21日に開幕するJリーグ。こう言ってはなんだが、見どころ満載という感じではない。選手の移籍は最小限に止まった印象だ。昨季から外国人枠が5人に拡大され、外国人選手が入って来やすい状態であるにもかかわらず、ネームバリューの高い大物選手の来日は実現しなかった。

 監督交代も同様に最小限に終わった。名将と呼ばれる外国人監督に至っては、来日する気配さえ感じられない。

 選手も監督もスター不足。すでに好きになってしまった人、たとえば各クラブの熱狂的なファンは、それでもファンを辞めることはないだろう。問題はそれ以外の人たちだ。サッカーに興味はあっても、Jリーグに入り込めないファンはかなりの数にのぼる。J3まで含めるとクラブの数は56を数えるが、東京がそうであるように、応援したくなるクラブが近場に存在しない地域はまだまだ多い。すべてのファンあるいはその予備軍に、Jリーグは訴求力を発揮している状態とはいえないのだ。

 興味の幅を、対戦する2つの地元地域以外にまで波及させることができるか。バランス的に見て現状のJリーグに不足しているのは、第3者的なファンから関心を集めることができる全国区人気のクラブだ。ファンになる動機を地元愛に限定しないクラブと言ってもいい。

 そこで不可欠になるのは、よいサッカー、面白いサッカーをするチームだ。第3者的立場にいる一般のファンは、こうしたチームの出現を望んでいる。

 地元クラブへの愛着は、その土地に生まれ、育てられれば自ずと芽生える。しかしサッカーが好きになると関心の幅はおのずと広がり、興味はプレーの中身へと向く。ファンとして成長していく過程で好みが生まれることになる。地元クラブへの愛着とは異なる種類の好意を寄せたくなるクラブが出現しても不思議はない。

「札幌生まれなのでコンサドーレを応援していますが、好きなサッカーはリバプールです」的な台詞を吐きそうな人は実際、多くいるだろう。「金沢生まれなのでツエーゲンを応援していますが、サッカー的には横浜F・マリノスですね」と、ダブルスタンダードを日本国内の関係に見いだす人もいるだろう。サッカーの特性を考えれば、当たり前の話である。

 そうしたニーズに応えていたのが昨季の横浜FMだ。横浜に縁もゆかりもない人まで虜にしながら優勝した。大きな波及効果を含む優勝であることに価値があった。クラブとしての志向なのか。アンジェ・ポステコグルー監督個人の志向が反映されたに過ぎないのか。つまり偶然の産物なのか。

 面白いサッカー、よいサッカーとは何か。この解釈も人それぞれだと思うが、月並みな言葉で言えば、攻撃的サッカーとなるはずだ。見たいのは、後ろで守るサッカーではなく、高い位置から相手とバチバチやり合うサッカーだ。

 Jリーグではこれまで、そうではないサッカーが幅を利かせてきた。5バックになる時間が長い守備的な3バックを採用するチームが目立った。旧態依然としたこの流れをJリーグは、横浜FM優勝を機に断ちきることができるか。今シーズンの一番の見どころはここになる。横浜FMに続くチームは現れるか。

 その前に横浜FMについて、心配される点を挙げれば、昨季後半、名古屋グランパスからレンタルで獲得した左ウイングのマテウスを同チームに返却したことにある。左の深い位置に侵入する動きが減れば、攻撃の効率は悪化する。左利きの左ウイングを失った意味は大きいと考える。

 昨季、横浜FMに最後、逆転されたFC東京の方が、上昇は見込めそうな気がする。布陣を4-3-3に変え、堅守速攻型からより攻撃的なサッカーに脱皮を図ろうとする姿勢も奏功しそうな気がする。