田崎真也さん以来、24年ぶりの日本人「ソムリエ世界チャンピオン」の栄冠へ。森覚氏(左)と岩田渉氏(右)は現在ベルギーで行われている、世界最優秀ソムリエコンクールで準決勝へ進出。3枚しかない決勝の切符を手にすることができるか(ウエルカムパーティでリラックスした表情の2人、筆者撮影)

突然ですが、ワタクシぐっちーは第16回 世界最優秀ソムリエコンクールベルギー・アントワープ大会に出ています・・・は大ウソで(笑)、「現在進行形」の最新レポートをさせてください。

24年ぶり「日本人世界ナンバー1誕生」の可能性十分

ワイン好きの方はもちろんですが、そうでなくても、田崎真也さん(日本ソムリエ協会会長)が世界一に輝いた大会(1995年、第8回)が今年はベルギーで行われている、と言われれば、ピンと来るかもしれません。しかも、今回はなんと日本人が2人(森覚さん、岩田渉さん、後述)も参戦しており(全世界から予選などを勝ち抜いた63カ国66人が出場)、まさに田崎真也さん以来24年ぶりの「日本人世界チャンピオン」が出るか否か・・・という状況なのです。

しかも、この世界チャンピオンコンクールは毎年やっているわけではなく、3年に1回しかありませんので、まあ、言うなればオリンピック並みでして、前回2016年アルゼンチン大会では森さんが参加したのですが、惜敗!なので、今回は岩田さんも含め、相当期待が高まっています。

改めて2名を紹介します。前回参加の森覚(もりさとる)さん、とまだ20代、同志社大学卒業という異色のソムリエ、岩田渉(いわたわたる)さんの2名であります。森さんはこの世界では言わずとしれた全日本チャンピオン、2017年には厚生労働省による「現代の名工」にも選ばれています。岩田君(あえて君とよばせてください)はアジア・オセアニア大会を制しての権利獲りによる参戦となりました。プロフィールをまとめます。

森覚(もり さとる)
言わずと知れた全日本チャンピオン。今回で4回目、堂々の挑戦でいよいよ悲願なるか、という所。現在コンラッド東京チーフソムリエ。フランスを本拠とするトゥールダルジャンなどの名レストラン勤務などを経て、悲願を目指し、メジャーホテルで徹底的にブラッシュアップして本番に臨んでいる。世界的に見ても「本命」と言っていい存在。

岩田渉(いわた わたる)
前出のように、20代での参戦は世界的に見ても非常に珍しい。同志社大学卒業という異色の経歴もさることながら、ソムリエと言えばある程度の年齢者という思い込みを踏みにじり、とにかく若くして頭角を現した、まさに異色の存在と言っていい。所属もいわゆるメジャーどころの「グランドメゾン」ではなく、京都の「カーヴドケイ Cave de K」といういわゆるバーで、ここを取り仕切るという、ソムリエとしては非常に珍しい経歴。聞くところによると岩田君がいる時にワインが1杯も売れなかった、などという日があったらしい。実力はもちろん、ここまで来るには運も絶対に必要で、彼はそれを持っている数少ないスターソムリエと言っていい。

4日間で勝者決定、予選は「ペーパーテスト」中心

なにせ、優勝しても賞金は出ない、というまさに名誉を懸けた戦いの真っ最中なのですが、優勝者決定までのスケジュールはどうなっているのでしょうか。


66名が出場した予選から準決勝は19名に絞られらた(筆者撮影)

スケジュールは、抜粋するとざっとこんな感じです(現地時間、日本とは時差8時間)。

3月12日火曜日
午前中 予選
19時  準決勝出場選手の発表

3月13日水曜日
14時30分 準決勝開始

3月14日木曜日
15時〜 準決勝の続き
終了後 決勝進出者の発表

3月15日金曜日
13時〜18時 決勝
20時 優勝者発表、その後祝賀ダンスパーティー

実は、2人ともすでに予選を通過、準決勝進出が決まりました!!まず「予選でしょ」、とか言わないでください。世界63カ国から厳しい予選を勝ち抜いた66名から一気に19名に絞られ、そのうちの2人が日本人なんですから、これはもうそれだけですごいぞ! と言うようなレベルであります。この日本人から田崎さん以来のチャンピオンが出るか、何せ今回は2人出ていますので、マジで世界が固唾をのんで見守っている、と言っても過言ではありません・・・まあ、世界と言ってもワイン界の話ですけどね(笑)。

