すでにスニーカー通勤は浸透し、子どもを送り迎えする女性職員らに好評という。「テレワークチャレンジ」と称し、役員から順次在宅勤務を体験する取り組みも展開。働く場所の柔軟性を高める基盤をつくる。

 20年に本社を移転する朝日生命保険も移転を機にフリーアドレス制の導入など新たなワークスタイルを構想する。これまでもさまざまな取り組みを進めており、7月には時間単位の年次休暇の取得制度を導入。朝のラッシュ時間を避け、通勤するといった利用例がある。今後のフレックス制度の導入に向けた準備の側面もある。

ラボ併設で産学官連携
 「会社も本気。全社員が向かうべきベクトルを示したかった」。JX金属の村山誠一社長は本社移転を決めた理由をこう明かす。同社は20年6月をめどに本社を「オークラプレステージタワー」(東京都港区)に移転する。

 村山社長は6月に社長就任後、成長分野と位置付ける事業戦略を盛り込んだ「2040年JX金属グループ長期ビジョン」を発表。旗印に掲げたのは“技術立脚型企業”への転身だ。

 この観点から、新しいオフィス空間では競争に勝ち抜ける体制づくりをスピードを上げて進める。製造や研究開発を高度化させるため、スタートアップ企業や産学官などとの連携拠点となる「ラボ併設型ショールーム」を設置。オープンイノベーション推進や協業拡大につながるオフィス空間を創造する。

 日本航空電子工業は本社移転に伴い、1日に本社ロビーに展示・協創スペース「コネクティング・プラス」を開設した。名称には同社のコネクターなど「つなぐ技術」と顧客の独創的なアイデアを足し合わせることで社会に新たな価値を提供するという思いを込めた。

 顧客への技術説明は、都内であれば生産拠点の昭島事業所(東京都昭島市)で応対することが多かった。展示・協創スペースの開設で、都心にあり交通の便が良い本社でも来訪した人にモノづくり技術を紹介し、事業の方向性を伝えられるようにした。

 同スペースの敷地面積は約280平方メートルで、中央にメーンの展示コーナーを設置。その奥に顧客とのコラボレーションを実践する「協創ルーム」を設けた。協創ルームにはネットワーク接続が可能な電子白板も導入し、本社、昭島事業所、各生産拠点と遠隔会議を効率的に行えるようにした。会議のための事業所間移動を削減することで業務効率化にもつなげる。