映画『バイス』トークイベントが18日、都内・神楽座にて行われ、ジャーナリストの堀潤が出席した。

本作はジョージ・W・ブッシュ政権(2001-09)で、アメリカ史上最も権力を持った副大統領、ディック・チェイニーを描いた社会派エンターティメント。チェイニー副大統領役にクリスチャン・ベールが扮するほか、チェイニーの妻役にエイミー・アダムス、ラムズフェルド国防長官役にスティーブ・カレル、ブッシュ大統領役をサム・ロックウェルが演じる。

監督は『マネーショート』で、第88回アカデミー賞「脚色賞」を受賞、作品賞・監督賞・助演男優賞・編集賞・脚色賞の主要5部門にノミネートされ世界中からその手腕を認められたアダム・マッケイ。製作はプランBエンターテインメントが手掛け、代表であるブラッド・ピット本人がプロデュースを務める。

本作について、堀は「最近観た政治系の映画の中では、一番起伏に富んだ面白い映画でした」と感想を述べる。「作品として非常にフラットで、驚かされたり笑わされたり、途中に怒りがこみ上げてきたり、不信感に苛まれたり、感情を揺さぶられるシーンが多かった。アダム・マッケイ監督さすがだなと思った」と続けた。

副大統領という目立たない地位を逆手に取り、パペットマスターのごとく大統領を操って強大な権力をふるい、すべきでない戦争を他国に仕掛けた揚げ句、アメリカを、そして世界中をメチャクチャに変えてしまったチェイニー。

堀は、9.11当時のアメリカや世界の様子、その後のイラク戦争やIS、シリア内戦などでのメディアのプロパガンダ戦などについて、ニュースを読み上げているからこそ見える情勢をアツく語る。「去年の11月ですか、チェイニーさんはかつての勲一等に値する褒章を日本で受けているんですよね。日本とアメリカの関係を密にしたということで。でも、映画で描かれるいるように、テロの世紀を呼び込んだ張本人の一人なのではないかと。そういう観点から見れば、日本が章を与えていいものなのでしょうか。ニュースを検索してみてもあまり出てこないんです。この問題に国内のメディアは角度をつけて『チェイニーに章を与えるとはどういうことだ』と。そういうことをしていないんですよね。日本の報道機関は(テロや戦争の)抑止になれたのか、しっかりと機能していなかったんじゃないかと思うばかりです。国際情勢が動いていく中で、なぜもっと感度を上げられなかったのかという深い反省があります」と言及した。

堀は「官房長官に『質問させてくれ』と言っているのに、官房長官が『あなたには質問させません』っていう内容が連日のようにジャーナリズム界のニュースになるなんて腐っていると思いませんか?発信しなければいけないニュースがいっぱいあるのに、『政治と記者が闘っています』なんて…うんざりしますよね」とメディアの在り方について疑問を投げかける。

「この映画が、権力を笑いながら刺していくエンターテイメント作品であるように、自由に発信するメディアがたくさんあっていいと思うんです。日本の新聞で『風刺画』って最近あまり見ないじゃないですか。クレームがついちゃいけない、どこかで腰が引けているんじゃないかと。誰もやるなとは言っていないんです。自分たちの手で窒息していくのは怖いなと思います」と訴えかけた。

映画『バイス』は4月5日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開

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