吸い殻バケツがぶちまけられた女性宅玄関先。タバコのにおいはなかったが、地面にはシミが残る

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「私もどうしてあの子がこんなことをしたのかわからないんです。お母さんとお父さんはよくうちには来て、お土産を渡すとなんでも喜んで受け取ってくれましたけど、本人とは1回もしゃべったことがないんです」

 被害女性(96)は逮捕された容疑者に衝撃を受けていた。

防犯カメラの設置で御用

 富山県警は5日、一般廃棄物であるタバコの吸い殻などをみだりに投棄したとして廃棄物処理法違反の疑いで富山県南砺市のパート従業員・後藤一志容疑者(59)を逮捕した。被害女性宅では約4年間、何者かが玄関先に大量のタバコの吸い殻や汚濁水をぶちまける嫌がらせが続いていた。

「被害者から相談を受け、同日未明、張り込み捜査によって容疑者を現行犯逮捕することができた」と捜査関係者。

 容疑者宅と被害者宅は歩いて5分圏内だった。

「男なのにやることが小さいんだよ。防犯カメラにもキョロキョロと人目を気にしている姿が映っているし、犯行時間はほぼ人通りがなくなり新聞の配達が始まる前の午前2時ごろだから、狙ってやったんだろうね」(近くの飲食店主)

 被害女性は足腰が悪く、吸い殻の片づけもやっとのこと。かねて周囲にも相談しており、防衛策を取っていた。

「市議会議員から“防犯カメラを取り付けたほうがいい”と助言されて実行したようです」(地元関係者)

 執拗に女性宅を狙って不法投棄を繰り返したとみられるこの男、どんな人物なのか。

「元郵便配達員です。地元の小・中学校を経て県立工業高校に進み地域の郵便局に就職しました。ただ、配達はスローテンポで手際が悪かった。どうにか慣れてきたときに、あの郵政民営化に直面したんです」(同・地元関係者)

被害者も加害者もひとり

 2007年10月、小泉純一郎元首相の悲願だった郵政民営化がスタート。その影響もあってか、容疑者は配達職から保険の営業職に配置転換されたという。

「おとなしくて不器用ながらに頑張っていましたが、勤務先はずいぶん遠くなり、新しい仕事にもなじめずかわいそうでした」(同・地元関係者)

 容疑者はほどなく退職を決断。その理由はほかにもあると話すのは、容疑者の同級生の母親だ。

「最終的にはお母さんの面倒をみるために仕事を辞めたらしいです。定年まで働けば退職金をもらえたのにね。もったいないことをしたと思います。父親はすでに他界していて、母親も7〜8年前に糖尿病が原因で亡くなりました」

 きょうだいはおらず、以降は実家でひとり暮らしだったという。

「母親は生前、いつも“一志、一志”と呼んで、ひとり息子を可愛がっていました。晩年は“一志にまだ嫁が来ない”って心配していました」(近所の住民)

 なぜ話したこともない高齢女性宅を標的にしたのか。

「ひとりになるとよくないこととか、悪いことを考えてしまうのかね。接点は被害女性の次男と同級生ということぐらい。過去に何か嫌なことがあったのかもしれませんが、被害女性の夫と次男は早くに亡くなっており、長男が7年ほど前に病死してからは女性もひとり暮らしでした」(前出・同級生の母親)

 被害女性は「いい子と聞いていたんだけどねぇ」と困惑しきり。気味悪い犯行の動機の解明が待たれる。