中国戦でフル出場。森島や遠藤を後方から支えた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 日本代表は12月10日、E-1選手権の初戦で中国と対戦。鈴木武蔵、三浦弦太のゴールで2−1の勝利を飾った。

 この試合で躍動したのが、シャドーの森島司とウイングバックの遠藤渓太だった。森島が切れ味鋭いドリブルと機を見たパスを織り交ぜながら相手DFを翻弄し、遠藤もボールを受ければ積極的に仕掛けて何度もクロスでチャンスを作った。

 ただし、日本の攻撃を牽引した“ツインターボ”が活躍出来た背景には、佐々木翔のバックアップがあったことを見逃してはいけない。。

 佐々木はふたりの後方で常にフリーの状況でいて、いつでもボールを預かる構えを取っていた。佐々木が一度ボールを預かり、前線がまた動き直すという連続したプレーがあったからこそ、ふたりのアジリティが活きたし、相手を混乱させられたはずだ。
 
 縦パスも効果的だった。あえてCFに当てることで、そこから落としのパスを受けた2列目の選手は前を向いた状況でプレーができる。まさに鈴木武蔵の先制ゴールは、その形から生まれている。CF上田綺世のフリックから森島がエリア内に飛び出してクロスを供給したのである。そうした2手先を読むようなプレーを実践していたのが、佐々木だった。

「モリシ(森島)とは普段からやっていて、僕がどういうプレーするかというのは知ってます。ただ、モリシにはボランチがピッタリついていたので、僕のところから直接入れる回数はあまり多くなかったけど、それありきで渓太を使いながら、崩すようにしました。もう少しFWやボランチのところから横パスを入れるような形を作ってあげられればよかったですけど、相手を揺さぶることは出来ていたかなと。僕らとしては、前の選手がパワーをよく使えるように、ゴールに向かえるように、相手を引き出す状況を作れるように、またやっていけたらと思います」

 攻撃だけではない。後方から声を張り上げ、森島、遠藤、橋本拳人、井手口陽介らのポジションを修正する姿も度々目についた。決して守備が得意ではない遠藤と森島がいるサイドでも大崩れしなかったのは、おそらく佐々木の的確な指示があったからだろう。
 

「前日の調整で、みんなすごい声をかけていました。自分のところで言うと渓太、モリシ、あとボランチのプレスのかけ方。どういう状況になったら苦しいかとか、この時は待つ場面だぞ、この時はプレスをかける場面だぞとか、そういうところは常に喋りながら。モリシ、渓太もそうですし、ボランチのところもしっかりファーストディフェンダーがあたりにいって、プレスをかけるシーンはより多く作り出せたと思います」

 そうした“気配り”は、試合以外でも表われている。移動の際にはチームを先導したり、トレーニング中には積極的にコミュニケーションを取り、若手の緊張をほぐしたりと、良き兄貴として振る舞っている。ただでさえ試合の間隔が中3日と準備期間が短く、さらに東京五輪世代の選手が半分以上を占める今回は、特にそうした役割は重要になってくるだろう。
 
「年長者でもありますし、練習やアップで話すようにしています。普段は喋っている人でも、こういう場に来たら、なかなか声を出せなかったりする。そういったところで、話すように促したり、場を盛り上げたり、コミュニケーションを取る“一歩”は気にするようにしていますね」

 目立たないながらも、最年長の佐々木の働きは、チームに欠かせないものなのだ。今大会の優勝の鍵は、このキャプテンが握っているかもしれない。

取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)