涙する皆川暢二

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 昨年行われた第31回東京国際映画祭・日本映画スプラッシュ部門で監督賞を受賞した映画『メランコリック』の初日舞台あいさつが3日、アップリンク吉祥寺で行われ、主演兼プロデューサーの皆川暢二をはじめ、磯崎義知、吉田芽吹、羽田真、矢田政伸、浜谷康幸、ステファニー・アリエン、大久保裕太、新海ひろ子、田中征爾監督が登壇し、作品への熱い思いを語った。

 本作は、深夜に人が殺されるという銭湯を舞台にしたサスペンスコメディー。前述の東京国際映画祭をはじめ、第21回ウディネ・ファーイースト映画祭でホワイト・マルベリー賞(新人監督作品賞)に輝くなど、公開前から映画関係者の間でも大きな話題になっている作品だ。

 初日を迎えたこの日、本企画を立ち上げた皆川は「お客さんが入ってくれるかドキドキしていたので……」と語ると、満員の客席を見て「私情をはさむべきではないと思ったのですが、こうしてたくさんの人に観てもらえてうれしい」と感涙。皆川自身、俳優として活動していたが「仕事を待っているだけではダメだ」と一念発起。2017年3月に「映画を撮ろう」と田中監督と磯崎に声をかけ、映像製作ユニット「One Goose(ワングース)」を立ち上げ、本作に取り掛かったものが形となった。
 
 舞台となるのは銭湯だが、殺人が起こるという題材だけにロケ地探しには苦労したという。田中監督は「銭湯をロケ地として提供してくれるところはあるのですが、やっぱり(人が殺されるという)ネガティブな話なので、なかなか貸してくれなかった」と撮影秘話を打ち明けるが「面白がって貸してくれる銭湯があったんです」と浦安にある銭湯「松の湯」に感謝。
 
 しかし、営業中の銭湯であるため、撮影ができるのは夜の11時から翌朝の10時まで。さらに田中監督は平日はサラリーマンとして働いているため、時間の制約は大きく、苦労は絶えなかったというが、キャストたちは口をそろえて「楽しい現場だった」と撮影を振り返っていた。
 
 「ゼロから手作りでここまで来ました」と皆川が感無量な表情を浮かべると、田中監督も「今日がスタートですが、長く上映されるようにキャスト・スタッフみんなで盛り上げていきたい」と力強く宣言していた。(磯部正和)