リーガ・エスパニョーラ第28節、アラベスは、試合終盤に得点を量産し、残留争いを続けるウエスカを退けた。

 これで乾貴士がチームに加入して以降、アラベスは6試合連続で負けがない。チャンピオンズリーグ(CL)出場圏内の4位ヘタフェと暫定で勝ち点差1をキープしての5位。6位セビージャには勝ち点差4をつけており、残り10試合の時点で来季の欧州戦出場権獲得が見えてきている。


ウエスカ戦にフル出場、勝利に貢献した乾貴士(アラベス)

 アウェーのウエスカ戦は1−3という結果だったが、両チームの差はほぼなく拮抗した戦いだった。両チーム合わせてファール数44。2分に1回は試合の流れがストップする、よく言えばインテンシティの高い激しい試合だった。そんな展開のなかで、終盤までにチャンスを多く作っていたのはホームのウエスカだった。

 ピレネー山脈の麓にある町、ウエスカは人口約5万人。自然が豊かでのんびりとした空気が流れている町だが、歴史的には内戦の最前線になるなど、激しい争いを経験してきた。そんな血はホームスタジアムであるエル・アルコラスに受け継がれており、7638人という収容人員は、7083人のエイバルと並んでリーガで最小のスタジアムのひとつだが、その熱さは強豪クラブと引けを取らない。

 小さな子どもから老人までスタジアムに集まり、おらが街のチームを応援し、主審の判定に不服を感じると我先にとブーイングを飛ばす。そんな熱狂的なサポーターに、乾はそのプレーで感嘆の声をあげさせていた。

 乾はこの試合で、期待された3試合連続弾こそ決めることはできなかった。

 だが、前半11分の先制点につながるファールを奪ったほか、この日2ゴールを挙げたジョナサン・カジェリや、ストライカーのボルハ・バストンへスルーパスを送り、相手ディフェンダー2人に囲まれながら、するりと抜け出したドリブルなどでアラベスのチャンスを作り出していた。そのプレーは、十分にチームにフィットしていると感じさせた。

「まあ、今のところはね。どこかで負けるときがくるかもしれないけど、できるだけ長く、勝ち点を多く与えることが自分の仕事だと思っている。それができていることには満足しているけど、自分の出来としてはまだまだよくしていかないといけない」

 ミックスゾーンで試合を振り返った乾は、チームに移籍後、6試合無敗と好調が続いていることには満足感は見せながら、いつものように反省の言葉を口にした。

 今後はアトレティコ・マドリード、セビージャと、CL、ヨーロッパリーグ出場権獲得のために倒さなければいけない強豪ライバルとの対戦が続くが、乾はまずその前に行なわれる日本代表での試合に集中している。アジアカップでベンチを温めたことは乾の反骨心を刺激したと思われたが、クラブで戦うのと同様に、チャレンジャーとしての気持ちを忘れていない。

「チャンスはあると思うし、そこで見せられればいい。チャンスをつかむしかない。今は選ばれるか、選ばれないかの微妙な立ち位置にいると自分自身、感じている。今回は、(原口)元気とかが選ばれていなかったり、主力の何人かが抜けている。そういうのがあって自分は選ばれていると感じている。ベストメンバーになった時にしっかり選ばれたいと思う。

 とにかく、これ(いいパフォーマンス)を続けていくこと。試合に出ていれば見てくれていると思う。しっかりやれることをやって、また代表に戻りたい。代表ではポジション争いもあるし、そこでもしっかりやっていきたいです」

 日本代表にとって、まだ自分はマストの選手ではないと、招集に浮かれることなく危機感を持ち、自分の本当の力を見せたいという思いに溢れていた。だが、そんな乾が盟友の香川真司(ベシクタシュ)の招集については、嬉しそうに次のように語った。

「嬉しいですよ。真司らと一緒に入れたのはすごく嬉しい。欲を言えばオカちゃん(岡崎慎司)だったり、キヨ(清武弘嗣)だったり、そういう選手ともまたやりたい。自分がしっかり頑張っていれば、そういうチャンスはまたあると思うので、しっかりやっていきたいです」

 仲のいい選手たちと再びプレーするためにも、「代表に呼ばれ続けるようなパフォーマンスを見せることが大事だ」と、乾は自身に言い聞かせるように話した。日本代表でも、アラベスでの活躍同様のプレーを見せてくれるはずだ。