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間違えて「人間ドッグ」に足を運ぶと、精密検査を受けたかったのに人体改造されて人間犬にされてしまうかも……。健康診断は「人間ドック」が正解なので注意してください。こんな小噺ができるくらい、私たちは油断すると言葉を間違います。

こんにちは、自転車で世界一周をした周藤卓也@チャリダーマンです。日本人として生まれ、いつの間にか日本語を話せるようになっていました。それから小中高と学校に通うのですが、つい最近までこんなことも考えもしませんでした。みなさんはいかがでしょう。

◆分かりやすい例



「アイパッド(iPad)」をアイパット、「ジャグリング(juggling)」をジャクリング、「バドミントン(badminton)」をバトミントンのように、間違った覚え方をしていませんか。

日本人は日本語の「ガ行・ザ行・ダ行・バ行」にあたる濁音が得意ではありません。知らず知らずのうちに濁音を含む言葉を「カ行・サ行・タ行・ハ行」にあたる清音に置き換えて発音しています。そんな言葉が気になってしょうがなかったので今回は記事としてまとめてみました。

◆間違いのパターン

・小さな「ッ」の後ろ



・「2段ベッド(bed)」→2段ベット

・「ゴッドハンド(god hand)」→ゴットハンド

・「ドラッグストア(drug)」→ドラックストア

・「グッドラック(good luck)」→グットラック

・「バッドエンド(bad end)」→バットエンド

・ゲーム「デッドオアアライブ(DEAD OR ALIVE)」→デットオアアライブ

のように間違った覚え方をしていませんか。

これが1番分かりやすいパターンで、促音・小さな「ッ」の後が濁音だと、知らず知らずに清音に置き換えてしまいます。

「ビッグマック(BIG Mac)」をビックマック



一般名詞では「消波ブロック」と呼ばれるもののうち、不動テトラの登録商標である「テトラポッド(tetrapod)」をテトラポット。(写真はチャリダーマンが見かけた消波ブロックで、テトラポッドそのものではありません)



エジプトの「ピラミッド(Pyramid)」をピラミット



ただし、家電量販店の「ビックカメラ」は「ビッグ(Big)」ではなく「ビック(bic)」で正解。

・濁音の連続

・狩猟肉を表す「ジビエ(gibier)」→シビエ

・既視感という意味の「デジャブ(deja vu)」→デシャブ

・証拠という意味の「エビデンス(evidence)」→エビテンス

・南アフリカW杯で話題となった「ブブゼラ(vuvuzela)」→ブブセラ

のようなパターンも良くあるもので、濁音が連続していると知らず知らずに片方を清音に置き換えてしまいます。

出口という意味の「イグジット(exit)」をイクジット



・英単語の複数形

英語の名詞を複数形にする際は単語の語尾に「s」をつけることを習いました。このとき「cups(カップス)」「books(ブックス)」のように単語の語尾が無声音(f,k,p,s,t)だと「ス」の発音になります。一方で「cars(カーズ)」「pens(ペンズ)」のように単語の語尾が有声音(n,r,y,w,g,z,d,b)だと「ズ」の発音です。ただし、日本人はこのズという濁音が得意でなく、言葉によっては清音のスが一般化しています。

「ニュース(news)」だってその一つ。「ニューズウィーク(Newsweek)」という雑誌があるように英語ではニューズです。



プロ野球チームの1つに「阪神タイガース(Tigers)」がありますが、英語ではタイガーズ。



オレンジジュースの「バヤリース(Bireley's)」も英語ではバヤリーズではないでしょうか。



◆間違えやすい言葉

こうした濁音の清音化、次のような間違えやすい言葉があるので注意してください。

・エンタメ

スラムダンクの井上雄彦氏が剣豪、宮本武蔵を描いた漫画は「バカボンド」ではありません。脳内を「これでいいのだ」のバカボンが邪魔します。でも英語の放浪者を意味する「バガボンド(Vagabond)」が正しい題名です。



