東京23区内ながら、乗車人員が最も少ないJR駅として知られる京葉線の越中島駅(江東区)。なぜ「閑散駅」になっているのか現地を訪問したところ、駅の両側は大学でした。また、ほど近い場所には地下鉄2路線が走る駅もあります。

JRが公表する「各駅の乗車人員」

 約950万人が住む東京23区。新宿駅のように一日100万人を超す乗降客が行き交う駅もあれば、埋立地を走るゆりかもめのように、周囲に建物がまばらな駅など、様々な駅があります。


京葉線などで使われるE233系電車(2018年12月、草町義和撮影)。

 そのうちのひとつ、江東区にある京葉線の越中島駅。同線の全線開業に合わせ、1990(平成2)年3月10日に開業した地下駅です。2018年度の1日平均の乗車人員は5735人で、東京23区では最も利用者が少ないJR駅です。

 2019年11月に同駅を訪れたところ、その“洗礼”は、駅の改札を出るところから始まりました。有人改札口は暗く閉ざされており、なんと駅員がいません。まさに東京23区最閑散駅たるやを物語っています。駅構内の掲示を見ると、2019年5月1日以降、始発から7時まで、10時から17時30分まで、20時から21時30分までは駅員不在になることが書かれています。

そう遠くない距離にある地下鉄の駅

 なぜ利用者が少ないのでしょうか。地上に出るとそれがわかる気がします。「越中島通り」と呼ばれる一本の太い道路に、駅すべての出入口がつながっていますが、いずれも東京海洋大学に囲まれています。大学の中に駅があるようなものと言っても過言ではないでしょう。しかし、大学の敷地になるべく干渉しないような構造となっており、歩道に向け出口は狭く造られています。


駅周辺地図を見ると、門前仲町駅が近くにあるのがわかる(2019年11月、河嶌太郎撮影)。

 大学の周辺にはマンションなどの住宅もありますが、こうした住民が多く利用しているかというと、それも疑わしいです。というのも、徒歩10分足らずの距離に、門前仲町駅があるからです。越中島駅前の案内地図にも門前仲町駅は大きく書かれています。

 門前仲町駅は東京メトロ東西線と都営大江戸線が乗り入れている駅で、双方の乗降人員を合算すると、1日あたり20万7007人(2018年度)。都内有数の混雑駅と言えます。越中島駅の5735人という数は乗車のみの人員であるため単純比較はできませんが、門前仲町駅の乗車人員を乗降人員の半分と仮定しても、18倍もの開きがあります。路線の利便性を考えても、門前仲町駅の方が都心へのアクセスに優れています。

当初は「西越中島」で開業予定だった

 対する越中島駅は、都心方面でも京葉線が東京駅で行き止まりであり、山手線などへの乗り換えも、東京駅構内を約560m歩く必要があります。列車の本数を見ると、越中島駅は日中、1時間に片方で7本(10時〜15時台)です。これでもだいぶ改善されたようで、2013(平成25)年3月のダイヤ改正まで朝ラッシュ時以外、武蔵野線は当駅を通過しており、日中は1時間に4本しか停車しなかったといいます。現在では本数が増えたこともあってか、駅利用者は増加傾向にあります。

 元々「越中島」という駅名は、貨物線である総武本線越中島支線の駅を指していました。そのため、当初は「西越中島」駅という名称で開業する予定でしたが、地元からの要望により貨物線の「越中島駅」を「越中島貨物駅」に改称し、この駅を越中島駅として開業した経緯があります。

 このように見ると、閑散駅ならではの情緒やちょっとしたいきさつもあります。これこそが閑散駅の魅力と言えるかもしれません。