楽天・松井裕樹(左)、広島・中崎翔太【写真:荒川祐史】

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「幕張の防波堤」の異名を取った小林雅英氏が指摘「投球が窮屈になっていた」

 プロ野球は後半戦がスタート。昨年パ・リーグ最下位に沈んだ楽天は、首位ソフトバンクに4.5ゲーム差の4位と上位を狙える位置につけ、クローザーの松井裕樹投手がリーグトップの27セーブと好調を維持している。一方、セ・リーグ3連覇中の広島は3位。守護神の中崎翔太投手は不振に苦しんで2軍落ちも経験し、7月31日にようやく1軍復帰した。ロッテのクローザーとして05年にはセーブ王に輝く活躍でチームを日本一に導き、「幕張の防波堤」の異名を取った小林雅英氏は、それぞれの投手をどのように見ているのか。話を聞いた。

 松井は昨年、救援に失敗する試合が多く、6月には2軍での調整を余儀なくされるなど苦しいシーズンを送った。9月には4年ぶりに先発のマウンドに上がり白星を掴んだが、この経験が今年の好調につながっているのではないかと小林氏は見ている。

「彼は若いときから抑えになって、ピッチングが窮屈になっていたのではないかと思います。抑えは1イニングを全力で行くので、遊びがなくなる。後悔したくないので、自分の一番いいボールを投げにいきます。そのため、精神的にも技術的にも苦しくなる時がある。先発をやることによって、イニングの作り方、アウトの取り方を余裕をもって考えられるようになったと思います」

 クローザーは常に「3つのアウトを取らなければいけない」というプレッシャーの中で投げるが、先発として「ランナーを出しても無失点で抑えればいい」と余裕のある状況で投げたことで、考え方が変わったのではないかと話す。

「先発は7回1失点、0-1で負けても合格をもらえますが、クローザーは10回抑えていても、メディアに取り上げられるのは打たれた1回。ずっと0点か100点でしか評価されません。先発は、マウンドの上で余力を持たせ、視野を広げながら投げられる。そこで気づいたことがあったと思います」

広島中崎に昨年まで足りなかった経験とは…

 一方、3年連続胴上げ投手にもなった広島の守護神・中崎翔太投手は29試合に登板し、2勝3敗3ホールド8セーブ、防御率4.08という成績で6月20日に2軍落ち。1か月以上の再調整を経て、31日にようやく出場選手登録された。今シーズンの広島は開幕直後の不振など連敗も多く、現在セ・リーグ3位だが、チームの勝利数が伸びなかったことがプレッシャーになったのではないかと小林氏は話す。

「今年はチームが勝てていないので、失敗した時の『やってしまった』という気持ちが強いと思います。チームが勝っていると、失敗してもまたすぐに登板のチャンスが来る。そこで抑えれば切り替えられますが、チームが負けていると登板も少なくなる。連勝中の勝っているゲームで失敗してしまったり、自分の負けから連敗がスタートしてしまうと、精神的にも負担になってしまいます。カープはこれまで強かったので、そういう経験がなかったのかもしれません」

 圧倒的な強さを見せ、セ・リーグ3連覇を果たした広島は、中崎が本来の姿を取り戻し、4連覇へ巻き返せるだろうか。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)