テラドローン・徳重氏「『世界で勝つ』は設立趣意。不確実でも踏み込め」
世界首位が見えてきた
−海外はベンチャーにとって鬼門と言われます。
「インターネットがここまで普及すれば、良いビジネスモデルは瞬時に世界中へ飛び散る。日本で成功した後に海外へ出ると、すでに大きな競合がいる。だから、本当に世界で勝つにはマルチプル(複数地域で同時)にやるしかないというのが私の結論だ。インドでドローンの成功モデルが見えてきた。一気に世界でマルチプルに実行していく」
「電動バイクや電動3輪のEV事業はインドやバングラデシュなどで前期3万台を販売し、今期は4万台を販売する。ドローンサービスは現在世界10位以内。合計の売上高は数十億円規模だ。ドローンは準備中のマルチプル展開が実現すれば、世界首位に立てる」
−ドローンの成功モデルは、どうやって見つけましたか。
「豪州のドローン事業の失敗を経て、たどり着いた。豪州事業は私が1年かけて準備し、現地に優秀な人材を2人送り込んだ。大々的に発表し、時間もお金もかけた。顧客企業を説得するために現地人材を教育したが、それが難しかった。その人が完全に技術をわからなければ、顧客を説得できない。ドローンは世界で立ち上がっているのに、豪州に2年もかけられない。そこで1年9カ月で止めた。インドで見つけた成功モデルは、この問題を解決するものだ」
失敗して当たり前
「今は内容を詳しく言えないが、成功モデルを見つけたのは、過去にインドのEV事業と豪州のドローン事業で失敗した社員だった。インドのEVは担当が変わって伸びた。失敗と言っても、それだけ難しいことをさせていたのだが、その社員をインドのドローン担当にすると社内から疑問の声もあった。だから、その社員ははいずり回って方法を見つけた。イノベーションは理屈じゃない」
−失敗の可能性が何割までなら実行に移しますか。
「そう考えるのがおかしい。新事業は失敗して当たり前で、踏み込んで初めてわかることが多すぎる。豪州で再認識した。早く始めた方が成功の確率が上がり、失敗のダメージも少ない。必要なのは修正力だ。失敗はプロセス。実行段階もマーケティング費用と思えばいい」
「私も、会社も、大きな失敗を経て今に至る。昔、シリコンバレーに行くと啖呵を切って会社を辞めた時、半年の準備をして米スタンフォード大に落ちた。かっこわるすぎて、映画『ターミネーター2』で液体窒素で凍った後にショットガンでバラバラにされたような気分だった。だが、1カ月もすれば、悔しさになり、エネルギーになった。普通の人がエネルギーを持つには大きな挫折がいる。失敗はエネルギーが溜まっていると思えばいい」
バブル知る最後の世代の責任
−無謀とも思える挑戦の理由は。
「『世界で勝つ』は会社の設立趣意書のようなもの。30代の時にシリコンバレーでベンチャー企業との交流で得た原体験と、『日本はこれでいいのか』という思いが大本にある。だから、難しくてもあえてやる」
「私の若い頃、ベンチャー起業家は“山師”と言われていた。肩身の狭い存在。でも、私は興味があってシリコンバレーに行った。当時は米グーグルがどんどん成長し、ヒト・モノ・カネが入ってイノベーションを生んでいた。その頃、DVDのシェアリング事業をしていた50人くらいの会社が近くにあり、それが今の米ネットフリックス。今、ソニーが復活したと言われているが、世界での存在感は2000年頃と全く違う。大学時代だが、バブル期を知る最後の世代として、日本はこのままでいいのかと思っている」