おっと、遅れましたが、ここでソムリエコンクールの概要をお伝えしなければなりません。実は、意外に思われるかもしれませんが、試験内容は予選までは知識などを試すペーパーが中心です。最初から「全開」ではないんですね。準決勝からいよいよ実技にウエートが置かれますので、ここからがソムリエとしての真剣勝負です。

やはり、ブラインドテイスティングは見もので、飲んだ印象などをしっかり説明し、「これは、どこのだれが作った何!!」と当てねばなりません。それも英語またはフランス語と決まっていますので、正直言って、日本人は言葉からして滅茶苦茶不利です。

母国語以外で名うての審査員と語る難しさ

残った19名を見てみると、この2カ国語以外が母国語というのは日本語を除くと、スペイン語くらい。そりゃ、スペイン語と英仏語の違いなんて、日本語との違いに比べたらないに等しい、と言っていいと思いますよね。これだけでもすごいんです!(皆さんは、たまに考えたことないですか? 自分がもし英語の勉強をしなくて済んだら(中高含め)どれだけの時間あったんだろう、って。ワタクシぐっちーは仕事でやむを得ず英語を母国語同様に使わねばなりませんが、ここまで勉強する時間を他に使ったら今頃絶対にノーベル賞取ってる、とか勝手に思っているんですよ(笑)。そのくらい英仏語のハードルは高いと思っています)。

しかも、まだまだ知られていないと思いますが、実技だって、ただ飲めばいいというだけではないんです。お客役である、名うての審査員と芳醇な会話をせねばなりません。これも、全部採点されるわけですから、ある意味英仏語の試験、と言っても過言ではありません。

幸い、19人が進出した準決勝には森さん、岩田さん2人ともセミファイナリストとして残りましたが、ここまでくるとやはりこの2人にはなんとか決勝までは残って・・・と色気が出てきますね。


会場に向かう途中で。日本ソムリエ協会の田崎会長(右)と石田副会長(右から2番目)が2人をフルサポート(筆者撮影)

今回は、この大会に向けて両巨頭である田崎さんや石田博さん(日本ソムリエ協会副会長)のフルサポートで照準を合わせるという、「日本ソムリエ協会ごと大援軍」みたいな状態になっています。しかも見たところ・・・2人とも絶好調のように見えますし、これは期待しないわけには参りません。

まさに準決勝からは、精鋭同士の「削りあい」なので、近くで見ているこっちの胃がもう痛い。身が持たない、というのはこのことで、やっている2人は本当にすごい!!(特に若い岩田君)と思わざるを得ません。森さんはこの世界コンクールは今回が4回目ですが、このプレッシャーを4回も浴びているのか・・・と思うと、それは尊敬の念を持たざるを得ません。オリンピックでは国旗を振る気にはあまりなりませんが、ここは必死に国旗を振りたい気分です。がんばってくれ!!

決勝に残るのは3人、日本時間15日21時台に発表

さて、決勝に残れるのはわずか3人と決められています(同点の場合はこの限りではない)。ここは競馬愛好家的に、決勝進出者・優勝者は以下の7人から出る、とズバリ予想を立てておきましょう(敬称略)!

香港 Kam Fung Reeze Choi ラトビア Raimonds Thomson
日本 森覚、岩田渉 フランス David Biraid アイルランド Julie Durpouy Young  ルーマニアLulia Scale


準決勝に残ったのはこの19人。誰が優勝するのか(HPより)

本命はフランス人のダビッド、「穴馬」が香港でしょうか。日本の両名についても本命にする人もいます。さて如何に!?

なお、決勝は前出のように15日13時(日本時間同日の21時)をメドに始まるのですが、決勝進出者がわかるのは、なんとそのたった5分前!!ホント、ギリギリなんです。直前まで決勝に行くつもりで、全員ぱっつんぱっつんになってますから、落ちた時のショックがまた2重3重にでかいんです。このあたりはやはりコンクールです。それなりのタフネスも要求されてるんです!

優勝者は日本時間で16日早朝にわかるわけですが、まずは同15日の21時ちょっと前に発表される決勝に2人が残ることを祈念して、前半のレポートを終わります。なお決勝はライブで見られます。みなさま、頑張って深夜まで起きてましょう!!ワタクシ、現地でもちろん仕事がありまして、こちらでも16日の朝は早いんですが・・・大丈夫かな(笑)。では、決勝結果はライブでぜひ見ていただくとして、是非この続きをレポートさせてもらいます。