ニュージーランド戦の失点シーン。吉田(22番)も酒井(19番)もウッド(9番)に競り負けて……。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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[キリンチャレンジカップ2017]日本2-1ニュージーランド/10月6日/豊田スタジアム
 
 戦前の予想に反して“ガチメンバー”で挑んだニュージーランド戦は、1-1で迎えた終盤の88分に途中出場の倉田秋が決勝ゴールを決めて、日本が勝利という結果に終わった。とはいえ、手放しで喜べるわけがない。むしろ募るのは失望感だ。
 
 なによりいただけなかったのは、あの失点。1-0で迎えた59分、日本の左サイドを攻略したマルコ・ロハスのクロスから巨漢FWのクリス・ウッドにいとも簡単にヘッドで同点弾を許したシーンが物語るのは、日本の守備の弱さだ。
 
 昨季にイングランドの2部リーグ(FLC)で得点王に輝いた実績もあるウッドは、ニュージーランドのエースストライカー。日本からすればもっとも警戒すべきFWなのに、あんなにあっさりとゴールを奪われてしまうとは……。しかも、そのウッドに競り勝てなかったのが代表常連の吉田麻也と酒井宏樹だ。このふたりが止めなければ誰が止めるのかという意味で、日本の限界を示す失点でもあった。
 
 もちろん、その前の崩され方が悪いとの見方はあるだろう。それでも、世界的にウッドのようなストライカーはゴロゴロいる。あそこで競り負けるということは単純に個の能力が足りないと、そう結論付けても違和感はないはずだ。
 
 いずれにしても、言い訳無用の失点だ。ニュージーランドのような放り込み、ハイクロスを使った攻撃には依然として日本は弱いという事実を改めて突き付けられた点は、ワールドカップの本大会に向けて重く伸しかかる課題である。
 
 もっとも、サッカーに失点は付き物で致し方ない部分もあるだろう。どんな試合でも90分間のうち1〜2回のピンチはあるはずで、それを決められてしまったのがニュージーランド戦だった。もしかすると守備陣からすれば、こっちは1失点に抑えたのだからゴールをもっと奪ってくれよ、となるかもしれない。
 
 実際、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は試合後の会見で決定力の低さを指摘していた。「得点の機会が10回はあった。今日は選手に積極的に(シュートを)打つように言ったが、枠をとらえられないケースが多かった」と。

 確かにその通りかもしれない。前後半合わせて18本のシュートを放ちながらも、奪ったのはわずか2ゴール。しかもそのうちの1点はPKだったのだから……。
 この日の前半はことごとくシュートが枠に飛ばなかった。結果的に痛恨だったのは8分に香川がポストを直撃した一撃。ああいうチャンスをきっちりモノにしないと、ワールドカップでは勝てない。事実、ニュージーランド戦の立ち上がりは試合を完全に支配していた日本がその決定機逸を境に徐々にリズムを失っていた。
 
 サッカーとは“流れのあるスポーツ”であり、あそこで先制していれば日本は一気に波に乗れていたかもしれない。試合の展開を大きく左右したという意味で、香川は決定的なミスを犯したとも言えるだろう。
 
 結局、60分に交代するまでゴールもアシストもなかった香川はこのニュージーランド戦でも“落胆のエース”として印象を残すことになった。いわばマイホームのトップ下でも輝けなかった背番号10が今後も同じようなパフォーマンスを続ければ、代表での定位置確保はおろか、メンバー入りも怪しくなるか。
 
 ただ、攻撃陣の停滞が香川ひとりの責任かと言えばそうではない。効率よくゴールを奪えなかった原因のひとつは、クロスの質の低さにあるだろう。世界の強豪国と比べると、この点で日本は圧倒的に劣っている。クロスやラストパスの精度が悪ければ良い形でフィニッシュに結び付けられないわけで、シュートが枠にあまり飛ばなかったのはある意味必然だった。