サンリオのキャラクター「ぐでたま(Gudetama)」をぐてたま。



・昆虫を題材にしたディズニーのアニメ「バグズライフ(A Bug's Life)」をバグスライフ

・サッカーチームの「ベガルタ仙台(Vegalta)」をベガルダ仙台、ベカルタ仙台

・人名

アップル社を設立した「スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)」をジョブス。



アラビアンナイトに出てくる「シンドバッド(Sindibaad)」をシンドバット

ハリウッドスターの「ブラッド・ピット(Brad Pitt)」をブラット・ピット

仏教を開いた釈迦が到達した悟りの境地「ブッダ(Buddha)」をブッタ

・国名、地名

コロンビア第2の都市「メデジン(Medellin)」をメデシン。



ハンガリーの首都「ブダペスト(Budapest)」をブタペスト。



カリブ海の島国「トリニダード・トバゴ(Trinidad and Tobago)」をトリニダート・トバゴ、トリニダード・トバコ。



東京の「麻布(あざぶ)」をあさぶ。ただし、札幌には「麻生(あさぶ)」があります。

北関東の「茨城県(いばらきけん)」をいばらぎけんと言うと地元の人に訂正されます。同様に、大阪府の「茨木市(いばらきし)」も「いばらぎし」ではありません。

こうした中でも、イラクの首都「バグダッド(Baghdad)」は最高でした。4つも濁音が入っています。バグダットもバクダッドも違うのでご注意を。

◆どっちが正しい

では、次の2つはどちらが正しい言葉でしょう。左が清音、右が濁音です。

1:アボカド/アボガド



2:ダンテライオン/ダンデライオン

3:ジグソーパズル/ジグゾーパズル

4:プロパカンダ/プロパガンダ

5:アドバイサー/アドバイザー

6:ビバーク/ビバーグ



7:デビットカード/デビッドカード

正解は……

1:アボカド(avocado)

2:ダンデライオン(dandelion、タンポポのこと)

3:ジグソーパズル(jigsaw puzzle)

4:プロパガンダ(propaganda)

5:アドバイザー(adviser、advisor)

6:ビバーク(bivouac、登山などで緊急的に野営すること)

7:デビットカード(debit card)

濁音の清音化ばかり目立ちますが、アボガドやジグゾーパズルのように清音を濁音で覚えることもあります。

突き詰めていくと「か」→「が」のように既存文字に「゛(濁点)」を付けたのは誰が最初なのだろうかという話にたどり着きます。アルファベットなら「ka」と「ga」と文字が違いますし、このような混乱は起きないのでは……。

ともかく、濁音を挟んだ言葉には気をつけてください。特に外来語には引っかかってしまいます。こうした間違いを防ぐにはカタカナ英語で終わることなく、英単語のスペルを覚えていくことも大事だと思うようになりました。

「バックパック(backpack)」のバックは「鞄のバッグ(bag)」じゃございません。「背中(back)」の「袋(pack)」という意味。



◆ホットドッグ



ふと立ち寄ったコーヒーチェーン店のドトールのメニューに「ホットドック」と書いてあって衝撃が走りました。「ク」ではない「グ」が正しいはず。だが、ドトールほどの大企業が間違うはずがありません。そう思って調べてみると意外な事実にたどり着きます。

メニューには「ジャーマンホットドック(German hot dog)」とあってドイツがコンセプトでした。都市「ハンブルク(Hamburg)」「ザルツブルク(Salzburg)」もそうですがドイツ語の語尾「g」は濁音「グ」でなく清音「ク」となります。

一方で日本人も「ドッグフード(dog food)」をドックフードと呼んだり、そもそもソースの会社は「ブルドック(BULL-DOG)」だったりと「グ」と「ク」の区別が曖昧。日独で意外なところに共通点がありました。

◆あとがき

日本人は濁音の連続が得意ではないのだということに気付いてから、それらしい言葉を見つけてはインターネットでチェックしていました。Googleの検索は間違いを訂正してくれるので、Twitterの検索がおすすめです。誰かの間違いに気付いては、ちょっとニヤニヤしていました。ただ、間違いとはいっても言葉とは発音しやすいように変化していくわけで、外国語と日本語がマッチしないのも当然という側面もあります。

このような言葉は他にもいろいろありそうなので、何かありましたら教えてください。

この記事を書きながら、今話題の人気芸人、メイプル超合金の「カズレーザーさん」をカズレーサーという間違った名前で覚えていることに気づきました。これも濁点。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン

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