ホリデーシーズンにカスタマーから返品される商品の管理をめぐり、小売業者の模索がつづいている。目標としているのはカスタマーからの返送料の負担を減らし、コスト効率に優れた返品と交換プロセスを実現することだ。これはとりわけ、カスタマーからの返品を受け取れる実店舗をあまり持たないD2Cのスタートアップにとって大きな課題となっている。

そんななかアウトドアボイス(Outdoor Voices)やロージーズ(Rothy's)といったスタートアップは大手量販店の手法を真似て、ブラックフライデーやサイバーマンデーにプレゼントを購入したカスタマーが新年になっても返品できるように返品期間を延ばす取り組みをはじめた。たとえばロージーズは基本的に30日間の返品期間を設けているが、11月1日から12月31日の注文については1月31日まで返品が可能となっている。

ほかにも返品の手間を嫌がるカスタマー向けのサービスを導入するスタートアップもあらわれはじめた。ダグネ・ドーバー(Dagne Dover)やティムバック2(Timbuk2)は、返品仲介サービス企業のハッピー・リターンズ(Happy Returns)やナーバー(Narvar)と提携して、薬局チェーンのウォルグリーンズ(Walgreens)といったほかの小売店でも返品を受け付けるサービスを導入している。

ギフトの最低ひとつは返品

なかにはクリスマスシーズンの返品率もほかの期間と変わらないとしているD2Cブランドもあるが、それでも注文数自体が増えるため、必要な返品手続きは増加傾向にある。リテールミーノット(RetailMeNot)の1000人以上のカスタマーを対象とした調査によれば、回答者の37%が今年のクリスマスの贈り物を最低ひとつは返品するとしている。

さらに、クリスマスプレゼントの購入時期はどんどん前倒しになりつつある。なかには受け取った人が1月までに返品できないようなケースもでてきており、小売業者からすれば返品処理はますます難しくなっている。全米小売業協会(The National Retail Federation)が毎年行っているクリスマスショッピング調査によれば、7800人近い回答者のうち39%が11月に入る前からショッピングを開始する予定だと回答している。また一部ブランドが危惧しているのは、1月に入って返品商品が殺到してカスタマーサービスや倉庫のキャパシティがパンクしてしまうことだ。

1年のどの時期であっても、D2Cスタートアップにとって返品は多大なコストがかかり痛手となる。たとえ商品を再販できたところで返送料金とカスタマーへの送料を負担することによる出費は免れない。また初回利用者が安心して購入できるように返品無料を謳っているD2Cスタートアップも多く、利益率を押し下げる要因となっている。

エバーレーン(Everlane)やロージーズといったブランドの返品を仲介しているスタートアップのハッピー・リターンズでマーケティング担当バイスプレジデントを務めるケイトリン・ロバーソン氏は、「カスタマーからすれば、あるプラットフォームではじめて購入を考える際に、商品の返品期間が長ければ購入に伴うリスクは小さくなる」と指摘する。

柔軟な返品ポリシーを実装

ほかにも、柔軟な返品ポリシーを実装しているためクリスマスに合わせて調整する必要のないD2Cスタートアップもいる。たとえばキャスパー(Casper)は100日間、ブルックリネン(Brooklinen)に至っては「大半」の商品で365日間の返品期間を設けている。もちろん返品期間が長くても、D2Cにとって返品処理コストが痛手であることに変わりはない。

ブリーフケースブランドのスチュアート&ラウ(Stuart & Lau)の共同創業者マシュー・スチュアート氏は、「たとえばブリーフケースを3点カスタマーに届けてそのうち2点が返品されたら、商売として成り立たなくなる」と語る。

同社は積極的な対策として、1人あたり返品できるバッグの数を制限している。またブラックフライデーには、同社は返送料10ドル(約1090円)をカスタマー負担に変更した。これによる返品率の変化については、導入からまだ日が浅いため結論づけられないとしている。

「お客様に対しては、ブリーフケースやバッグの返送料を全額負担してしまえば価格が上がることになるため避けたいと説明している」とスチュアート氏は語る。
スチュアート&ラウの通常の返品期間は30日だが、ブラックフライデーから年末にかけて45日に延長している。

同社のバッグは最低価格が295ドル(約3万2300円)となっており、10ドル(約1090円)の返送料は、たとえばデオドラントのD2Cスタートアップなどよりは利益率に悪影響は出ない。ほかにも、返品期限ギリギリまでカスタマーが返品しないという状況を避けるため、返品をなるべく簡単にするという方向で解決策を探っているスタートアップも存在する。素早く返品されれば季節外れの、割引しなければ売れないような商品を大量に受け取らずにすむ。

返品ネットワークも拡大中

ハッピー・リターンズは「リターンバー」というネットワークを構築している。提携しているブランドのオンライン商品の返品を、ネットワークに参加している組織の店舗などで行えるようにするシステムだ。ネットワークにはベッド・バス&ビヨンド(Bed Bath & Beyond)、ペーパーソース、一部大学キャンパスなども参加している。さらに同じく返品仲介を行っているスタートアップのナーバーでは、ナーバーのソフトを使っているブランド商品について、全米で展開しているウォルグリーンズ(Walgreens)の8000店舗と、ノードストローム(Nordstrom)の店舗でカスタマーからの返品を受け付けるサービスを2019年春提供から提供しはじめた。CEOのアミット・シャーマ氏によれば、この「ナーバー・コンシェルジュ・ネットワーク」と呼ばれるサービスに参加しているブランドはいまや30社以上になるという。

ハンドバッグを販売するスタートアップのダグネ・ドーバーは、D2C販売が主体ではあるもののノードストロームやエキノックス(Equinox)といった卸売企業との提携も行っており、ナーバーのコンシェルジュネットワークに参加している企業のひとつだ。同社のCOOであり共同創業者のディーパ・ガンディ氏は、返品を行うカスタマーのうち約15%がコンシェルジュネットワークを利用しているという。

「当社には都市部に住んでいるお客様が多く、すぐ近所にウォルグリーンズがある場合が多い」とガンディ氏は語る。

「企業の健康のバロメーター」

だが、究極的な目標として多くのスタートアップが挙げているのが、そもそもの返品数を減らすことだ。そのために商品の出来る限り詳細な情報や、商品の実際の様子を正確に伝える写真を掲載するといった取り組みは各社で行われている。ショッピファイ(Shopify)にフォーカスした返品管理プラットフォームであるリターンロジック(ReturnLogic)の創業者兼CEOを務めるピーター・ソバッタ氏は今年はじめ、米DIGIDAYの姉妹サイトのモダン・リテール(Modern Retail)に対し、「返品率は企業の健康のバロメーターだ」と語っている。

Anna Hensel(原文 / 訳:SI Japan)