籍(ローン移籍)で加入した新外国人選手は計6人。

 川崎フロンターレがコリチーバ(ブラジル)から補強したブラジル人SBジオゴ・マテウス、セレッソ大阪がシャペコエンセ(ブラジル)から獲得したブラジル人MFルーカス・ミネイロ、北海道コンサドーレ札幌がルヴェルデンセ(ブラジル)から獲得したブラジル人FWドウグラス・オリベイラ、同じくルーヴェン(ベルギー)から獲得したタイ人GKカウィン・タンマサッチャーナン、仙台がヴィトーリア(ポルトガル)から獲得したポルトガル人FWアレクサンドレ・ゲデス、そしてサガン鳥栖がプラサ・コロニア(ウルグアイ)から獲得したブラジル人FWレンゾ・ロペスといった面々だ。

 この6人のなかで開幕戦に出場したのは、86分から途中出場を果たしたC大阪のルーカス・ミネイロのみ。全体的に小粒感は否めないが、お試し的に補強したローン選手がブレイクすれば、買い取りの完全移籍に発展する可能性も秘めている。それだけに、彼らがシーズン中にどのような活躍を見せてくれるかは注目に値する。

 昨シーズンから外国人登録枠が撤廃され、J1では1試合最大5人が出場できるようになった。そのため、彼ら助っ人外国人選手にかかる期待はより大きくなっている。王者横浜FMがそうだったように、今シーズンも助っ人外国人選手たちの活躍ぶりが各チームの成績を左右するはず。そういう意味でも、ここで紹介した15人の動向は必見だ。