アメリカの選挙において、特定の候補者や政党に有利になるよう選挙区を分割する「ゲリマンダー」という手法が存在します。そんなゲリマンダーで生まれてしまった「いびつな形の選挙区」の形状をアルファベット化したフリーフォント「Ugly Gerry」が登場しました。

Ugly Gerry

https://uglygerry.com/

このフォントが作られた背景には、「ゲリマンダー」の存在があります。以下はゲリマンダーの例で、赤丸と青丸はそれぞれの党(赤党、青党)の得票を示しており、左上・右上・左下・右下の四角形は選挙区を表しています。全ての選挙区で赤党と青党は8票ずつ得ており、赤党と青党の選挙の勝敗は「引き分け4つ」となります。



この4つの選挙区を以下の図のように不規則な形状に分割し直したとします。すると、左上の選挙区では赤党7票・青党9票で「青党の勝ち」、右上の選挙区では赤党6票・青党10票で「青党の勝ち」、左下の選挙区では赤票14票・青党2票で「赤党の勝ち」、右下の選挙区では赤党6票・青党10票で「青党の勝ち」となり、トータルでは赤党が得た選挙区は1つ、青党が得た選挙区は3つと、割り当て前の「引き分け4つ」から勝敗がガクッと変わってしまいます。このように「選挙区の割り方」は選挙結果自体を左右するわけです。



実際のアメリカのゲリマンダーの例が以下の緑色の区域で、2003年から2016年の間の下院・ノースカロライナ州12区です。この選挙区は、民主党に投票するアフリカ系アメリカ人が多数派になるように設定されたそうです。



「イヤーマフ」と呼ばれた下院・イリノイ州4区がこれ。異様な形の2つの区域が、州間高速道路294号線でかろうじてつながって1つの選挙区を形成しています。この選挙区はヒスパニック系アメリカ人が多いエリアをつなげたものとのこと。



以上のようなゲリマンダーで生まれた選挙区の形状を活用したアルファベットフォントが「Ugly Gerry」というわけ。Ugly Gerryのトップページはこんな感じ。



Ugly Gerryの各アルファベットはゲリマンダーによる特徴的な形状のアメリカの下院選挙区で構成されています。Ugly Gerryの「A」はカリフォルニア州3区とテキサス州35区を合体させたもの。



「B」はオハイオ州12区とオハイオ州7区から。



テキサス州12区の「Q」のようにちょっと無理やり感があるものも。



Ugly Gerryを使ったツイートも可能。トップページ下部の入力欄にアルファベットを入力すると、自動で文章にUgly Gerryのフォントが適用されます。ツイートするには右下の「TWEET IT」をクリック。



なぜか位置情報のアクセスを要求されるので、「許可しない」をクリック。



Twitterのポップアップを許可するために「設定」をクリックして、「このサイト(uglygerry.com)によるポップアップを許可する」をクリックします。



「ツイート」をクリックするとツイート完了。



実際のツイートは以下のようになります。



Uglu Gerryフォントは公式ページの左下のアイコンからダウンロードして自由に使用可能です。



Ugly Gerryによるアルファベットは醜い形をしていますが、この醜さはアメリカにおける「政治のゆがみ」を表すもの。Ugly Gerryはアメリカの政治のゆがみを非難するため作成されており、公式Twitterは「一票が無価値になるように仕組まれていることがどれほど幸福なのかを議会に伝えるため、このフォントを使ってください」とツイートしています。