ファッションブランドにとって中国がとてつもなく重要なマーケットであることは、秘密でもなんでもない。しかし、中国のオーディエンスにリーチする試みのなかで、一部のブランドはいかにも米国的な方法に目を向けている。NBAを利用するのだ。

中国でのバスケットボール人気は高い。NBAは中国でもっとも視聴されるスポーツリーグであり、5億人がNBAの試合を観戦し、3億人以上が定期的にバスケットボールをプレーしている。NBAのWeibo(微博)アカウントの中国人フォロワーは3300万人で、世界中にフォロワーがいるTwitterアカウントを600万人上回る。NBAは以前から米国の消費者をターゲットにするファッションブランドのあいだで人気だったが、いまやゴート(GOAT)やスプレーグラウンド(Spraygroud)、さらにはナイキ(Nike)のような主要ブランドまでが、NBAを利用して中国の消費者を獲得しようとしている。

本物であると証明すること

スニーカー再販プラットフォームのゴートは、ふたつのイニシアチブでこの流れに乗った。同社は今年11月、ニューヨーク・ネッツの2019-2020年シーズンのオフィシャルスポンサーになることを発表。また中国進出にも積極的で、今年の夏に中国版アプリをリリースした。同社は中国を、米国外で最初かつ最大の優先マーケットに位置づけていると、ゴートの共同創業者でCEOでもあるエディ・ルー氏はいう。彼によれば、ふたつのイニシアチブは密接に結びついている。

「中国でのスニーカーコミュニティの成長は著しく、バスケットボールとヒップホップの人気も上昇している。スニーカー需要が高まっているのは驚くにあたらない」と、ルー氏はいう。「世界のスニーカー業界で、本物であると証明することに莫大な需要があるのは明らかだ。世界進出にあたって、中国はすばらしい市場であると、我々は考えている」。

ネッツのスポンサーシップに関しては、ゴートはブランディングされたチームの入場通路を提供する予定だ。会場に入る選手たちが撮影されるこの短い通路は、ファッションの世界で一目置かれている。エスクァイア(Esquire)はこれを「コンクリートのランウェイ」と呼び、選手たち自身もここを通る短時間のうちにしばしばファッションを見せびらかす。ゴートにとって、この瞬間とブランド名を結びつけることは、新たなオーディエンスを構築し、ブランドを消費者に紹介するすぐれた手段なのだ。

「ゴートにとっては簡単なシュートだ」と、ブランドエージェンシーのオプティミスト(Optimist)でバイスプレジデント・ビジネスディレクターを務めるKJホー氏はいう。「NBA選手たちの入場シーンは大量に撮影され、ソーシャルメディアでの露出も非常に多い。人々は選手が何を着用しているかに注目する。そのため、ゴートがそこに入り込むのはとても理にかなっている。消費者が関連づけるポイントを考えているのだ。選手がクールなスニーカーを履いていたら、どこで買おうかと思う。そこにゴートの名前がある、というわけだ」。

実店舗は中国だけという企業も

NBAの方もスポンサーシップの分担がうまくなったと、ホー氏は指摘する。ゴートのような新興企業であっても、巨額の資金を投じて包括的スポンサーシップを獲得することなく、顧客ターゲティングのためにNBAの世界の一部を体験できるようにしたのだ。

ストリートウェアブランドのスプレーグラウンドも、NBA人気を利用して中国のオーディエンスにリーチしようとしている。スプレーグラウンドは昨年、NBAコラボのバッグとジャージを10チームのラインナップで展開。さらに今年11月、NBAオフィシャルボールを製造するスポルディング(Spalding)との提携を発表した。スプレーグラウンドの創業者でクリエイティブディレクターも務めるデビッド・ベン・デビッド氏によれば、NBAとのこうした取り組みの成果もあって、過去半年間に同社は中国市場で大きく成長したという。

「過去半年間だけで31の新店舗をオープンした。すべて中国国内だ」と、デビッド氏はいう。「我々のビジネスの拠点は変わらず米国だが、中国はいうまでもなく巨大市場であり、成長市場だ。バスケットボールやヒップホップの人気の高さがそれを後押ししている。いずれはロサンゼルスにフラッグシップストアを出すかもしれないが、当面は我々が実店舗を構えるのは中国だけになるだろう」。

中国ならではの課題も山積み

中国市場への参入は、ゴートのようにオンラインに特化した企業の場合、とりわけ難しい。インターネット規制により、中国ではTwitterもインスタグラム(Instagram)も使えないが、ゴートの広告の大部分はこれらに依存している。加えて、米国のスマートフォン用の通常のゴートのアプリも中国からはアクセスできないため、同社は今年、新しく中国向けアプリをリリースするはめになった。

そのうえ、現在進行中の政治的緊張は、中国でのブランドパフォーマンスに影を落とすかもしれない。香港の抵抗運動を支持するツイートをしたヒューストン・ロケッツのゼネラルマネージャー、ダリル・モーリー氏を、NBAはすぐさま叱責し、中国ファンの感情を傷つけたとして謝罪を発表した(英語版の文書では感情を害したことへの謝罪だけだったのに対し、中国語版では彼の「不適切な発言」に「大いに落胆した」と書かれていたことは、注目に値する)。

ナイキは中国ともNBAとも長年にわたる関係を維持しているが、モーリー氏のツイートで同社は板挟みの状況に置かれた。中国の消費者の怒りを鎮めるため、ナイキはヒューストン・ロケッツの商品を中国の店舗から撤去したが、この対応を米国の消費者は厳しく非難。ペンス副大統領も批判を展開した。

「中国進出するブランドは、当地で使えるデジタルツールに投資しなければならず、地政学的状況にも目を配る必要がある。とはいえ、ゴートやその他のスニーカーやストリートウェアのブランドが中国をめざすのは当然だ。巨大な市場が彼らを待っているのだから」と、ホー氏は述べた。

Danny Parisi(原文 / 訳:ガリレオ)